そもそもプロダクトとは何か
まず、プロダクトマネージャーが成功させるべき「プロダクト」についても定義しておこう。プロダクトは日本語では「製品」または「商品」となるが、これは市場に提供され、なんらかの個人や団体の需要を満たすものである。本連載(及びその元となる執筆中の書籍)では主にITを活用したプロダクトを取り上げているが、ITにおいてのプロダクトはパーソナルコンピューターやスマートフォンのようなハードウェアやWindowsやブラウザ、さらにはクラウド技術やそれらを活用するECサイトなどのソフトウェアが該当する。
そして、プロダクトと似た言葉に「事業」がある。過去には、開発されたプロダクトの周りに、それを販売する営業や顧客からの問い合わせに対応するサポートなどが存在し、それで事業が構成されている関係だった。プロダクトと事業の関係を以下の図に示す。
そして、IT活用が事業の核となった昨今では、「プロダクト」と「事業」の垣根が曖昧となっている。
例えばカスタマーサポートも、以前の売り切り型の事業では、手離れが良いことが求められることもあり、プロダクト本体との関わりは大きくはなかった。これまでのカスタマーサポートはユーザーからの問い合わせに対して、一つひとつ人の手で回答するのが一般的であり、プロダクトを作る開発部署の外にカスタマーサポートの部署があった。しかし、プロダクト自体にユーザーのオンボーディング(初回利用)を補助する機能や、チャットボットがユーザーの質問に答えるフォームをつけることで、ユーザーはカスタマーサポートからの返信を待たずに、プロダクトを利用する体験の中での戸惑いを解消するようになった。
こういったカスタマーサクセスの考えのもとで、顧客の課題を解決し、価値を提供し続けることで、継続利用を目指すことが今日では一般的となっている。顧客の成功のために伴走するという考え方である。つまり、プロダクトの外にあったカスタマーサポートの役割がプロダクトの中に取り込まれ、カスタマーサクセスという新しい概念となった。
カスタマーサポートがカスタマーサクセスに進化した例から分かるように、従来は別フェーズ、もしくは別の担当者が行うものと思われていた業務がプロダクト開発や運用の一環で行われるようになっている。そして、この動きによって、プロダクトの内と外で分断していたユーザー体験を統括することになり、結果として積極的にユーザーの価値を創造するようになった。つまり、これまでプロダクトの外にあった組織や機能を内に取り込むことで、プロダクトの範囲が広がり、事業との境が曖昧となりつつあるのである。
つまり、あえて定義すれば、プロダクトには狭義と広義の2種類があると言える。狭義のプロダクトとは、エンジニアによるアウトプットである成果物だ。そして広義のプロダクトとは、すなわち事業であり、成果物を販売するための営業部隊やカスタマーサポート組織を含めたものである。プロダクトと言ったときにアウトプット単体を指していることもあれば、アウトプットとそれに付随する活動すべてを指していることもある。そして、プロダクトマネージャーは後者の広義のプロダクトの視点を持つことが重要であり、昨今ではプロダクトが事業そのものに近づいていると理解していなければならない。
プロダクトマネージャーの役割の全体像
プロダクトが事業に近づいたことによって、プロダクトマネージャーの役割は経営者のそれと近しいものとなった。事実、プロダクトマネージャーはミニCEOと呼ばれることもある。CEOと聞くと、大規模な組織の長であり華やかな存在をイメージするかもしれない。もちろん、そのような側面もあるが、規模の大小に関わらず、CEOに求められるのは事業成功のため必要なことすべてに目を配り、こだわり抜くことである。
大企業のように、事業に多くのメンバーが関わる場合には、CEOが自ら手を動かすことはないが、スタートアップの場合には自ら手を動かすことも多い。そして、自分が専門でないことであっても、黙っていて誰かがその業務を拾ってくれることを期待してばかりもいられない。となると、自らが調べて動かなければいけないかもしれないし、他のメンバーに依頼する必要があるかもしれない。もしくは、外部の専門家に委託をする必要があるかもしれない。いずれにしろ、自らが動き判断することが求められる。このような役割は、皆さんの想像するCEOという名称にはもしかしたらふさわしくない、泥臭い役割だ。
ミニCEOとも呼ばれるプロダクトマネージャーの役割には以下の3つの軸がある。
- プロダクトによって事業価値と顧客価値を最大化する
- プロダクトの中長期の戦略立案やビジョンの構築とプロダクトのビジネス、開発、UXのすべてのプロセスに携わる
- 組織横断のプロダクトチームを率いる
プロダクトマネージャーはプロダクトの成功に責任を持つ人間である。ユーザーが利用したいと切望する、価値あるプロダクトの種を見つけ出し、それを実際に利用可能な形にまで作り上げ、プロダクトを通じて自社の事業価値を最大化することが求められる。
また、プロダクトの短期的な成功だけではなく、長期的な視野に立った意思決定が必要だ。そのためにはビジョンの策定という大局的な視野を持つのと同時に日々の開発や運用も行うことになる。
そして、プロダクトを成功させるためには、プロダクトに関わるチームメンバーやステークホルダーとの連携が重要だ。
このように、プロダクトマネージャーの役割は非常に幅広い。これがプロダクトマネージャーの魅力であるとともに、役割を全うすることが難しい理由でもある。
このプロダクトマネージャーを既存の職業で例えるならば、起業家であると同時に探検家であることが求められていると言える。成し遂げるための執念を持つ起業家と探究心を持つ探検家の二面性がある。
次回は
さて、第2回となる今回はプロダクトとプロダクトマネージャーとは何かを、役割を中心に紹介した。次回はプロダクトマネージャーが担当することになるプロダクトについてさらに掘り下げてみよう。
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