3つのカテゴリで新機能・サービスを発表
GitHubは、業界のエキスパートがGitHubおよびソフトウェア開発の最新情報を共有するカンファレンス「GitHub Satellite」を、毎年各都市で開催している。これは毎年秋にサンフランシスコで行われる最大規模のカンファレンス「GitHub Universe」の延長上にあるイベントだ。今年はベルリンで開催され、好評のまま幕を閉じた。
今回、日本向けの説明会でGitHub カントリー・マネージャーの公家尊裕氏は「昨年度は日本で開催し、Microsoftによる買収が発表されたあと、承認の前という微妙な時期での開催で、お答えできない部分もあったが、今回のベルリンではクリアな状態になり、今後のテクニカルな方向性について、新しい発表がたくさんできました」と話した。
GitHub Satellite Berlinで発表されたのは「セキュリティ」「エンタープライズ」「コミュニティ」の3つにまつわる新機能や新サービス。現地で基調講演にも登壇した、GitHub オープンソースエコノミー担当プロダクトマネージャー デヴォン・ツェーゲル氏が来日し、その詳細を解説した。
セキュリティ強化のための新機能を多角的に提供
「オープンソースは、世界中全てのソフトウェアプロジェクトの根幹です。開発者が書いたコードは、その他の何千ものオープンソースのコードの上に成り立っています」と、オープンソースコミュニティの考え方について触れたツェーゲル氏。
見ず知らずの人が協力してすばらしいプロダクトを作れるのがオープンソースの魅力だが、一方でソフトウェアは安全なものでなければならず、コラボレートする開発者同士の信頼性が重要だ。そのためには「セキュリティが必要不可欠」とツェーゲル氏は語る。
まずは、セキュリティに関する新機能のリリースから説明した。
セキュリティ脆弱性アラートにおいてWhiteSource社とパートナーシップ締結
2017年11月にリリースしたセキュリティ脆弱性アラートは、依存関係を脆弱性データと比較しながら確認し、検知されたら自動的に開発者にアラートを送る仕組みだ。直近の12カ月において、世界中の開発者に2700万のアラートを送っている。この機能はGitHub Enterprise、GitHub.comどちらでも利用できる。
今回、脆弱性データのリーダー的存在であるWhiteSource社とのパートナーシップを結んだことで、40万にのぼる脆弱性コンポーネントを含む、豊富な脆弱性データにアクセスできるようになった。
ディペンデンシー・インサイト
「アラートを出すだけでなく、開発者やセキュリティのチームが、社内のエコシステムにおける現況をつかむサポートもしていきたい」と話すツェーゲル氏。
新機能ディペンデンシー・インサイトでは、全ての依存関係を可視化し、インポートされたオープンソースの関係性や、ライセンスを見ることができる。これは「セキュリティやコンプライアンスのチームにとっても有効」とツェーゲル氏は語る。
セキュリティ・ポリシー
セキュリティの問題が発覚すると、セキュリティ・ポリシーをリリースしていくのが通例だ。各企業にセキュリティの専任チームはあっても、個別のオープンソースのプロジェクトごとに対応するのは容易ではない。
そこでGitHubは、こういったセキュリティ・ポリシーの作成を容易にする機能を開発した。メンテナーが1つのセキュリティ・ポリシーを作成すると、オーガナイゼーションの配下にある全てのリポジトリに反映できるツールになっている。
メンテナー用セキュリティ・アドバイザリー
また、新機能メンテナー用セキュリティ・アドバイザリーを使用すれば、非公開で問題を議論、修正し、セキュリティアドバイザリーを発表できる。完全にプライベートな、関係者のみが見られる環境が整っているので、安心して議論できる仕組みになっている。
さらに、1カ月経過してもパッチが当てられない脆弱性が70%にものぼるというデータがあるように、どうやって迅速にパッチを当てるのかというのは非常に重要な問題だ。
GitHub Satelliteで、GitHubは、依存関係のアップデートを自動化するサービスを提供するDependabot社を買収したと発表した。この仕組みをGitHubに統合したことによって、依存関係を常時監視し、更新が必要であればPull Requestを自動的に作成、提供できるようになった(参考)。
まとめとしてツェーゲル氏は、「GitHubは、連携したコミュニティの力を最大限に活用した中で、より安全な、ユーザーから信頼されるアプリケーションを構築するサポートをしていきたい。それを可能にするツールを開発者に提供していきます」と、今後もセキュリティ強化のサポートをしていく姿勢を語った。