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イベントレポート

クリエイティビティを阻害する最大要因は「時間」、Adobe XDではオンラインでのコラボ機能を大幅強化【Adobe MAX Japan 2019】

「Adobe MAX Japan 2019」レポート

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 アドビ システムズは12月3日、現役のクリエイターおよびクリエイターを目指す人を対象とした日本最大級のクリエイティブカンファレンス「Adobe MAX Japan 2019」をパシフィコ横浜(神奈川・みなとみらい)で開催した。本稿では、特にUXデザインツール回りのアップデートを中心にお伝えする。

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脚光を浴びるクリエイティビティを発揮する仕事

 日本法人の代表取締役社長のジェームズ・マクリディ氏は、基調講演の冒頭で、すべての人々にとってクリエイティビティ(創造性)の能力を伸ばすことがますます重要になってきていることを訴えた。

 例えば、大手広告代理店のデザイナーを主役にした「左ききのエレン」(ドラマ版)や、女子高生によるアニメ制作活動を描いた「映像研には手を出すな!」(アニメ版映画版)といった作品が世間の耳目を集めていることを引き合いに出し、クリエイティビティを発揮する仕事への憧れや認知が世の中で進んでいることを示した。これらの作中においてもアドビのツールが登場しているという。

 また、マクリディ氏が日々、多くのクリエイティブリーダーや、さまざまな企業の経営者と会話をする中で、「ビジネス上の利益を確保する上でもクリエイティブが大事だという認識が浸透し、人材ニーズも高まっている」と所感を述べた。

アドビ システムズ株式会社 代表取締役社長 ジェームズ・マクリディ(James McCready)氏
アドビ システムズ株式会社 代表取締役社長 ジェームズ・マクリディ(James McCready)氏

クリエイティビティを最も阻害する「時間」の問題を解決

 続いて、アドビのクリエイティブサービス・ツール群である「Creative Cloud」製品の最高製品責任者を務めるスコット・ベルスキー氏が登場。今回のイベントの一つの焦点として、「Creativity. Imagination.(クリエイティビティと想像力)」を挙げた。

Adobe Inc. Creative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者) スコット・ベルスキー(Scott Belsky)氏
Adobe Inc. Creative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者) スコット・ベルスキー(Scott Belsky)氏

 クリエイティビティと想像力は人間特有の特徴で、これらによって人類は文明を生み出し、物質的にも精神的にも豊かになることができた。我々の想像力には限りがないと思えるほどだ。

 一方で、クリエイティビティを阻害する大きな要因が1つある。「時間」の制約だ。参考資料の検索やコーディング作業、ステークホルダーとの調整に加え、制作ツールの使い方を学ぶ時間など、さまざまな局面において「時間」は共通のボトルネックとなりうる。

 そのため、Creative Cloudの開発方針として「時間克服」が最優先事項になっているという。これを解決し、クリエイターのポテンシャルを最大限に発揮させるという軸で、最新の取り組みが多数紹介された。

 ベルスキー氏が今回、Creative Cloudのアップデートの特徴として挙げたのが、「より速くパワフル、かつ高い信頼性」「いつでも、どこでも、誰とでも制作」「新たな表現への挑戦」の3つだ。

Creative Cloud最新アップデートの3つの特徴
Creative Cloud最新アップデートの3つの特徴

 1点目は、主にパフォーマンスと信頼性に関するものだ。例えば、最新版のIllustratorでは、複雑なパス構造をもつアートワークがきびきびと動く様子や、バックグラウンドでのファイル保存により、作業が中断することなく制作を進められる様子が示された。

 また、制作作業の面でもAIや機械学習を活用したテクノロジー群の「Adobe Sensei(アドビ・センセイ)」が幅広く支援する。画像上のモノや人を判別してワンタッチで対象を選択したり、動画の被写体を自動認識してスマホ向けに最適な構図と解像度で切り出すといった、従来は人力に頼っていた高度な作業を自動化できるようになってきている。

