SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2024 セッションレポート

生成AIの使う「本物の英語」でマニュアルを作成──LLM時代の外国語テクニカルライティングとは

【16-D-1】生成AIで立ち向かうIT英語ライティング

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ChatGPTのローンチ以降、プログラミングをはじめとする多くの分野・領域で生成AIを利用した業務効率化が進んだ。多くの活用法があるなかで、説明書やマニュアルなどのテクニカルライティングはとくに活用が盛んな領域だ。とりわけ英語をはじめとする多言語のライティングは、翻訳アプリやサイトを利用せずとも可能になり、大幅な効率化が達成されている。生成AIは多言語向けのサービスにおいてエンジニアやテクニカルライターの負担軽減にも貢献する一方、利用には注意する点も多い。こうした使用上の注意点について、グローバリゼーションデザイン研究所・西野竜太郎氏が『生成AIで効率的に書く! ITエンジニアのための英語ライティング』(翔泳社)を基に講演を行った。

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

本物の英語を使う生成AIでも「間違い」は発生する

 講演は、生成AIを英語ライティングに使うメリットの紹介から始まった。西野氏によると、LLM(大規模言語モデル)をはじめとする生成AIを使うことで「ドキュメントの特徴に合った英語」が書けるという。たとえば英語でマニュアルを作る際は、マニュアル特有の表現を使ったテキストを生成する。こうした事象について、西野氏は「生成AIが膨大な数のマニュアルも取り込んで学習しているためだと考えられる」としている。

合同会社グローバリゼーションデザイン研究所 西野 竜太郎氏
合同会社グローバリゼーションデザイン研究所 西野 竜太郎氏

 英語らしい英語が書ける点も大きな活用メリットだ。日本語を母語とする話者は、機械翻訳を使って英訳する場合であっても「日本語的な発想」で英語を書きがちだが、生成AIは英語を直接的に生成するため、ネイティブスピーカーの英語を出力してくれるのだ。

 このように生成AIは利便性が高い一方、事実でない内容を創作するハルシネーションには注意が必要だ。生成された内容については、一般的な事実はもちろん、「ボタンに記載されているテキストは『Preference』なのに、マニュアル内では『Settings』と記述されている」といった自分でしか確認できない事実の確認も必要になる。

細かい事実確認は人の目で行うことで齟齬を防ぐ
細かい事実確認は人の目で行うことで齟齬を防ぐ

 生成AIを活用した英語ライティングでの基本的な使い方は、以下の3点がある。

  1. 原文を日本語で書き、それをAIに英訳してもらう「翻訳」
  2. 人間が書いた英文の問題点を指摘してもらう「添削」
  3. 文章全体を作ってもらう「生成」

 さらに、西野氏はこれらを実践するために必要な知識として以下のポイントを挙げている。

  1. ドキュメントタイプに関する知識
  2. 英文法と表記法の知識
  3. プロンプトの知識

 1.ドキュメントタイプに関する知識は、文書の種類についての知識だ。IT領域においてはマニュアルやAPIリファレンス、一般的にはメールや学術論文、ニュース記事などが挙げられる。こうした文書にはそれぞれ、文章構造や表現上の特徴があり、ここが守られていないと読者が違和感を覚えてしまう。マニュアルであれば、マニュアルらしい文章構造と表現を知っておくことがクオリティチェックに活かされるわけだ。

 2.英文法と表記法の知識は、生成された英文が自分の意図通りの文章であるのか、ハルシネーションが発生してないかを確認する際に求められる。そして3.プロンプトの知識は、生成AIに対する命令についての知識であり、有効とされるテクニックを知ることで効率的にライティングを進められる。

次のページ
ドキュメントの特性や英語表現についての理解も不可欠

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Developers Summit 2024 セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)

 立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/19781 2024/08/30 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング