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Developers Summit 2025 セッションレポート

1億DL、Rails採用、ポケコンでSNSツイートも⁈ 「好き」から作り上げた個人開発の魅力とは?

【13-E-9】見て触って語れる!個人開発の魅力を語るリレーセッション

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 誰にも頼まれていないけれど、自分が欲しいから作る。それが人に届き、時に公式機能となり、あるいは学生クラウドとして進化していく——このリレーセッションでは、そんな個人開発のリアルについて、個性光る5組の登壇者が語った。1億ダウンロードを超えるソフトを支える継続力。副業禁止企業の中で見出した収益化に頼らないモチベーション。Railsに採用されたライブラリ。ポケコンで動くTwitterクライアント。そして、学生たちの手によるクラウド構築。好きで始めた個人開発が世界とつながる、その力と魅力が詰まったセッションだ。

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世界中で1億DLを達成 情熱と楽しさを起点に開発を続ける秘訣

 セッションの口火を切ったのは、CrystalDiskMarkやCrystalDiskInfoなど、世界中で累計1億回以上ダウンロードされたソフトウェアを生み出してきた宮崎典行氏。会社員として働くかたわら、26年以上にわたり趣味で個人開発を続けてきた。その活動が認められ、2014年の1月からはMicrosoft MVP for Developer Technologiesを11期連続で受賞している実力者でもある。

宮崎 典行氏
宮崎 典行氏
宮崎は学生時代から実に26年間も個人開発に取り組み続けてきた
宮崎氏は学生時代から実に26年間も個人開発に取り組み続けてきた

 そんな宮崎氏が語ったのは、個人開発を「楽しく」「長く」続けるために大切にしている4つの視点だ。

 1つ目は「成果を社会に還元すること」。宮崎氏の代表作であるCrystalDiskInfoはオープンソースとして公開されており、ユーザーからのフィードバックや開発者との協働によって進化してきた。オープンソース化したことで、たくさんの人の目に留まり、USBハードディスクへの対応パッチを外部から提供された。また、NVMeへの対応をTwitter上で呼びかけた結果、韓国の開発者から実装方法を教わったこともあった。現在は、ストレージベンダーからの協力依頼が届くようになった。この好循環が生まれたのは、「オープンソースだからこそ実現した」と語る。

オープンソースにしたことで、思わぬ味方を得ることができた
オープンソースにしたことで、思わぬ味方を得ることができた

 2つ目は「世界一を目指すこと」。かつてCPU情報ソフト「WCPUID」に憧れ、CrystalCPUIDの開発に打ち込んだ学生時代。一時は世界中で広く使われたが、新たなCPUへの対応が追いつかず、ソフトはフェードアウト。「しかしこの挑戦こそが、現在につながる礎となった」と宮崎氏は評価する。

惜しくも世界一は掴めなかったが、そのガッツは氏も、セッションの聴衆も奮い立たせた
惜しくも世界一は掴めなかったが、そのガッツは宮崎氏も、セッションの聴衆も奮い立たせた

 3つ目は「開発資金の確保」。学生時代は資金面で苦労し、開発環境を整えることの大切さを痛感。そこで社会人になる直前にGoogle AdSenseを活用し、資金と開発を両立する仕組みを模索した。現在は必要な機材を迷わず購入できる体制を整え、開発に集中できる環境を作っているという。

 そして4つ目が「ワクワクを大切にすること」。16年ぶりの新作としてリリースしたCrystalMark Retroは、Windows XP対応という位置づけだった。しかし、SNS上では激励の意味を込めて、「PC-98やNT3.51にも対応しろ」とのラブコール(煽り)が殺到した。好奇心に突き動かされ、旧OS対応に本気で取り組むこととなった。その後、Visual Studio .NET 2003を使い、40年前のCPUにも対応するなど執念のアップデートを重ねた姿勢は、まさに「Just for Fun」の精神そのものだ。

エンジニアらしい「煽り」に発奮し、難易度の高い実装へ次々とチャレンジ。まさに職人だ
エンジニアらしい「煽り」に発奮し、難易度の高い実装へ次々とチャレンジ。まさに職人だ

 最後に宮崎氏は、「意味があるかどうかなんて関係ない。自分が楽しいからやっている」と、ここまでの歩みを総括する。個人開発は、情熱と楽しさを起点に世界へ届くものになる。その実例として、会場に大きな刺激を届けたセッションだった。

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副業NGの制約下で 趣味と人助けから生まれた“収益に縛られない個人開発”

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この記事の著者

夏野 かおる(ナツノ カオル)

 博士。本業は研究者。副業で編集プロダクションを経営する。BtoB領域を中心に、多数の企業案件を手がける。専門はテクノロジー全般で、デザイン、サイバーセキュリティ、組織論、ドローンなどに強みを持つ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

井山 敬博(イヤマ タカヒロ)

 STUDIO RONDINOのカメラマン。 東京綜合写真専門学校を卒業後、photographer 西尾豊司氏に師事。2008年に独立し、フリーを経て2012年からSTUDIO RONDINOに参加。 STUDIO RONDINO Works

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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