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女の子プログラマーを増やすヒントがmicro:bitにある⁉ 石井モルナさん×吉田葵さん

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2018/06/08 07:00

 プログラミング教育関係者から熱い注目を浴びるイギリス生まれの子ども向けマイコンボード、micro:bit。今回、『手づくり工作をうごかそう! micro:bitプログラミング』著者の石井モルナさんと、青山学院大学でmicro:bitを使った授業実践に取り組む吉田葵さんに、micro:bitの魅力や作例、そして女の子へのプログラミング教育についてうかがいました。

生徒のレベルにもやりたいことにも、柔軟に対応できるmicro:bit

――今、いろいろなプログラミング教材が出てきていて、どれにすればいいのか迷ってしまう保護者や教職員の方も多いのではないかと思います。関係者の間で評価が高いmicro:bitですが、何が画期的なのでしょうか?

吉田:学校で教材として使う場合は、ドライバや開発環境のインストールなしですぐに使えるのがいいですよね。共同研究している高校のプログラミングの授業では、前年は「なのぼ~ど」(Arduino互換 Scratchセンサーボード)を使ったのですが、ドライバのインストールが必要で、環境を整えるのが大変でした。micro:bitはUSBメモリが認識できればすぐ使えるので、その点で便利ですね。

 また、センサーがある程度内蔵されている点も挙げられます。大学の授業でこれまで使っていたArduinoは、電子部品を使うときは別で用意し、電子工作をする必要があります。LEDを光らせるまではよくても、音を鳴らすとなると必要な部品をくっつけなくてはならず一苦労でした。

 ですが、micro:bitには最初からセンサーが組み込まれているので、よりプログラムの構造にこだわれて使いやすいと思います。もちろん、電子工作をしたかったらいくらでも拡張できるのでいいですよね。

 また、micro:bitはブロックプログラミングからテキスト言語まで様々な言語で開発できるので、いろんなレベルの学生に対応しやすいです。本当に始めてだったり、とても苦手だったりする学生もいる一方で、ブロックプログラミングに対して「なんか子どもっぽい」とか、「いやオレは違うんだよ!」みたいな学生もいるのですが、その場合はJavaScriptやPythonでの開発を勧められるので、切り替えながら開発できます。

 電子工作の面でもプログラミングの面でも、生徒たちのやりたいことやレベルに応じていろんな使い方ができるところがいいなと思っています。発展性がありますよね。

石井:バランスのよさがありますよね。他の教材とは違い、車やロボットではなくてただのコンピューターなのですが、LEDやセンサーといった必要なものは中に入っているので、プログラムと部品次第で何にでもできるのがいいですよね。本当に学習用に、考えに考えてつくられたんだなっていうのがわかります。あとは言うまでもないですが、(2,160円という)本体価格ですよね。

吉田:すごいですよね。授業では最低限の電子部品をひとまとめにしたセットを作っているのですが、指導する側としては2,500円ぐらいで済むので本当に助かっています。生徒たち全員分を揃えても大丈夫という安心感がありますね。

石井:私は息子が2人いるのですが、もし今の時代に子育てをしていたら、数万円以上するようなロボット教材を買ってもどうせすぐ飽きるんじゃないだろうかと、きっと躊躇していましたね。

石井モルナさん

石井モルナさん:大学卒業後、半導体メーカーに就職。
新入社員向け等の研修の講師を担当。その後子育てを経て復職し、
様々な職種を経て、現在はフリーで組み込み系の講師や執筆活動を行う。
電子工作をかわいくつくること、手芸・ハンドメイドが趣味。

無線通信で友だちとつながるのが楽しい!

――学生たち、子どもたちの反応はいかがですか?

吉田: 高校生、大学生を相手に使ってみましたが、micro:bitはとても簡単に音を出せるので、みんなまず音を鳴らすのに夢中になりますね。

 あと、人気があるのが無線通信です。これまでの教材だと無線通信は非常にハードルが高かったのですが、micro:bitだと「こっちであっちを動かす」といったことが簡単にできるので、友達同士で簡単に繋がれるのが魅力です。学生はそこに面白さを感じているのではと思います。1人でやるのではなく、複数人で1つの作品を作ったり遊んだりできるのが画期的ですよね。

石井:普段からScratchでゲームを作っているような小学生たちを集めてmicro:bitのワークショップを開催したときは、micro:bitのLED画面上で動くテトリスやブロック崩し風のゲームを自分で考えて作っていたのが印象的でした。

 PCの画面の中でゲームを作ってきた子にとっては、micro:bitをゲーム機みたいに使えるというのが面白いのかなと思います。コンピューターそのものを触ることができるのはよいですよね。通信して対戦もできますし。

