はじめに
近年、企業はデータに基づいた意思決定を行うため、データの可視化と分析を重視するようになりました。
一方で、ガートナー社が2024年に行った調査によれば、日本企業はデータ利活用に対して高い関心があるにもかかわらず、全社的にデータ活用の成果を得ている割合は3%程度と低い結果になりました。
生成AIの発達に伴い、データ利活用は企業にとって急務の課題になっています。
BI(Business Inteligence)ツールは、企業が収集したデータを可視化することで、ビジネスにおける意思決定をサポートするためのツールです。その中でも、AWSが提供するQuickSightは、クラウドベースのBIツールとして注目を集めています。
本記事では、サービス概要解説と、注目アップデートの紹介、さらに他のBIツールとの比較をします。
QuickSightの概要
QuickSightは、さまざまなデバイスに蓄積しているデータをソースとしてダッシュボードを作成するBIツールです。AWSのデータはもちろん、ローカルデータやオンプレミスのデータ、アプリケーションデータの分析にも対応しています。
サーバレスな環境で、簡単に設定・管理でき、セルフサービスBIツールとしてデータ分析と可視化を提供します。さらにダッシュボードのカスタマイズも自然言語で行うことが可能で、ユーザーは迅速にデータインサイトを得ることができます。
QuickSight公式サイトにはダッシュボードギャラリーがあるため、ユースケース別にダッシュボードの例を参考に見ることができます。
機能
QuickSightは、高速なデータ分析および容易なデータ可視化を実現するために、主に以下の機能を提供しています。
- インタラクティブなダッシュボード
リアルタイムでデータを可視化し、ダッシュボード上でレイアウトのカスタマイズができます。
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SPICE(Super-fast, Parallel, In-memory Calculation Engine)
データをインメモリキャッシュすることで、高速なデータ分析を実現できます。
- 機械学習の統合
データの傾向に基づいた高精度の予測や異常検知などの機械学習機能を利用できます。
- 自然言語クエリ
自然言語でのデータ分析クエリに対応し、必要なデータを簡単に探索することができます。
ほかにも分析結果をチームで共有しながら共同作業を行ったり、モバイル端末からアクセスしたりすることもできます。
特徴
QuickSightは、主に以下の特徴があります。
- 自然言語によるダッシュボードおよびデータインサイトの作成(Amazon Q in QuickSight)
Amazon QはAWSサービス横断で使用することができる構築支援ツールです。QuickSightでAmazon Qを使用できるようになったアップデートについて、次章で解説します。専門的なデータ分析スキルがなくても簡単にデータ分析が可能です。
- ページ分割されたレポートの作成と配信
ページごとに分割されたレポートを作成し、共有および印刷に適した形式(電子メールやPDF形式)で配信することができます。定期的な報告や共有がスムーズに行えます。
- 既存アプリケーションへのダッシュボード埋め込みが可能
QuickSightのダッシュボードを既存のアプリケーションに組み込むことで、リアルタイムに分析結果を提供します。ユーザーエクスペリエンスを向上させ、アプリケーションに付加価値を提供します。
QuickSightを用いることで、データソースから分析サービスまでAWSで一気通貫でデータ分析をすることができます。またデータソースは、Google BigQueryやApache Spark等のAWSサービス以外も指定することができるため、データを外部から連携のうえ、AWS基盤で分析したいというニーズにも対応可能です。サポートされているデータソースは、QuickSight公式サイトで確認できます。