貴重な人材が定着する、魅力的な組織に必要な要素とは
「組織育成に悩んでいる人は多い」と語り始めたZOE氏。日本企業全体の平均離職率は約10%と厚労省の統計を示したうえで、「組織を維持するには毎年10%の人員を採用し続ける必要がある。ただしここで重要なのは、獲得した人材がいかに組織に定着するかであり、ひいては組織をいかに魅力あるものにしていけるかだ」とした。
魅力ある組織を作るためには、Googleが提唱する「⼼理的安全性」「信頼性」「構造と明確さ」「仕事の意味」「仕事のインパクト」の5要素や、激変する市場競争に適⽤するリーンやグロース、加えてAIの利活用へのキャッチアップなど、新たな考え方に柔軟に適応できることが重要だ。成⻑機会の提供や1on1の施策実施が、魅力的な組織の資質となる。
これらの見解をまとめ、ZOE氏は組織育成に不可欠な8要素を以下の図に示した。「魅力ある組織を育てるには、ここにある8要素がまんべんなく循環している必要がある。どれか1つでも欠けてしまうとサイクルが回らず、組織は成長しなくなる」(ZOE氏)
では、魅力的な組織を育てるにはどうすればよいのか。ZOE氏は「個への育成」と「組織への育成」の2パターンに分けたうえで、個への育成から取り組むことを推奨する。
ZOE氏曰く、個への育成で重視すべきは教育に対する考え方だ。そのカギを握るのが、育成者のマインドだという。「馬を水辺に連れて行くことはできても、馬に水を飲ませることはできない」ということわざを引用し、「知識の習得や実践にあたっては学ぶ側の意志が不可欠。教わる側に前提が共有されていない、もしくはモチベーションがない状態でコーチングを実施しても効果は低い」とZOE氏は解説する。
とはいえ、学ぶ側の態度・行動を無理やり変容させることは難しい。そのため育成者は、「育成者自身が学び続ける」「自走できるように教える」「エンジニアとしての強みを一緒に探す」の3点を心がけることが大切だ。「学習者となるエンジニアのモチベーションを高く保てるように心がけよう」とアドバイスを送った。
また、学習の効果を高めるには、コーチングを通してどのように成長することが求められているか、という前提の共有が望ましい。そのためには目標設定が有効であり、「長期・短期」「組織・個人」という2軸で目標を整理するのがよいと助言する。たとえば、短期・個人という視点では「今、自分にできること」、長期・組織という視点では「社内でこれから求められる能力」などを軸に検討することで、あいまいな目標設定を避け、期待値を擦り合わせられる。
ここでZOE氏は、自身の使っている目標設定テンプレートを紹介した。これは、「最終的になりたい姿」と「現状」を両端に記し、1年、3年、5年などの中間ポイントを埋めることで達成までの道のりを明確にするものだ。なお「頑張りゲージ」の項目は、ライフステージの変化も考慮して総合的につける。
「このように目標を設定することで、各年次で取り組むべきことと、各時期にどのくらい頑張れば良いのかが明確になる。理想に辿り着くまでの過ごし方がイメージできれば、モチベーションも続きやすいはず」(ZOE氏)