吉田葵さん

吉田葵さん:青山学院大学社会情報学部助教。
津田塾大学でコンピューターサイエンスを学び、
現在はフィジカル・コンピューティングを利用したプログラミング教育等について研究。
大学の授業でプログラミングを学生たちに教えるほか、高校教員と連携した授業実践も行っている。
女の子のためのプログラミングワークショップも企画。

micro:bitで学生たちは何をする? Lチカから機械学習まで

――micro:bitを授業に取り入れる場合、どのような使い方ができそうでしょうか? 実例も含めてご紹介ください。

石井:もし私が使うならの話ですが、小学校でしたら、図工や家庭科の授業で布などと組み合わせて手芸をしてみたり、音楽で楽器を作ってみたり、クリエイティブな方面で自由に使えたら面白いと思いますね。

 2020年を間近に控えて、小学校の先生は本当に大変だと思うのですが、プログラミングは詳しくないという先生でも、micro:bitは直感的に触れて楽しいものなので、micro:bitで遊んでいるうちに、現場の先生ならではの授業アイデアが生まれるのではないでしょうか。

吉田:高校の情報の授業で、問題解決の手段としてmicro:bitとプログラミングを使って身近な課題を解決しよう、という授業を展開し、3~4人のグループで取り組んでもらいました。高校では情報における様々な単元でマッチすると思いますし、小学校でも算数や理科など、本当に幅広くできるのではと思います。

 大学では主に情報系の学生を対象に「今までの知識を総動員してアイデアを形にしよう」という授業の中で使っています。工作が好きで、普段プログラムをそれほど書かないような学生は貯金箱を作っています。機械学習までやってみる学生もいますし、Unityのゲームの操作にmicro:bitを活用している学生もいます。micro:bitは自分のレベルとやりたいことをうまくバランスできることがすばらしいですね。

貯金箱

コインをセットし、モーターが回るとコインの大きさ別に分けられる貯金箱。

入室くん

「入室くん」。ウェブカメラで人を認識して部屋に誰が入ってきたかを学習する。
人が部屋に入ってきたきっかけをmicro:bitで認識。

プログラミングを女の子に教えるときの「とりあえずピンク」問題

――プログラミング教室やワークショップなどに行くと、やはり男の子がマジョリティな気がするのですが、女の子にプログラミングに興味を持ってもらうための接し方というのはあるのでしょうか。

吉田:女子大でプログラミングを教えているのですが、当初は「どうすれば女の子に興味を持ってもらえるんだろう」と、いろいろテーマを考えました。物語を作ってみようとか、単なるゲームとは少し違う方向から攻めようかなとか。ですが、ゲーム好きな女の子だってやっぱりいるんです。

 始めは「女の子だからこういうテーマにしよう!」と考えていたんです。かわいくしなくてはと思って資料もピンクにして。女の子はきっと物語やストーリーを作るのが好きだから、それを試しもしました。

 でも、最近は幅広いテーマでできるということをアピールしながら接したほうがいいのかなと、考えがシフトしていますね。「とりあえずピンクにしとけばいいだろ」っていう話でもないなと思い始めています。

――その女の子がファッションや美容やかわいいピンクのものが好きなら、それをテーマにしてもらえばよい話で、教える側から女の子らしいテーマを提示していく必要は必ずしもないということでしょうか。

吉田:そうですね。できるだけいろんな種類のテーマを用意してあげて、うまくプログラミングと組み合わせられるようにしてあげればいいかなと思っています。

――何か好きなことがあって、それをプログラミングという道具とうまく組み合わせればいいということですね。

吉田:とはいいつつ、男の子は放っておいてもプログラミングに興味を持ってくれる感じはあるんですよね。やはり、女の子もやっていいんだよというメッセージが必要だと思っています。

 決めつけはよくないという前置きしますが、喋り出すと止まらないなど、女の子たちはコミュニケーションが好きな傾向があると感じています。女の子は1人で黙々と作業するよりも、複数のメンバーで楽しみながら作業するほうが好きそうな気がするんですよね。だから、複数のmicro:bitで通信するのは女の子が好みそうです。

 高校での授業のとき、女の子がmicro:bitの無線通信をコミュニケーションの手段として使っていたのに対し、男の子はリモコンのように使っているという光景を見ました。もちろん一括りにはできませんが、女の子に対してはコミュニケーションの要素を入れるような内容を提案すると、親和性が高くなるのではと思っています。

