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Oracle Code Tokyo レポート(AD)

エンジニアのための勉強会「Oracle Code Tokyo Night」を覗いてみた~企業システムにブロックチェーンを導入するなら何を考慮する?

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続いて応用:自身の経験を踏まえて実践的なポイントを解説

バックエンド業務まで見据えたHyperledger Fabricシステムの設計ポイント

 アクセンチュア 山田昌嗣氏が金融機関にてブロックチェーンのプロダクトを開発、運用した経験をもとにHyperledger Fabricの設計や開発のコツを発表した。

アクセンチュア株式会社 山田昌嗣氏
アクセンチュア株式会社 山田昌嗣氏

 エンタープライズ領域のシステムでは、データの書き込みや読み込みの性能、さらに高度なデータ活用が求められるが、ブロックチェーンを活用した場合、書き込みが多いと読み取り性能が劣化したり、必要なデータが全量取り出せなかったりといった課題が生じがちである。

 読み取り性能の劣化はWorldState(現在の状態をKVSとして格納しているデータベース)との通信がシングルスレッドであることや、データベースのリビルドが影響する。そのため処理の特性に応じてノードを制御したり、リビルド間隔やデータ投入時の多重度を変数にして最適値を試行錯誤したりした。

 必要なデータが全量を取り出せないのは、Hyperledger Fabricの仕様上100MB以上のデータが転送できないことによる。そのためデータをクライアント側で分割取得したり、データ構造をスリム化したりするなどで対応した。

 山田氏はバックエンド業務まで見すえたコツとして、データを厳選する、データの物理設計を小さくする、WorldStateのインデックスは必要最小限にする、データ取得はWorldStateに直接クエリするなど工夫する必要などを挙げた。

バックエンド業務まで見すえた設計・開発のコツ
バックエンド業務まで見すえた設計・開発のコツ

ブロックチェーン技術の本番適用に向けた顧客課題への取り組み

 元々データベースエンジニアとしてブロックチェーンの開発チームやPaaSサービス立ち上げを経験した秀嶋元才氏は、ブロックチェーンプロジェクトで構想策定と実証実験のフェーズにおいて、顧客にどうアプローチするか解説した。

秀嶋元才氏
秀嶋元才氏

 ポイントとしては、顧客が攻めようとするビジネス領域や事業における強みを明確化することと、正しい技術知識と技術選定の知見を示すことになる、と述べる。

 構想策定フェーズにおける顧客からの質問には、ブロックチェーンに関する基本概念やビジネスとの関連性などがある。対応としては、テクノロジーの進歩により何が起きているか、ブロックチェーンがどんな役割を担っているかなどを説明する。

 本番適用に向けた実証実験フェーズにおける顧客からの質問には、データベースとの比較で優位点やコスト、既存の仕組みを置き換える必要性などがある。対応としては、比較を提示しつつ使い分けが重要であること、コスト比較では業務全体で最適化できることを説明する。置き換えの可否では機能と非機能の両面で比較する。

 セッションでは、実際に秀嶋氏がどのようなアプローチで説明したか、要点が挙げられた。

Enterprise Blockchain サービス実用化における技術的なポイント

 ブロックチェーン技術企業である、トライデントアーツ株式会社の代表取締役を務める町浩二氏は、サービス実用化における技術的なポイントを解説した。前提としてブロックチェーンを「改ざんできない履歴情報を複数の主体者がリアルタイムで監視できるデータベースに関する技術」と定義する。

トライデントアーツ株式会社 町浩二氏
トライデントアーツ株式会社 町浩二氏

 エンタープライズ領域に適用することを考えると、ビジネスアーキテクチャ、データアーキテクチャ、アプリケーションアーキテクチャ、テクノロジーアーキテクチャの4点から全体最適解を見いだすことが必要とされる。それぞれにおいて、自社(対象となる企業)にあてはめて考えていく。

 例えばビジネスアーキテクチャ。ブロックチェーンではスケーラビリティが問題になりがちだが、エンタープライズ領域ではさほど頻繁には問題にならない。それよりもシステムの寿命年数を見越して必要な業務処理性能を把握したり、ネットワークやディスクIOの最適設計を実施したりすべきだと町氏は言う。

 初期のブロックチェーン実装はCoin(仮想通貨)だったが、今ではスマートコントラクトに進み、将来的はエンタープライズアーキテクチャと組み合わせることで、スマートエンタープライズとして「新たなイノベーションの実現へ」と町氏は言う。

グローバルのエンタープライズでのブロックチェーン活用

 勉強会当日、幸運にもオラクルコーポレーションで「Oracle Blockchain Cloud Service」のプロダクトマネジメントを務めるMark Rakhmilevich氏が来日していたこともあり、同氏にOracle Cloud上でHyperledger Fabricをマネージド型のPaaSで提供される「Oracle Blockchian Cloud Service」と、グローバル企業のエンタープライズでのブロックチェーン活用動向について解説してもらった。

Oracle Corporation Mark Rakhmilevich氏
Oracle Corporation Mark Rakhmilevich氏

 「Oracle Blockchain Cloud Service」はエンタープライズ領域のアプリケーションで活用されることを想定し、オープンソースであるHyperledger Fabricを強化したサービスとなる。オラクルのSaaSアプリケーションだけではなく、サードパーティーやカスタムのSaaSからも利用可能だ。

 マネージド型PaaSサービスなので、素早く利用可能であることや、本番環境で利用する時のパフォーマンスやセキュリティにも対応している。Rakhmilevich氏はサプライチェーンや物流などで本番運用している事例やOracle Cloudのダッシュボード(管理画面)も示した。

パネルディスカッション

 最後のパネルディスカッションでは、Sli.doを通じて、当日の参加者から寄せられた質問に登壇者が回答する形で行われた。例えば「Hyperledger FabricはEnterprise EthereumやCordaに比べてデータ処理能力は?」という質問には「それほど大きな違いはない」と回答があった。加えてエンタープライズ領域にブロックチェーンを導入するなら、データ処理能力よりも「チェインコードやデータ、アプリ設計の重要度の方が遙かに高い」といった指摘がなされた。

 パネルディスカッションの後は、ビールを片手に、参加者同士のネットワーキングも行われた。情報収集だけではなく、参加者同士が顔を合わせて交流できるのが勉強会の醍醐味でもある。日本オラクル主催であるものの、テーマをオラクル製品に限らず旬の話題で開催していくという、新たな取り組み。今後の展開に期待したい。

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/11496 2019/04/26 12:00

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