本物の英語を使う生成AIでも「間違い」は発生する
講演は、生成AIを英語ライティングに使うメリットの紹介から始まった。西野氏によると、LLM(大規模言語モデル)をはじめとする生成AIを使うことで「ドキュメントの特徴に合った英語」が書けるという。たとえば英語でマニュアルを作る際は、マニュアル特有の表現を使ったテキストを生成する。こうした事象について、西野氏は「生成AIが膨大な数のマニュアルも取り込んで学習しているためだと考えられる」としている。
英語らしい英語が書ける点も大きな活用メリットだ。日本語を母語とする話者は、機械翻訳を使って英訳する場合であっても「日本語的な発想」で英語を書きがちだが、生成AIは英語を直接的に生成するため、ネイティブスピーカーの英語を出力してくれるのだ。
このように生成AIは利便性が高い一方、事実でない内容を創作するハルシネーションには注意が必要だ。生成された内容については、一般的な事実はもちろん、「ボタンに記載されているテキストは『Preference』なのに、マニュアル内では『Settings』と記述されている」といった自分でしか確認できない事実の確認も必要になる。
生成AIを活用した英語ライティングでの基本的な使い方は、以下の3点がある。
- 原文を日本語で書き、それをAIに英訳してもらう「翻訳」
- 人間が書いた英文の問題点を指摘してもらう「添削」
- 文章全体を作ってもらう「生成」
さらに、西野氏はこれらを実践するために必要な知識として以下のポイントを挙げている。
- ドキュメントタイプに関する知識
- 英文法と表記法の知識
- プロンプトの知識
1.ドキュメントタイプに関する知識は、文書の種類についての知識だ。IT領域においてはマニュアルやAPIリファレンス、一般的にはメールや学術論文、ニュース記事などが挙げられる。こうした文書にはそれぞれ、文章構造や表現上の特徴があり、ここが守られていないと読者が違和感を覚えてしまう。マニュアルであれば、マニュアルらしい文章構造と表現を知っておくことがクオリティチェックに活かされるわけだ。
2.英文法と表記法の知識は、生成された英文が自分の意図通りの文章であるのか、ハルシネーションが発生してないかを確認する際に求められる。そして3.プロンプトの知識は、生成AIに対する命令についての知識であり、有効とされるテクニックを知ることで効率的にライティングを進められる。