本記事のレポーター
- 谷口 展郎、岩塚 卓弥、水野 諭孝(NTT ソフトウェアイノベーションセンタ)
- 田端 一也、高橋 寛恒(NTTデータ)
- 堅田 淳也、杉本 真梨(NTTコムウェア)
SpringOneとは
SpringOneは、VMware Inc.(以下VMware)が開発を牽引するOSSのアプリケーション・フレームワークであるSpring Frameworkや、同社の商用プラットフォームVMware Tanzuに関する最新情報、ユーザ事例を中心に、DevOpsやマイクロサービスといったソフトウェア開発のトレンドを扱うカンファレンスです。
2019年までは年に一度米国で開催されていましたが、2020年、2021年は世界的な新型コロナ禍の影響によりオンラインでの開催となりました。
今年のテーマは「Code with the Flow」。「Flow(フロー)」は集中力が著しく高まった状態のことですが、今年のSpringOneでは、SpringとTanzuの2つを中心としたさまざまな技術やプロダクトを通じてDeveloper Experienceを向上させ、開発者を些事に煩わされずにフロー状態にすることの重要さを伝えようという意識が言葉の端々に現れていたように思います。
今年も昨年同様参加費は無料で、必要なのは参加登録だけでした。各セッションでは、リアルタイムで動画配信が行われるとともに、セッション後には昨年同様Slackで発表者と聴講者のコミュニケーションを行うことができました。
なおほとんど全てのセッションの動画が9月23日以降に公開され、誰でも視聴できるようになっています。
キーノート・セッション
SpringOneではMain Stageで行われるキーノート・セッション(以下キーノート)と、個別の技術や事例に関してより詳細に語られる個別セッション(Breakout Sessions)が用意されています。ここでは2日間で計3回行われたキーノートから注目トピックをレポートします。
初日のキーノートでは、VMwareで Spring Frameworkの開発リーダーを務めるJuergen Hoeller氏が登場し、次のメジャーバージョンアップであるSpring Framework 6.0のロードマップについて紹介しました。Spring Framework 6.0はベースラインをJava 17とJakarta EE 9にアップデートし、2022年Q4にリリース予定とのことです。またSpring Framework 5.3やSpring Boot 2.xのアップデートにも取り組んでおり、2021年11月にはSpring Boot 2.6にJava 17のサポートを追加予定、2022年5月にはSpring Boot 2.7がリリースされる予定です。
Spring Framework 6.0については、Juergen Hoeller氏の個別セッション「From Spring Framework 5.3 to 6.0」でより詳しく説明されていますので、後述する個別セッションのレポートも参照してください。
![Spring Framework 6.0のロードマップ](http://cz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/15022/15022_001.jpg)
さらに、モルガン・スタンレーのDhiren Shah氏がメインフレームの決済アプリケーションをAzure Spring Cloudを活用してクラウドに移行した話をした後、MicrosoftのJulia Liuson氏が、Azure Spring Cloud Enterpriseのプライベート・プレビューを発表しました。
Azure Spring Cloud Enterpriseは昨年正式リリースされたAzure Spring Cloudのエンタープライズ向けエディションです。Azure Spring Cloud はMicrosoft Azure上でSpring Bootアプリケーションを実行するためのマネージドサービスですが、Enterprise版ではVMware Tanzuコンポーネントを選択してAzure上で実行できるようになり、24時間365日のSpring Runtimeサポートも受けられます。このセッションではMicrosoftのBalan Subramanian氏によるAzure Spring Cloud Enterpriseのデモも行われましたが、興味を感じられた方はプライベート・プレビューへの参加を検討されてみてはいかがでしょうか。
2日目のキーノートでは、VMwareのVPでありKubernetesの共同開発者でもあるCraig McLuckie氏が、Tanzu Application Platformがどのような問題を解決するかについて語りました。McLuckie氏はKubernetesで最初のアプリケーションを設定する際の難しさ、いわゆる「YAMLの壁」について触れ、Tanzu Application Platformがこのような難しさを解消し、理想的なKubernetes環境を実現するためのサポートを提供すると説明しました。
また、このキーノートではVMwareのBen Hale氏とValentina Alaria氏によるTanzu Application Platformのデモも行われました。テンプレートを選択するだけですぐにプロジェクトを立ち上げることができるApplication Acceleratorや、IDEから直接アプリケーションのデプロイ・デバッグを行う方法、アプリケーションの稼働状況を確認できるApplication Live Viewなどが紹介されました。
Tanzu Application Platformは初日のキーノートでベータ版の提供が発表されており、Craig McLuckie氏はぜひベータ版を試してほしいと視聴者に呼びかけました。
![Application Acceleratorのテンプレート選択画面](http://cz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/15022/15022_002.png)
その他のトピックとしては、VMware Tanzuを利用してアプリケーションモダナイゼーションを成功させた顧客事例(Hyundai AutoEver社、Gap社、CVS Health社、米国陸軍)の紹介や、VMwareのRossen Stoyanchev氏とOleh Dokuka氏によるRSocketの紹介などがありました。
また、VMwareの社員4名が役者となり、本番環境でのトラブルをMicrometer、Spring Cloud Sleuth、Tanzu Observabilityといった技術を組み合わせ、ドラマ仕立てで解決していくという非常に楽しいセッションもあり、見ている人を飽きさせないキーノートとなっていました。
以降では、2日間計106の個別セッション(Breakout Sessions)の中から、筆者らが興味深いと感じたセッションを紹介します。