このように緻密に描かれたベクターグラフィックスも最新版のIllustratorでは軽快に動作する
このように緻密に描かれたベクターグラフィックスも最新版のIllustratorでは軽快に動作する
Adobe Senseiの技術を活用すれば、Photoshopで対象の境界を細かく選択して切り抜くといった手間のかかる作業もボタン一発で行える
Adobe Senseiの技術を活用すれば、Photoshopで対象の境界を細かく選択して切り抜くといった手間のかかる作業もボタン一発で行える

 クリエイティビティは、いつでもどこでも、アイデアが頭に浮かんだ瞬間に発生するもの。より大きな仕事をする上でコラボレーションも欠かせない。2つ目の特徴「いつでも、どこでも、誰とでも制作」は、それを表している。

 アドビでは、近年モバイル系の制作ツールを拡充してきており、最近iPad版のPhotoshopが正式リリースされ、Illustrator iPad版もベータ版としてアナウンスされた。これにより例えば、新幹線での移動中にPhotoshopを使うことができるし、今年9月にリリースされたiPad向けのスケッチ&ペイントアプリ「Adobe Fresco(フレスコ)」(最近Windowsにも対応)を使えば、リアルな油絵や水彩画を手を汚さずに飛行機の待ち時間などで描ける。また、クラウドを介してシームレスに連携し、仕上げを自宅のデスクトップアプリ版で行うことも容易だ。これにより時間や場所の制約から解放される。

iPad版のPhotoshopでライブでフォトレタッチする様子。森林の画像とキノコの画像をもとに、キノコが発光する幻想的な画像を手早く作れることが示された
iPad版のPhotoshopでライブでフォトレタッチする様子。森林の画像とキノコの画像をもとに、キノコが発光する幻想的な画像を手早く作れることが示された
iPad版のFrescoを使ったライブペインティング。水彩画の技法で、ウォッシュからのにじみで空を描画したり、選択範囲によるマスキングで富士山を描画したりしている。手前の梅は、レイヤーを重ねたうえで、筆圧で太さが変化する面相筆のブラシなどを使って描かれた
iPad版のFrescoを使ったライブペインティング。水彩画の技法で、ウォッシュからのにじみで空を描画したり、選択範囲によるマスキングで富士山を描画したりしている。手前の梅は、レイヤーを重ねたうえで、筆圧で太さが変化する面相筆のブラシなどを使って描かれた
iPad版のIllustratorで、パスでイラストを描画している様子。タッチデバイスに最適されたUIで軽快に描画できることが示された。撮影画像からAdobe Senseiの機能で簡単にトレースできることも紹介
iPad版のIllustratorで、パスでイラストを描画している様子。タッチデバイスに最適されたUIで軽快に描画できることが示された。撮影画像からAdobe Senseiの機能で簡単にトレースできることも紹介

 3点目の「新たな表現への挑戦」は、主に3Dや、VR/ARといった没入型の体験の制作を表している。デザイナーがノンコーディングでAR空間の体験を制作できるツール「Adobe Aero(エアロ)」のほか、今年アドビはAllegorithmic社を買収し、3Dテクスチャや素材を作成するツール「Substance」を製品スイートに統合している。

Adobe Aeroを使うと、ノンコーディングでAR向けの動きのある3Dコンテンツを簡単に作ることができる
Adobe Aeroを使うと、ノンコーディングでAR向けの動きのある3Dコンテンツを簡単に作ることができる

 また、「挑戦」は単に新しいツールやメディアを使うことだけでなく、現状に満足せず、新しいスキルを磨くことも対象としているという。例えば、Lightroom 3.0では、アプリ内にある段階的なガイド付きチュートリアルで基礎を学んだり、専門家の制作活動を参考にしたりできるようになった。

 日本でも、毎週木曜の夜にライブ配信されている「Creative Cloud道場」や、各製品ページで「ことはじめ」といったチュートリアルコンテンツが拡充されつつある。

 他にも多数の発表が行われたが、ここでは割愛し、プロトタイピングツール「Adobe XD(アドビ・エックスディ)」の最新動向にフォーカスしてお伝えする。なお、昨年のキーノートの模様などは後日動画で公開されていたので、今年も公開される可能性がある。

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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