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Drupal 9で始めるWebサイト開発入門

高機能CMS「Drupal」とは? 基本概念を理解してローカル開発環境を構築する

Drupal 9で始めるWebサイト開発入門 第1回

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DrupalとWordPressの違いは?

 「オープンソース」「CMS」と聞いて多くの人が思い浮かぶソフトウェアは「WordPress」ではないでしょうか。両者は共に、PHPで記述されたソフトウェアで、かつ、巨大なコミュニティによってサポートされており、一見共通点が多いように見えます。

 端的に言うと、DrupalとWordPressは市場の住み分けがされており、実は競合することは多くはないことがわかります。

ブログなどの小~中規模サイト

 ブログシステムとして高い完成度を持つWordPressは、この条件にピッタリ当てはまります。シンプルで直感的なインターフェースは初心者にとってフレンドリーであり、素早くサイトを立ち上げることができます。世界中の多くのサイトはこの要件に当てはまることもあり、オープンソースCMSの中で、WordPressは世界1位の利用数を誇っています。

 Drupalでももちろんこういった要件のサイトを立ち上げることは可能ですが、WordPressほどサクッと作成できるようにはなっていません。

複雑性の高い大規模サイト

 Drupalは抽象度の高いデータモデルを標準で採用しており、非常に拡張性の高いCMSです。そのため、大規模で複雑性の高いシステムに多数利用実績があります。また、標準でキャッシュ機能を搭載しているため、負荷の高いサイトでも広く使われています。

 WordPressでも「プラグイン」と呼ばれる拡張機能を追加し、PHPコードを記述することで実現できますが、ブログシステムに最適化された設計上でのカスタマイズとなります。Drupalと比較すると手間のかかる手段となるでしょう。

国内・国外の事例

国外
国内

Drupal 9になって何がよくなったのか

 2001年にDrupal 1.0が登場してから19年が経過し、来る2020年6月3日、4年ぶりのメジャーアップデートとなるDrupal 9がリリースされました。ここで、Drupalの創設者でありプロジェクトリーダーであるドリス・バイタルト(Dries Buytaert)氏の言葉を紹介します。

 The big deal about Drupal 9 is...that it shouldn't be a big deal (Drupal 9で重要なことは...それが重要になりえないということです)

 Drupal 8が登場した4年前の2015年、PHPフレームワークのSymfonyを採用したことでDrupal 7と大きくアーキテクチャが異なり、Drupal開発者にとっては、7から8は痛みを伴う移行となりました。そのため、Drupal 8はレイアウトビルダー、メディア管理、JSON:API、BigPipeなど多くの優れた機能がリリースされましたが、いまだにDrupalで一番使われているのはDrupal 7です。

 それに対し、Drupal 8から9への移行は、ここ10年で最も簡単なアップグレードとも言われています。Drupal 9で新しくなることは主に、主要な依存関係のアップデートとなります。具体的には、SymfonyやTwigのバージョンアップ、PHPUnit 8のサポートなどです。

 システム要件は以下の通りアップデートされます。

  • PHP minimum 7.3
  • MySQL minimum 5.7.8
  • MariaDB minimum 10.2.7
  • PostgreSQL minimum 10
  • with pg_trgm extension
  • SQLite minimum 3.26
  • Only Drush 10 supports Drupal 9

 Drupal 9.0自体にはDrupal 8の最新バージョンと比べて新機能はありませんが、引き続き機能の追加と改善が行われます。DrupalCon Amsterdam 2019(Drupalコミュニティのグローバルカンファレンス)にて、ドリス氏はDrupal 9の製品戦略について述べており、これを見るとDrupalがこれから進んでいく方向性が伺えます。

図2:Drupal 9の製品戦略(出典元)
図2:Drupal 9の製品戦略(出典元
Reduce cost + effect(コストと労力の削減)

 自動更新、構成管理などに注力し、サイト開発を低コストで行えるようにする。

Prioritize the beginner experience(初心者向け体験の優先)

 初心者の参入障壁を下げて、Drupalエキスパートだけではなく初心者にも好かれる。

Drive Open Web(オープン・ウェブの推進)

 世界中の全ての人々がオープンで透明性の高いWebにアクセスできるように、アクセシビリティ、包括性、セキュリティ、プライバシー、および相互運用性に重点を置く。

Be the best structured data engine(最高の構造化データエンジンを目指す)

 デジタル体験を促進させるため、Drupalをより優れたコンテンツリポジトリに対応させる。

 この戦略トラックの内容は、Drupal 2020 product survey(Drupalの製品調査)の結果からさらにブラッシュアップされ、直近3~5年の方向性が定められる予定です。Drupalに関する新しい情報は常にDrupal.orgまたはドリス氏のブログで追うことができます。

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連載で実装するサンプルサイト

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この記事の著者

丸山 ひかる(マルヤマ ヒカル)

2014年、独立系ソフトウェア開発会社に新卒入社。 Web APIの開発をメインに、保守、運用、顧客サポートまで幅広く携わったのちに、テクニカルエバンジェリストとしてプロダクトの普及に貢献。 現在はDrupalを基盤としたエンタープライズ向けCMSプラットフォームを提供するAcquia(アク...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/12342 2020/06/11 11:00

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