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市場から「見つけられる」ためのコミュニティ戦略で、変革するIT業界を生き抜く【夏サミ2017】

【B-1】コミュニティがITビジネスにもたらす変化

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2017/08/03 14:00

 「コミュニティ」は今やエンジニアだけのものではなく、ビジネスを拡大・発展させていく上で非常に重要な位置を占める存在になりつつあります。7月28日に御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催された「Developers Summit 2017 Summer」では、その「コミュニティ」に焦点を当てた形でさまざまなセッションが行われました。当稿ではアドビ、AWSでのマーケティングを経て2017年よりStripe、InstaVR、ヌーラボ、MOONGIFT、イベントレジスト等でパラレルに活動中の”パラレルマーケター・エバンジェリスト”小島英揮氏による発表内容についてレポートします。

目次

小島氏の現在のキャリアと「エコシステム」というキーワード

 小島氏は、「昨今、技術好きの集まりといった『内向き』なイメージを持たれる方もいるであろう『コミュニティ』に対して、IT系の企業だけでなく多くのビジネス・組織が興味を持ちつつある。この背景を理解いただくことで、デベロッパーがコミュニティを通じてどのようにキャリアを築けていけるのか、といった部分につながっていくと思います」とコミュニティの「位置付け」が変わってきていることに触れ、セッションを始めました。

5種類の名刺を持ち、多方面で活躍する
5種類の名刺を持ち、多方面で活躍する”パラレルマーケター・エバンジェリスト”小島英揮氏

 話を進めていくにあたり、小島氏は自身も過去に所属していたAdobe社の「Adobe、2020年末でFlashのサポートを終了と発表」というニュースを取り上げました。自身のコミュニティとの関わりも深かったAdobe社の製品がこのような結末を迎えてしまった理由を、小島氏は「テクノロジーが古くなったというよりも、エコシステムの中に居られなくなってしまった」と分析。この例を踏まえ、「その技術(テクノロジー)がエコシステムの中にちゃんと入っているのか、エコシステムの中心にあるのかといったことは見ていただきたいと思います」と話し、注目する技術の「見極め方」について解説しました。

 小島氏はこの持論について「かなり確信めいたものがある」と述べ、7年ほど携わっていたAWS(アマゾンウェブサービス)の進化発展を例に挙げました。「クラウドでできたエコシステムが今の新しいテクノロジーのエコシステムを作っている。クラウドコンピューティング自体はテクノロジーだけ見ると実はあまり新しいものではなかったが、従来のものとはサービスの提供形態が異なっていた(従量制料金を適用した)ことによって新たなビジネス展開を始めるユーザーが増えた。結果として今のエコシステムの形ができ上がった」と説明。クラウドがトリガーとなってビッグデータのマーケットが拡大しエコシステムができ上がった点を強調しました。さらにVRやMR、AIについても「ようやく価値を提供できる下地がそろい、消費できる環境ができてきた」と話し、「エコシステムが新しいエコシステムを生み出す」という不可避な流れを、実例を交えて分析しました。

エコシステムが新しいエコシステムを生み出す不可避な流れ
エコシステムが新しいエコシステムを生み出す不可避な流れ

 ちなみに小島氏はAWS退社後、複数の企業に籍を置く「パラレルキャリア」の道を歩んでいますが、これもエコシステムに関する上述の分析や読みがあったがゆえの選択とコメント。また、エコシステムにまつわる詳しい内容については「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」が参考になったそうなので、興味をお持ちの方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

IT・クラウド業界の変革で、コミュニティの意義はどう変わったか?

 「今後来る」であろう技術の見極め方についてはわかりましたが、どうやって新しい潮流のエコシステムを見つけ、取り込んでいけばいいのでしょうか。小島氏はこの問いに対し「コミュニティや勉強会を有効活用してほしい」と回答。技術の普及・進化のサイクルは近年とても速くなり、サービスは日々アップデートされています。そんな状況でマニュアルやガイドブックが出るのを待っていては周回遅れになってしまうので、他の方法で情報のキャッチアップをしなければなりません。

 小島氏はPublickeyの記事「クラウドの時代にはコミュニティがエンジニアの成長を支えていくのではないか」について言及し、新野氏の「クラウド関連の技術は社内や仕事を通して学べる範囲を超えている」というコメントを引用。これが「クラウド以降」で変革した状況であり、エンジニアは従来の方法ではカバーし切れない部分をキャッチアップしていく必要性に迫られています。そんな状況を乗り越えるために、小島氏は「コミュニティをうまく活用してほしい」とアドバイスしました。さまざまなコミュニティに参加するのは良いことだし、複数のコミュニティに参加することでセンサーの幅も広くなり、情報のキャッチアップもしやすくなるとコミュニティへの積極的な参加の有効性についても触れました。

 小島氏は「既存のマスマーケティングでは限界が来ている」とその理由について述べる一方で、これらの課題について効果的な働きをもたらすことができるのが「コミュニティ」であると皆も気づき始めているとコメントし、エンジニア観点だけではなく「ビジネスの観点からもコミュニティはますます重要になってきている」現状について述べました。ビジネス観点からのコミュニティの価値は、「ターゲットに響くコンテンツが生成されていること」と「ターゲットの拡散力」にあります。コミュニティで本当に知りたい情報が正しく作られ、正しく拡散されることで従来のマーケティング方法よりも効率的かつ効果的な展開が実現できるのです。

 コミュニティ活動・展開の好例として小島氏が挙げたのが日本国内におけるAWSのユーザーグループ、JAWS-UG。2010年東京支部発足をきっかけに全国に広まり、現在では全国50支部以上が日々活動を展開しています。

全国50支部以上が活動を展開するJAWS-UG
全国50支部以上が活動を展開するJAWS-UG

 コミュニティから生成されるコンテンツの質や量についても、小島氏は実例を交えて紹介。AWSの年次カンファレンスイベント「AWS re:Invent」では参加者のブログエントリは100を超え、コンテンツとしても強力なものとなっています。また、コミュニティとしての報告会も各所で多数展開されています。AWSに関する任意のキーワードでGoogle検索をしてみるとAWS公式の情報よりもコミュニティやユーザーの公開した情報が検索上位に表示される、といったこともよくあります。

参加者のブログエントリが強力なコンテンツを生み出すAWS re:Inventの例
参加者のブログエントリが強力なコンテンツを生み出すAWS re:Inventの例
Google検索をしてみると公式情報よりもコミュニティやユーザーによる情報が上位に表示される
Google検索をしてみると公式情報よりもコミュニティやユーザーによる情報が上位に表示される

 AWSにおけるコミュニティJAWS-UGでは「情報生成」「情報交換」「情報保存」の3つが相互連携・作用したことでうまくいきました。小島氏は「あなたのコミュニティではどうでしょうか。こういう仕組みがあったら良いと思いませんか? コミュニティを通じてお客さまに情報を展開していき、コミュニティに参加するビジネス側のアテンションも高めていきましょう」と参加者に呼び掛けました。


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著者プロフィール

  • しんや(シンヤ)

    2010年末~2013年前半位までの期間で興味のある勉強会に頻繁に参加。参加してきた勉強会のレポートブログとTogetterをひたすらまとめ続け、まとめ職人(自称/他称含む)として暫く過ごしておりました。色々な縁あってDevelopers Summit 2013では『公募レポーター』も務めました。...

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