ミュージックボックス

複数人で遊べるミュージックボックス。
micro:bitの画面に出る指示どおりにボタンをタッチして音を鳴らす。
女の子3人のグループによる作品。

 また、プログラミングを教える側が女性だと、女の子は「自分もやってていいんだな」と安心してくれます。今、大学の授業のアシスタントをしてくれている学生の多くが女の子なんです。やっぱり女の子の興味を惹くには女の子だなと。同性の存在が後押しになるのではないでしょうか。

石井:私が関わることの多い組み込み業界も、エンジニアは男性が多いですね。メーカーのエンジニア向け新人研修でも、女性を見かけることは本当に少ないです。

 たしかに女性に教えてもらえれば、無意識のうちに、自分でも将来こういう仕事ができるかもしれないと思うようになれるかもしれないですね。お子さんや学生さんにとって、教える人の影響は大きいと思うので、老若男女問わず、熱意ある教える人がどんどん増えてほしいです。

吉田:お父さんやお母さんにも「プログラミングは男の子」みたいな刷り込みも多少あると思うので、そこへメッセージを出すことも大切だと思います。最近は一般向けのワークショップでも、子どもたちだけではなく保護者の方も一緒にやってもらうことを大切にしています。

石井:つい数年前まではIT企業に勤めるお父さんが自分の子どもをワークショップに連れてくるイメージだったのですが、今は小学校でプログラミング教育が必修化されるというのもあって、様々なバックボーンの方が来られている印象があります。この流れは嬉しいですね。

 私にも子育て中で余裕がない日々がありました。「プログラミングをやらせなきゃうちの子が出遅れちゃう!」みたいな焦りが高じてワークショップに連れてきているお母さんもいるのではないでしょうか。

 そんなお母さんの気持ちは、よくわかります。プログラミングのワークショップは、まずは楽しく体験してもらうように企画されているところが多いので、あまり構えないで、ぜひ気軽に参加いただけると嬉しいですね。

――一般の方がワークショップに来るようになったという変化はあっても、我々自身も含めてまだ「プログラミングは男の子」みたいな刷り込みは変化していないということですね。

吉田:変わり始めてはいるけど、まだまだだと思います。市販のプログラミング教材もロボットなど男の子向けのデザインが多い気がしますし……。

 プログラミングとは関係なく売れている女の子向けのおもちゃは、何かを育てたり、コミュニケーションしたりするのがウリのものが多いと思います。なので、プログラミングを女の子に教えたり教材を考えたりするうえでも、お喋りやコミュニケーション、何かを育てるといった要素が大事なのではと思います。

石井:おもちゃメーカーによる女の子向けのプログラミング教材に期待ですね。変身ステッキとか魔法のコンパクトならかわいいですし、電子工作向きかも。『micro:bitプログラミング』に登場する「魔法のサウンドステッキ」は女の子が好きな変身ステッキを少しイメージしているんです。

魔法のサウンドステッキ
「魔法のサウンドステッキ」。明るさに応じて音が変化する楽器。

親子のコミュニケーションのきっかけにしてほしい

――最後に、『micro:bitプログラミング』をどんな人に読んでもらいたいか教えてください。

石井:この本は、本当に一般のお父さん・お母さん方が子どもと遊ぶのをイメージして書きました。プログラミングや電子回路がわからなくても大丈夫です。micro:bitは専門的な知識不要で本当に直感的に遊べるので、ぜひお子さんと一緒に読んで試してみてほしいですね。

 世の中で「プログラミングが大事」と言われているから何かさせてみたかったり、単に子どもが興味を持っていたり、きっかけはどんなものでもいいので、始めてみたらきっと楽しいと思います。とっちらかったリビングでも、みんなでワイワイしながら作れるような工作を考えたので、春休みや夏休みに、思い出作りにいかがでしょうか。

玩具
micro:bitプログラミング

Amazon SEshop その他


micro:bitプログラミング 手づくり工作をうごかそう!

著者:石井モルナ、阿部和広
発売日:2018年4月19日(木)
価格:1,944円(税込)

本書について

本書のテーマは「モノづくり」。micro:bitを使った楽しい工作や、生活の役に立つ便利ツールのつくりかたを紹介します。活用するのは段ボールやペットボトルといった身近な素材。手づくりの工作を、プログラミングして動かす。そんな新しい時代のモノづくりを、親子ではじめてみませんか?

 



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著者プロフィール

  • 榎 かおり(エノキ カオリ)

    翔泳社書籍編集部に所属する編集者。『子供の科学』の編集を経て現職。EdTechやSTEM教育に関心があります。

  • 渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

     翔泳社マーケティング広報課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。 Twitter@tiktakbeam

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