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イベントレポート

Rubyが生まれた頃、そしてこれからのRubyを語ろう――まつもとゆきひろ氏×アーロン・パターソン氏【GitHub Satellite Tokyo】

GitHub Satellite Tokyo パネルディスカッション「Rubyが生まれた頃、そしてこれからのRuby」レポート


日本語がわからなくても、Ruby開発に参加できるように

アーロン:Rubyのコアチームのメンバーはほとんど日本人ですが、開発においてコミュニケーションの問題が起きることはありますか?

まつもと:コアコミッターと呼ばれる、Rubyの中央リポジトリにコミットする権利を持った人は100人弱います。そのうち、日本人の割合は半分くらい。ですので、実は日本人ではない人もたくさんいます。けれど、活発に活動しているメンバーに日本人が多いので、そういう印象を与えているのかもしれないですね。

 実は、アクティブメンバーの日本人の多さゆえにコミュニケーションの問題が起きたことがあります。10年前くらい前、当時の私たちは日本語のメーリングリストでやりとりをしたり直接会って話したりして、Rubyの仕様を決めていました。けれどあるとき「Rubyの開発はオープンソースだけどクローズドだ」と言われたんです。

 日本人ではない人にとって、Rubyの開発過程で何が起きているのか全くわからない状態になっていました。「確かにそうだ」と思い、大いに反省したんです。

 それ以降、開発に関するやりとりはすべてRedmine上に掲載し、記述する言語も英語にしました。英語が読めれば議論の内容を理解できるようにし、可能な限りクローズドにならないように心がけています。

 また、月に1回くらいの割合でコア開発者のうち時間に余裕がある人たちが集まってミーティングをしているんですが、その議事録も英語で残しています。今後も、日本語がわからなくてもRuby開発に参加できる状態にしていきたいです。

アーロン:「日本語がわからなくても」というのは本当に良いことですね。私は2005年にRubyと出会ったんですけど、当時はRubyの情報がほとんど日本語でしか書かれていなくて読み解くのが大変でした(笑)。

 私が日本語を始めたのは、それがきっかけです。ソースコードだけではなく、文章に何が書かれているかを知りたくて。Rubyのおかげで日本語がわかるようになりました。

まつもと:アーロンの奥さんは日本人ですけど、Rubyとの出会いは彼女よりも前ですよね。もしかしたら、Rubyがあったからこそ(日本語を知ったので)奥さんと結婚したのかもしれないですね(笑)。

アーロン:どうもありがとうございます(笑)。

まつもと:いえいえ、どういたしまして(笑)。

「普通に使えば、当たり前に良い仕事をするRuby」でありたい

アーロン:では、Rubyの未来について話したいと思います。

まつもと:さまざまな理由から、メディアなどで「Rubyは死んだ(将来性がない)」と言われることがあります。

 静的な型宣言がないからダメだとか、Ruby on Railsで書かれたアプリは複雑化するとメンテナンスが大変だからダメだとか。毎年のように「だから死んだ」と言われていて、「本当はいつ死ぬんだろう」という感じなんですけど(笑)。

アーロン:(笑)。

まつもと:でも、Rubyには悪い点だけではなく良い点がたくさんあるのは間違いありません。数多くの有名サービスがRuby( on Rails)で開発されています。今後も広く使われ続けていくはずです。

 近年のRuby開発の方針は、Ruby製の有名サービスを開発・運営している企業の方々とお話をし、挙がってきた意見をもとに機能を改善していくといった流れになってきています。

 昔はRubyに多くの課題がありました。例えば、10年くらい前はパフォーマンス面に課題があったために、企業がRubyを独自改造して自社サービスにマッチするように作り変えている事例もありました。

 でも、最近はそういったケースが少なくなってきています。徐々にRubyが良くなってきているからです。コアチームの努力が報われました。私たちは、Rubyを「普通に使えば、当たり前に良い仕事をする言語」にするため努力を続けています。

 今までのRubyと同じように書けばもっと速く動くとか、エラーがもっと早く見つかるとか、生産・開発効率が良くなるとか。より便利な状態を提供するのが、現在安定期に入ったRubyコアチームの役割です。Rubyの未来はそこにあるんじゃないでしょうか。

アーロン:つまり、Rubyはもっと良くなるんですね。

まつもと:そうですね。Rubyはこれからも良くなっていきます。どうか楽しみにしていてください。

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この記事の著者

中薗 昴(ナカゾノ スバル)

 週の半分はエンジニア、もう半分はライター・編集者として働くパラレルキャリアの人。現職のエンジニアとして培った知識・経験を強みに、専門性の高いIT系コンテンツの制作を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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