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イベントレポート

米MS、開発者向けオンラインイベント「Connect(); 2017」を開催、今年は「AI/データドリブンなインテリジェンス」の将来性を強調

「Microsoft Connect(); 2017」キーノートレポート


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 米Microsoftは米国時間の11月15日から17日にかけて、同社の最新技術を紹介するソフトウェア開発者向けのオンラインイベント「Microsoft Connect(); 2017」を開催している。今年で4回目。全世界で数十万人の開発者がオンライン視聴を行っているという本イベントでは、初日のキーノートとして数々の新製品の発表やデモンストレーションが行われた。特に、一貫して取り組んでいる「開発生産性の向上」、近年力を入れている「オープン化」の動きに加え、今年は「AI/データドリブンなインテリジェンス」に力点を置いた発表だった。そのダイジェストを紹介する。

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 まずは例年どおり、クラウドとエンタープライズ分野を担当する上席副社長のスコット・ガスリー(Scott Guthrie)氏が登壇。

 「我々は現在、相互接続された世界にいて、アプリケーションやソリューションは、スマホやPC、IoTデバイスなどのインテリジェントなエッジデバイスと、クラウドの上に構築されるようになってきており、今日ほど開発者にとってよい時代はない」と前置きをした上で、イベント主旨について、最新の開発ツールのデモンストレーションや、クラウドプラットフォームのイノベーションの紹介を通じて、開発者の成功を支援すると語った。

 Microsoftは、"Any developer. Any app. Any platform."を掲げ、あらゆるプラットフォーム・目的・開発言語に対するサポートを表明しており、同社が提供する開発ツール群のVisual Studioファミリーにおいても、「Best-in-class tools for every developer(すべての開発者にとっての最高級のツール)」をミッションとして据えている。

 そのことを証明するかのように、最初のデモは、開発環境としてmacOS上のVisual Studio Code(マルチプラットフォーム対応の軽量コードエディタ)を使い、Linuxのバックエンドで動作するNode.jsのアプリを扱ったものだった。具体的には、サーバレスでグラフデータベースを扱うNode.jsのアプリをビルドし、Microsoft AzureへDockerコンテナの形でデプロイするというもの。

 クラウドプラットフォームと開発ツールの両方を手掛け、ユニークな立ち位置にいるMicrosoftならではの訴求点として、それらを密接に連携した相乗効果による高い生産性をアピールした。

 新機能として初めに紹介されたのは「Visual Studio Live Share」。協働開発を支援する機能で、セッションを共有している開発者どうしで、編集している箇所や内容、デバッグ情報などがリアルタイムに共有される。最新のスプレッドシートなどで実装されている同時編集機能がイメージに近い。Visual Studio Codeと統合開発環境「Visual Studio」との接続にも対応している。

 モバイルアプリ開発の機能も強化され、.NETのコードをiOSやAndroid向けのネイティブコードにコンパイルし、SwiftやObjective-C、Javaなどのプロジェクトからライブラリとしてアクセスできるようになった。これにより、同社のクロスプラットフォームアプリ開発技術の「Xamarin」を、既存のネイティブアプリのプロジェクトを拡張する形で段階的に導入できるようになった。

 また、「Visual Studio App Center」が一般提供開始された。以前は、Visual Studio Mobile Centerと呼ばれていたモバイルバックエンドサービスが元になっており、モバイルアプリ開発で多用するユーザ認証、オフライン同期、プッシュ通知、実機でのデバッグ、リリース後のアプリの監視、ユーザー端末の把握から利用動向の分析といった機能を一元提供。イテレーション開発を容易にする。Objective-C、Swift、Android、Xamarin、React Nativeによるアプリケーションが対象だ。

 マイクロサービスのアプローチに適したコンテナ型仮想化技術による開発に対しては、Kubernetesによるオーケストレーションをフルマネージドで提供する「Azure Container Service(AKS)」に対し、「Visual Studio Connected Environment for AKS」の機能が新しく追加された。

 DevOpsの支援面では、Visual Studio Team Servicesにもとづく新機能「Azure DevOps Projects」により、CI/CDのパイプライン設定が簡便化され、Azureサービスへすばやくつなげられるようにもなった。

 データベースサーバー「SQL Server 2017」と、それをAzure上でサービスとして提供する「Azure SQL Database」においては、運用を手助けする無料のツールとして「SQL Operations Studio」が発表された。Windows、macOS、Linuxで動作する。デモでは、SQL Server 2017からAzure SQL Databaseへのマイグレートが簡単に行えることも示された。

 また、クラウド提供のデータベースの選択肢として、OSSベースのものに「Azure Database for MySQL」「Azure Database for PostgreSQL」があったが、今回「MariaDB」のサポートも新たに追加された。

 世界規模の分散データベースサービス「Azure Cosmos DB」では、APIサポートの部分で従来のMongoDBやDocumentDBに加え、Cassandraにも対応した(プレビュー版)。

 ビッグデータ分析の領域においては、Apache Sparkの開発元であり、ホスティングサービスも提供しているDatabricksと提携。「Azure Databricks(プレビュー版)」として、AzureのサービスからもSparkベースの分析プラットフォームが簡単に利用できるようになり、実際にWebのポータル上で分析を行う様子が演じられた。

 基調講演の後半では、セス・ジュアレツ(Seth Juarez)氏がアプリケーションの将来像を担う3つの要素として「AIの注入(AI infused)」「新しい体験」「データドリブン」を挙げ、これらもデモンストレーションを交えて解説した。

 「AIの注入」の例としては、インテリジェントなユーザー体験を提供するMicrosoft Cognitive Servicesの活用シーンを紹介。画像認識のサービスをカスタマイズして独自の学習モデルを作成し、iOSのデバイスにダウンロードして利用する様子が示された。「新しい体験」の例は「Language Understanding Intelligent Service(LUIS)」で作るボットサービス、「データドリブン」については、データを扱う上で有用な開発ツールやフレームワークが充実してきている点に触れた。

 また、新機能としては、AIの学習モデルをVisual Studio上で開発できるようにする「Visual Studio Tools for AI(プレビュー版)」や、クラウドからエッジデバイスに学習モデルをダウンロードすることでレイテンシの改善などが期待できる「Azure IoT Edge(プレビュー版)」が発表されている。最後に、この領域を学習するラーニングパスとして「AI School」という特設ページが紹介された。

 各詳細については、Connect();のイベントページや、Channel 9のアーカイブ、MSDN Blogsの投稿などを参考にして欲しい。

 なお、今年は日本法人の施策として、日本マイクロソフトのエバンジェリストがツイッター実況解説するという試みや協賛メディア各社によるツイートキャンペーンも実施された。明日は、日本法人が今回の発表をローカライズして紹介する特別イベント「Microsoft Connect(); Japan 2017」も開催される。

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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