プレスリリースが直接生活者に届く時代
基調講演では、PR TIMESの舛田貴司氏(営業本部 アカウントプランナー 自治体情報発信推進プロジェクト責任者)、富士通で理事/首席エバンジェリストを務める中山五輪男氏、そしてFUJITSU TECH TALK運営事務局での司会でおなじみの田原彩香氏の3人が、プレスリリースの効果的な利用について対談。田原氏の軽快なファシリテーションで進行した。
PR TIMESは、企業や組織のプレスリリース(Press Release、PR)を配信するプラットフォームとして2007年にスタートした。ミッションは「行動者発の情報が人の心を揺さぶる時代へ」。行動者の中には、企業だけではなく、開発や開発者を支援する人も含まれるという。
そもそもプレスリリースとは何か――。舛田氏は「PRとはパブリックリレーションズのことで、組織とその組織にとって重要な人との間で、相互に利益的な関係性を築く戦略的コミュニケーションプロセス」と定義され、「企業に関わりのある人たちが、社会全体の人々と良好な関係を築くためのコミュニケーションの方法の一つがプレスリリース」と続けた。
プレスリリースの価値と効果が今、変わりつつあるという。これまではプレスリリースを打っても、記者が取り上げて記事にしない限り生活者には情報が届かなかった。しかし、インターネットの利用増加により、プレスリリースが直接生活者に届くことが可能になりつつあるのだ。PR TIMESでは自社Webサイトでの配信に加え、スマートニュース等パートナーメディアへの掲載も行っている。
舛田氏は、生活者が最近1日あたり約7時間メディアに接しているという「メディア定点調査2020」(博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所)のデータを紹介した。このうち約半分の3.5時間がデジタルメディアで、SNSやニュースアプリの割合が増加傾向にあるという。
このような状況の変化を踏まえ、舛田氏はプレスリリースから次の3つの効果が期待できると述べた。
具体的な活用機会、エバンジェリストと広報の違いは?
このように、届き方と期待効果が変わりつつあるプレスリリース、どのように活用すればいいだろうか?
舛田氏は、プレスリリースを掲載する機会として、サービスの開始、パートナーとの契約、特許の取得、機能のアップデートなどを挙げる。機能のアップデートの際に、「こんな風に世の中のためになる」「世界をこういう風に変えていこうと思っている」といったポイントをアピールすることができる。また、アワードなどへの選出や受賞も、企業や製品が世の中に評価されていることをアピールできるため、ブランディングの効果が狙えるという。
さらに、これら情報をプレスリリースとして出しておけば、例えば、新たな企業と業務提携する際、自社の取り組みや事例を出すことが求められるが、これまでのプレスリリースの記事を資料として活用することもできる(なお、TECH TALK AWARDの受賞企業に特典としてPR TIMESを活用する機会を提供することをここで発表した) 。
プレスリリースが新機能やサービスを伝える役割であるとすれば、中山氏のようなエバンジェリストとプレスリリースの違いはどこにあるのだろうか。田原氏が尋ねた。
これに対し、エバンジェリストとして、全国各地で、最近はオンラインで、毎日のように講演をしている中山氏は「情報を伝える広さと深さが違う」と述べる。「われわれはしゃべって広めることが仕事。そのため、広報がプレスリリースを打って広めるよりも範囲は狭いかもしれないが、より深く伝えることができる」と中山氏。そして、「最初にプレスリリースを広く打ち、興味のある人、企業が興味を喚起したい人にエバンジェリストがアプローチして、より掘り下げて伝えるという2段階で攻めるのがいいのかな」と述べ、企業には2つの機能を持っておいた方がいいとアドバイスした。
さらに、舛田氏は広報の仕事について「一歩引いた目線で経営者の思いや担当者を引き出して発信すると同時に、『今世の中がこういう動きだから、逆にそれをサービスとして会社に落とし込む』といった広聴の役割もある」と深掘りした。
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2020年にプレスリリースで最も多く使われたキーワードは?
記者に取り上げられたり、生活者の目に留まったりするためには、言葉の選び方は重要だ。舛田氏によると、2020年にPR TIMESのサイトに掲載された18万件のプレスリリースで最も多く使われたキーワードは「コロナ」。「テレワーク」(2位)や「おうち時間」(8位)などコロナ関連のものが多い中で、「AI」(5位)、「オンライン」(6位)、「EC」(9位)、「スタートアップ」(10位)、「DX」(14位)なども奮闘したようだ。
ここで中山氏は10位に「スタートアップ」が入ったことに着目し、舛田氏にその背景を尋ねた。舛田氏の回答は、「スタートアップは予算的にCMを打つことが難しい。経営者自らが広報の役割をしていたりして、マーケティングやリクルーティングにつなげるためにプレスリリースを活用している」とのこと。スタートアップの配信数が多いことから、スタートアップのメディアがウォッチするという良い循環が生まれているそうだ。
なお、PR TIMESのサイトには「いま注目のキーワード」のセクションがあり、そのキーワードのタグがついたプレスリリースを一覧で見たり、「いま話題」「今日のランキング」「SNSで話題」などの切り口で絞り込んだりできる。これらの機能を舛田氏が紹介すると、田原氏も中山氏も「いいね」「便利だね」と感動。中山氏が「隙間時間での活用を考えるとスマホのアプリを作った方がいいですね。できたらぜひ使いたいです」と勧める場面もあった。
キャッチャーな言葉は逆効果?
