36年前に生まれたFileMakerとは
「FileMaker」は、固有のビジネス課題を解決するカスタムAppを迅速に開発するローコード開発プラットフォームである。ローコード開発とは、ソースコードをほとんど書かずに業務アプリケーションを開発できる技術のこと。
FileMakerが生まれたのは今から36年前の1985年。当時はまだPCのCPUが16ビットの時代。FileMakerもカード型データベースという構造を採用していた。1989年に日本語版がリリースされた後、1992年にはWindows版がリリースされ、Windows95が発売されたのと同じタイミングで、FileMakerもカード型からリレーショナル型のデータベースへと進化した。
2010年にリリースされたFileMaker11では、FileMakerをiPhoneやiPadで実行するためのアプリケーション「FileMaker Go」をリリース。当初は有償だったが、2012年に無償化された。この背景には、日本の医療業界から大きなリクエストがあった。当時デジタルカメラからSDカードを経由して患者の外傷や治療経過などの写真を手作業で記録していた医療現場において、iPhoneやiPadから直接患者IDに紐付けた状態で院内の患者情報に安全に記録できることは画期的であった。医療業界でFileMakerの利用が広がっているのは、こういう背景があるからだ。
2013年には、FileMakerのソリューションをWebブラウザから利用可能にする「FileMaker WebDirect」を提供。これまでFileMakerというと端末にインストールしたアプリケーションからサーバに接続して活用するのが一般的だったが、WebDirect機能によりクライアントにFileMakerをインストールすることなく利用できるようになり、多くのユーザーから支持を得られるようになった。
2020年にリリースされた最新バージョンでは、JavaScript統合、Core ML、NFCタグ読み取り機能を搭載、さらにFileMakerのサーバー環境をPaaS型クラウドサービスとして提供する「FileMaker Cloud」がリリースされた。このようにバージョンアップをするたびに、さまざまな機能を追加していったFileMakerは、現在、世界で100万人以上が利用しており、日本国内でも20万アカウントで利用されている。日本国内では業種業界や規模を問わず、さまざまな企業・組織で活用されている。
FileMakerでできること
FileMakerは、ローコード開発プラットフォームとあるように、クライアント用のアプリケーションを利用して独自のアプリケーションを作成できるプラットフォームだ。作成したアプリケーションをサーバに置くことで、複数ユーザーが一元的に管理されたデータを利用できるようになる。
FileMakerは、大きくサーバ用とクライアント用のソフトウェアで構成される。サーバ環境の選択肢としては「FileMaker Server」と「FileMaker Cloud」がある。FileMaker Serverはオンプレミス用の製品で、一方のFileMaker Cloudは名称が表すとおりクラウド版でAWS東京リージョン内に構築されているサービスだ。クラウド利用が許可されていない企業はFileMaker Serverを、運用管理者がいないため自社内にサーバを立てるのが難しい、または外出先からアクセスしたいという企業はFileMaker Cloudというように、利用形態、要望に応じて選択できるようになっている。
一方のクライアント側のソフトウェアとして提供しているのが、「FileMaker Pro」と「FileMaker Go」「FileMaker WebDirect」の3種。FileMaker Proは、カスタムAppが容易に開発できるプロコードの機能も兼ね備えたローコード開発ツール。開発ツールとしてはもちろん、FileMakerのクライアント機能も提供している。
FileMaker Goは、クライアント機能のみを提供しているソフトウェア。現在はiOSのみに対応しており、iPhoneやiPadにインストールすることで、FileMaker Proで作成したアプリを利用できるようになる。これはApp Storeから無料でダウンロードできる。FileMaker Goの最大の特徴として、FileMaker ServerやFileMaker Cloud に接続して利用するオンラインモードと、FileMaker Go単体で利用するオフラインモードがある。
FileMaker WebDirectは、「製品というよりはむしろ、FileMaker ServerやFileMaker Cloudに付随する機能」(クラリス担当者)と言うように、これを使うことでPCやiOS端末、Android端末のWebブラウザからサーバ上のアプリを開くことができるようになる。