コミュニティは製品や言語、ライブラリ別に毎晩30~40開催
日本マイクロソフトの小田祥平氏は、Developer Audience Manager/Evangelist(デベロッパー オーディエンス マネージャー/エバンジェリスト)として、Microsoftのプロダクトを中心とした、コミュニティの企画・運営・サポートに携わっている。
多くのエンジニアから注目を集めるコミュニティ活動。小田氏がセッション参加者へ質問したところ、月1回以上コミュニティに参加している人は全体の2割程度で、1回も参加したことがない人は3~4割ほどいた。
そもそも技術者向けコミュニティとはどのようなものなのだろう。小田氏は「共通の関心軸をもとに、その技術に興味がある人、より知りたい人が集まり、開発のポイントや事例、つまづきポイントなどを共有し合う社会人サークルのようなものです。ステークホルダーも関係ない、企業の垣根を越えた仲間ですね」と話す。
コミュニティの種類は、製品やプログラミング言語、ライブラリ、フレームワーク別、地域別などさまざまなものがある。こうしたコミュニティは、TwitterやWebサイトなどで告知され、平日の夜や休日の日中などに開催されている。
「東京なら毎晩30~40のコミュニティが開催されています。connpassやPeatixなどのイベント管理サイトで申し込みをして、コワーキングスペースや企業のセミナールームなどへ出向いてみてください。いきなり参加する勇気が出ないときは、まずはSlideShareなどで資料を見て、Twitterのハッシュタグを追ってみるところから始めてもいいですね」(小田氏)
では実際のコミュニティでは何が行われているのだろう。気になるその内容は、大きく「セッション・ライトニングトーク」「ハンズオン・ワークショップ」「もくもく会」「それらの複合」の4種類に分けられるという。
とは言え、それでも参加に不安はつきもの。「登壇する自信がない」「会社やチームにコミュニティへの参加を理解してもらえない」といった声も聞かれる。こうした声について小田氏は「参加者はほとんどが同じエンジニアです。コミュニティで何か発言しても『マサカリを投げてくる』ような怖い人はいないので安心してください(笑)。会社が理解してくれない方は、上司も連れてきちゃいましょう。なぜコミュニティへの参加が必要なのかをきっと理解してもらえます」と、まずは気軽に参加してみてほしいと促す。さらに、コミュニティに参加することで、最先端エンジニアの仲間入りを果たせるという。
「そもそもコミュニティに参加しているのは、エンジニア全体のほんの6%ほどです。中でも登壇し、ブログやTwitterなどでアウトプットしている人はたった1%。開催中のつぶやき、終わったあとに何かアウトプットするだけでその1%になれます」(小田氏)
それに加えて、コミュニティに参加する大きなメリットとして、社外のものさしで自分の立ち位置を知ることができる点も挙げた。
「ずっと社内にいると、現在の自分や所属会社の実力が業界全体のどこに位置しているのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。社外の人と話をして知見を見聞きするなど共有することを通じて、自分の技術力や自社に足りないものを見つけることもできるはずです」(小田氏)
コミュニティへの参加に慣れてきたら、運営側へ回る選択肢もある。Microsoftでは、コミュニティにインパクトを与え、活発にアウトプットなどの貢献活動をしている方に向けて「Microsoft MVPアワード」で表彰している。
加えて、日本マイクロソフトは2019年11月、代官山にコミュニティ活動専用のコワーキングスペースを設立した。
「ここなら必要な設備も整っていますし、無料でコミュニティ活動を行えます。大切なのは『コミュニティに参加する人たちがどれだけ主体的かつモチベーション高くアウトプットできるか』ということ。これからもコミュニティ活動を積極的にサポートしていきます」(小田氏)
最初のハンズオンは2人……Noodlコミュニティの大躍進
ここで、北欧のデザインイノベーションファームTOPP社が開発した、UI・UXプロトタイピングツール「Noodl(ヌードル)」のアドボケイトを務める加藤健大氏が登場。加藤氏は2019年5月にNoodlコミュニティを立ち上げ、わずか1年足らずで300人超の人気コミュニティへと成長させた。
NoodlはIoTとの親和性が高く注目されつつあるものの、日本ではまだそれほど導入が進んでいない。
「この技術をもっと多くの人に使ってもらいたいと思っていたものの、どうすればいいかわからなかったんです。まずはハンズオンを企画してSNS広告で告知したところ、参加者はたったの2名でした(苦笑)」(加藤氏)
そんなとき、加藤氏が出会ったのが小田氏だった。小田氏はNoodlの利用者をどう増やしたらいいか途方に暮れる加藤氏に「そりゃ、コミュニティでしょ!」とアドバイスし、小島英揮氏の著書『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』(日本実業出版社)を勧めた。
「『広告を出稿するようなマスマーケティングはやめて、コミュニティマーケティングをしてみたら』と伝えました。IoT関連のLT大会にどんどん参加し、Noodlで作った作品を発表してみることをオススメしたんです」(小田氏)
その後、加藤氏をはじめとするベンダー側は、小田氏のアドバイス通りに、コミュニティマーケティングを展開していった。コミュニティマーケティングを行う際、加藤氏は前述の書籍に書かれた「3つのファースト」を実践した。
【1】オフラインファースト
ハンズオンなど初心者向けイベントをオフラインで開催。
【2】コンテキストファースト
コミュニティに関心を持ってくれた人が、何を知りたくて、Noodlをどう活用したいのかをリサーチ。
【3】アウトプットファースト
イベント参加者へツイートやブログ執筆などをしてもらうように声をかけ続ける。
このように、いくつかのIoT関連のLTに参加した加藤氏。その結果、特に「コンテキスト」がはっきり見えてきたのだという。
「さまざまな参加者と話をするうち、開発者のニーズやNoodlの技術的な強みを知ることができました。その結果、ハンズオンを開催した際も強みを生かしたコンテンツを提供できるようになりました」(加藤氏)
するとコミュニティ主催企業のひとつ、IoTによるコンサルティングなどを手掛けるウフルから「逆プロポーズ」をされたのだという。
「ウフルさんのイベントに参加したとき、コラボイベントを提案していただいたんです。ウフルさんのツールとNoodlの強みがマッチして、良いコラボができそうだと思っていただいたようです」(加藤氏)
その後、ウフルのIoT開発運用支援サービス「enebular」×クラウドベースのIoT開発ボード「obniz」×Noodlコミュニティの3者による、ハロウィンコラボイベントが実現。さらに、Noodlで作ったものをTwitterやQiitaで発信していた方と出会い、Noodlコミュニティのコアメンバーになってもらった。そのおかげで今ではコアメンバーの方との共同主催でNoodlの「もくもく会」を開催できるまでになった。
「いろいろなコミュニティに積極的に参加したことで、コミュニティのコアメンバーに出会えました。本当に良かったと思っています」(加藤氏)
次第に、月1回開催される公式イベントは、募集開始2時間で満席になるほどの人気に。コミュニティメンバーは今も増え続けている。
加藤氏は大きく成長したNoodlコミュニティのこれからについて、次のように語った。
「Noodlユーザーがコミュニティを通じてやりたいことを実現できる場を作り、コアメンバーの皆さんをサポートしていきたい。参加者の皆さんには、まずは仲間を作るつもりで楽しんでほしいですね!」(加藤氏)
それを受けて、小田氏もコミュニティの醍醐味について語った。
「扱う製品や技術が好きな気持ちがあれば、気軽にコミュニティに参加してOKです。社外の方やベンダーとの出会いも多いので、ビジネスにもつながりますよ」(小田氏)
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