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開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー

「1on1」はただの面談ではない~メンバーが気づきを得るためのカイゼンの場を作ろう

開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー 第6回

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 この連載では、開発現場で実践できるカイゼンのやり方と考え方について、お伝えしていきます。下敷きになっているのは、「カイゼン・ジャーニー」という書籍です。「カイゼン・ジャーニー」も、現場のカイゼンがテーマになっています。この新たに始める連載は、内容としては書籍を補完するもので、チームが現場でこのWebページを開きながら、実際にふりかえりをしたり、カンバン作りをしたりできるように作っています。本を開きながらより、Webページをモニタに映す方が、ワークショップもやりやすいですよね :) また、読者の皆さんが実際の状況を重ね合わせられるよう最初にストーリーがあり、その後解説が続く、といった構成にしています。ストーリーでは、カイゼンを実施するにあたってどんな背景や課題を想定しているかを描いています。よく知らない手法については、ストーリーに目を通すようにしてください。

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 このお話の舞台は、飲食店の予約サービスを提供するIT企業のプロジェクトチーム。ツワモノぞろいのチームに参加した新人デザイナーのちひろは、変わり者のメンバーたちに圧倒されながらも日々奮闘しています。第6回となる今回のテーマは「1on1」です。

登場人物

和田塚ちひろ(25)この物語の主人公。新卒入社3年目のデザイナー。わけあって変わり者だらけのプロジェクトチームに参加することに。自分に自信がなく、人に振り回されがち。

和田塚(わだづか)ちひろ

この物語の主人公。新卒入社3年目のデザイナー。わけあって変わり者だらけの開発チームに参加することに。自分に自信がなく、周りに振り回されがち。

御涼()プログラマー。物静かだが、今後もちひろをよく見て助けてくれるお姉さん。

御涼(ごりょう)

物静かなプログラマー。チームではいろんなことに気を回すお母さんのような存在。今後もちひろをよく見て助けてくれる。

鎌倉()社内でも有名な凄腕のプレイングマネージャー。冷静で、リアリストの独立志向。ちひろにも冷たく当たるが…

鎌倉

業界でも有名な凄腕のプレイングマネージャー。冷静で、リアリストの独立志向。ちひろにも冷たく当たるが…

藤沢()頭の回転が早い、このチームのリードプログラマー。鎌倉の意向をうまく汲み取る。

藤沢

チームのリードプログラマー。頭の回転が速く、リーダーの意向を上手くくみ取って、チームのファシリテートにもつとめる。

境川(?)ほぼしゃべらない。実はチーム随一の天才プログラマー。自分の中で妄想を育てていて、ときおり滲み出させては周りを慌てさせる。

境川(さかいがわ)

彼の声を聞いた人は数少ない。実は社内随一の凄腕プログラマー。自分の中で妄想を育てていて、ときおりにじみ出させては周りをあわてさせる。

片瀬()インフラエンジニア。ちひろのOJTを担当していた。

片瀬

インフラエンジニア(元々はサーバーサイドのプログラマー)。他人への関心が薄いケセラセラ。ちひろのOJTを担当していた。

リードプログラマーの迷走

「わー!!」

「どうしたの。朝から雄叫びをあげて」

「これ……見てくださいよ」

 私が指さしたディスプレイを、御涼さんは重たいメガネをかけ直しながら見つめにきた。そこには、あるpull requestに対する大量のコメントが並んでいた。異常と言っていい程、ほぼ全行に渡ってコメントがついている。

「これは……藤沢への境川さんのレビューコメントか」

 いつの間にか出社していた片瀬さんも私の後ろからディスプレイを眺めていた。

「なんという……」

(子どもじみた、意趣返し……!)

 明らかに、前回のミーティングで藤沢さんと境川さんの意見が対立したことが原因なのだろう。

 やがて遅れて出社してきた藤沢さんはこの状況を見て、冷静に受け流そうと…するはずもなく、自分のカバンを机にたたきつけて、境川さんの方を全く見ることもなく自分の所定の場所に乱暴に着席した。

「……こんなコードになるのなら、コード書くのやめた方がいいんじゃないか……」

 境川さんの投げかけに対して一べつもせず、藤沢さんはがぜんディスプレイに向かい、猛然とキーをたたき始めた。ここからだった。藤沢さんと境川さんの永遠とも思える、果てしないコメントのやりとりが続いたのは。

(大人がする……子どものケンカだ……!)

 いつもクレバーな2人がとてもつもなくささいなことに躍起になって、コメントでやりとりをするありさまに、私たちは最初はほほ笑ましさすら感じていたが、やがてそうも言っていられなくなった。

 藤沢さんは境川さんとのやりとりに全力を尽くし始めて、今まで担っていたチームのファシリテートや運営に全く見向きしなくってしまったのだ。藤沢さんの理路整然としたファシリテートがなければ、鎌倉さんからのタフクエスチョンには答えられないままだし、勝手気ままなチームメンバーの活動も、ふわっとしていて結果に結びついていかない。

 見かねた御涼さんや片瀬さんが、藤沢さんの目を覚まそうと働きかけるのだけど、全く耳を傾けない。チームのリードプログラマーを自認していた藤沢さんのプライドが境川さんのことを許せないでいるのだ。

「ダメだこれは」

「私たちでは聞く耳ないわね。鎌倉さんが1on1でもして話してくれたらいいのだけど、我関せず……」

 1on1!それを聞いて、私はあるアイデアが思いついた。

「1on1、それですよ!」

 御涼さんと片瀬さんは、首をかしげた。

「まさか、和田塚さんが、藤沢くんに1on1をする?」

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この記事の著者

市谷 聡啓(イチタニ トシヒロ)

 ギルドワークス株式会社 代表取締役/株式会社エナジャイル 代表取締役/DevLOVEコミュニティ ファウンダー サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

新井 剛(アライ タケシ)

 株式会社ヴァル研究所 SoR Dept部長/株式会社エナジャイル 取締役COO/Codezine Academy Scrum Boot Camp Premiumチューター CSP(認定スクラムプロフェッショナル)/CSM(認定スクラムマスター)/CSPO(認定プロダクトオーナー) Javaコンポー...

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https://codezine.jp/article/detail/11596 2019/07/04 11:00

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