世界中で1億DLを達成 情熱と楽しさを起点に開発を続ける秘訣
セッションの口火を切ったのは、CrystalDiskMarkやCrystalDiskInfoなど、世界中で累計1億回以上ダウンロードされたソフトウェアを生み出してきた宮崎典行氏。会社員として働くかたわら、26年以上にわたり趣味で個人開発を続けてきた。その活動が認められ、2014年の1月からはMicrosoft MVP for Developer Technologiesを11期連続で受賞している実力者でもある。


そんな宮崎氏が語ったのは、個人開発を「楽しく」「長く」続けるために大切にしている4つの視点だ。
1つ目は「成果を社会に還元すること」。宮崎氏の代表作であるCrystalDiskInfoはオープンソースとして公開されており、ユーザーからのフィードバックや開発者との協働によって進化してきた。オープンソース化したことで、たくさんの人の目に留まり、USBハードディスクへの対応パッチを外部から提供された。また、NVMeへの対応をTwitter上で呼びかけた結果、韓国の開発者から実装方法を教わったこともあった。現在は、ストレージベンダーからの協力依頼が届くようになった。この好循環が生まれたのは、「オープンソースだからこそ実現した」と語る。

2つ目は「世界一を目指すこと」。かつてCPU情報ソフト「WCPUID」に憧れ、CrystalCPUIDの開発に打ち込んだ学生時代。一時は世界中で広く使われたが、新たなCPUへの対応が追いつかず、ソフトはフェードアウト。「しかしこの挑戦こそが、現在につながる礎となった」と宮崎氏は評価する。

3つ目は「開発資金の確保」。学生時代は資金面で苦労し、開発環境を整えることの大切さを痛感。そこで社会人になる直前にGoogle AdSenseを活用し、資金と開発を両立する仕組みを模索した。現在は必要な機材を迷わず購入できる体制を整え、開発に集中できる環境を作っているという。
そして4つ目が「ワクワクを大切にすること」。16年ぶりの新作としてリリースしたCrystalMark Retroは、Windows XP対応という位置づけだった。しかし、SNS上では激励の意味を込めて、「PC-98やNT3.51にも対応しろ」とのラブコール(煽り)が殺到した。好奇心に突き動かされ、旧OS対応に本気で取り組むこととなった。その後、Visual Studio .NET 2003を使い、40年前のCPUにも対応するなど執念のアップデートを重ねた姿勢は、まさに「Just for Fun」の精神そのものだ。

最後に宮崎氏は、「意味があるかどうかなんて関係ない。自分が楽しいからやっている」と、ここまでの歩みを総括する。個人開発は、情熱と楽しさを起点に世界へ届くものになる。その実例として、会場に大きな刺激を届けたセッションだった。