プレスリリースでの言葉の使い方として、舛田氏は興味深いアドバイスもした。「目を引く記事にするため、タイトルにキャッチーなコピーをつけなければならないと思っているかもしれないが、そうではない」というのだ。
プレスリリースの本質である「皆が理解して、相互に関係を作る」を踏まえると、伝えたい内容がきちんと入っている必要があると舛田氏。ティザー広告のように興味関心を持たせ、SEOを意識するだけのタイトルでは、記者の関心は得られないというのだ。「あまりキャッチーすぎず、主語・述語を明確にした、ちゃんと事実を伝えるタイトルが大事です」と舛田氏。自身もよくプレスリリースを出しているという田原氏は「奇をてらおうとせず、シンプルでいいんですね」と納得していた。
また聴講者からは「効果的な配信時間帯は?」という質問が出た。これについては、記者などメディアの人が活動しているコアタイム「午前11時から午後5時」と舛田氏。午前中に出すメリットとしては、「午後の情報ニュースに取り上げられる可能性があるので、即時性の高いニュースは適している」とのこと。上場企業の適時開示が終わる午後3時以降については、ビジネス系の記者などのメディアが情報収集していることがあるので、それに合わせて市場に影響のない範囲で出す企業が多いと舛田氏。曜日については、火、水、木曜日がいいとアドバイスした。
加えて中山氏は、プレスリリース配信とメディアを連動させた自身の例を紹介。富士通に転職した際、あるメディアと組んで富士通入社についてのプレスリリースを出してから15分後に記事を掲載してもらったところ、絶大な反響があったというエピソードを明かした。
1時間の基調講演の最後に、舛田氏が「自社のサービスを熱い思いで伝えることができるのは、皆さんしかいない。われわれPR TIMESのような広報サービスが、発信の仕方や、あと一歩の後押しができれば」と述べると、中山氏も「餅は餅屋」として、「せっかくのプレスリリースを打つのなら、PR TIMESのようなプロを活用してより効果的に広めることをお勧めします」と語った。
FUJITSU TECH TALK AWARDの受賞企業は?
イベントの最後を飾ったのは、FUJITSU TECH TALK AWARDの受賞企業の発表だ。200社を超えるTECH TALKメンバー企業を対象とした表彰制度で、今回で2回目。カテゴリは、「ビジネスマッチング」「コミュニティ活性化」「サービス活用」の3つだ。
参加企業と新たなビジネスを創出した企業に贈る「ビジネスマッチング」は、ジオグリフとSky Gridの2社が受賞した。
2社は富士通のクラウド「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud-O」をベースに教育向けのサービス「アプリケーションターミナルkomachi」を提供している。受賞の感想として、ジオグリフの代表取締役 田畑豊史氏は「まだ始めたばかり。どうなるかわからないが、世界で使われるサービスに仕立てていきたい」とコメント、Sky Gridの代表取締役 山本洋佑氏は「主に技術面でサポートさせていただいた。サービスを広めていきたい」と抱負を語った。
コミュニティ活性化に貢献した企業を表彰する「コミュニティ活性化」は、日本オープンシステムズに贈られた。イベントへの参加が最多で、TECH TALK祭では事例を紹介するなど、活動の活性化に寄与したことが認められての受賞だ。同社 東京ソリューションサービス部 課長 西野悦雄氏は「自分自身、技術者として色々な最新技術を習得したいという思いで参加しました」と述べ、「今後もTECH TALKコミュニティがさらに発展することを期待しています」と語った。
富士通のサービスを活用した企業に贈る「サービス活用」を受賞したのは、情報技術センター。「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud-O」の活用が認められての受賞となり、同社 第2システム統括部 基盤ビジネス部 部長 石井潤氏は「今後もユーザー事例を増やし、FJcloudの技術発展に寄与していきたい」と喜びを表した。
受賞企業には盾が贈られるほか、副賞としてPR TIMESプレスリリース配信などプロモーションを実施できることになっている。
今回の「TECH TALK LIVE 祭」全体を通して、参加者の様子が終始なごやかで、自社の取り組みを共有し他者の事例を聴くことで、相互によい刺激を与えあっている印象を受けた。
技術・ビジネスの両面でポジティブな影響を与え合う場「FUJITSU TECH TALK」
基調講演では、IT企業が自社のサービスや技術を広めていくために重要な「プレスリリース」について改めてプロから学び、配信のタイミングやタイトルの付け方など、これまで「なんとなく」行っていた業務を見直すきっかけになっただろう。
また、FUJITSU TECH TALK AWARDの受賞企業のコメントからは、FUJITSU TECH TALKというコミュニティが技術・ビジネスの両面で多様性を広げながら発展していることが伺えた。FUJITSU TECH TALKに興味のある方は、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。
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