ロボットの遠隔操作技術で、建設業界に安全と効率を
ロボットベンチャーのARAV(アラブ)では、創業2年目の現在、建設現場の課題解決に特化した事業を展開している。その背景にあるのが、建設業界のさまざまな課題だ。年死亡者数は300人と全産業の3割を占め、従事者の高齢化が進み、人材採用が難しい状況にある。そこで、ARAVでは建設機械に後付で遠隔操作や自動運転などの機能をもたせ、働きやすさや安全性を高めることで、建築業界の活性化に貢献しようとしている。
なお、建設機械の自動化については、30年ほど前から取り組みが進んできた。ただし、かつては安全性の担保が主目的だったが、現在は就労人材不足に伴う効率化が求められ、どこからでも遠隔操作ができることが求められている。
ARAVのソリューションでは、建設機械本体に通信用のSIMを内蔵し、インターネットを通じて操作が可能だ。つまりネット環境さえあれば、1000km先からでも海外からでも操作できるというわけだ。さらに特殊なコントローラーではなく、ブラウザが開けるあらゆるデバイスに対応しており、機械に後付する機器も小型で取り外しが容易。さらに自動運転機能を搭載する予定となっており、土砂の自動積み込み動作での実証を成功させたという。
白久氏は「技術に関してはすごい人が集まっている。ロボットをフィールドで動かしたいというエンジニアはぜひ声をかけてほしい」と語り、ピッチを終えた。
データの変化を監視し、AIの品質を保つMLOpsツール
2020年12月に設立したCitadel AI(シタデルエーアイ)。「AIを守るCitadel=堅固な砦」という社名の通り、顧客のAIの品質を自動モニタリングし、異常を検知・ブロック・可視化するなど、「AIを本番環境で使うためのサービス」を提供している。
AIの本番環境で意識すべきは、機械学習が入ることで、ふるまいがコードだけでなくデータにも依存することだ。そのため、コードだけに依存する典型的なソフトウエア開発と異なり、さまざまな困難が発生する。たとえばテストでは、入出力の型を見る単体テストだけでは不十分な一方、AI のあるべき振る舞いを定めてテストケースを列挙することも困難だ。また、監視においてはデータの分布が変化した場合でも、AIの性能が担保されないまま”正常に動く”という厄介さもある。
このような問題を解決するには、ソフトウェアエンジニアとデータサイエンティストの協業が必要だが、ツールやスキル、文化も異なり、難しいのが実状だ。その困難に対する取り組みとして、杉山氏は「MLOps」をあげ、「Citadel AIではそのノウハウをツールに込めて提供している」と語った。そして、Citadel AIが提供するソリューションとして、運用時の異常を自動検知・防御・可視化する「Citadel Radar」、モデルの自動テストを行う「Citadel Lens」が紹介された。
マンガの翻訳・デザインをAIで自動化し、世界に届ける
「世界の言葉で、マンガを届ける」をスローガンに掲げるMantra(マントラ)。代表取締役を務める石渡氏自身が先端技術と言語、そしてエンタメに興味を持っていたことから2020年に創業し、マンガの多言語翻訳ツール「Mantra Engine」、マンガで外国語学習が可能な「Langaku」の2つのサービスを展開している。
その背景には、国内外のマンガ需要の高まりがある。国内のマンガアプリの利用者はここ2年で2倍と飛躍的に増え、海外のマンガも読まれるようになった。さらに中国では5年で50倍近い市場に成長しており、日本のマンガにとっては新たな市場とも言える。
それぞれ障壁となるのが言語であり、人力で行っていたマンガ翻訳を、AIを用いて効率化したのが「Mantra Engine」というわけだ。石渡氏は、この「Mantra Engine」がクラウド上で自動的に翻訳・デザインを行い、それを翻訳者が修正するという流れをデモンストレーションしてみせた。これにより、従来の1/10の時間で仕上げることができるという。
そしてもう1つのサービスである、マンガで外国語学習ができる「Langaku」は、レベルに応じて表示される外国語が変化するという仕組みになっている。単にマンガを読ませるだけでなく、単語帳などの機能も備えている。これらのサービスに活用されている、マンガに特化した機械翻訳や自動彩色技術などについては、引き続き精力的な研究開発が行われている。
制約の多い福祉業界の課題を技術で解決する
もともと理論物性物理を研究し、現在は介護業界に身を置く吉岡氏。ベター・プレイスにCTOとして参画し、エッセンシャルワーカーの資産形成をサポートするFintechサービス「はぐONEシリーズ」および、意思決定支援サービス「Work/Life」の開発に携わっている。
「Work/Life」について、吉岡氏は「福祉サービスの質と働く人の生活の質、その両面に最も効果的にアプローチすることを考え、目をつけたのが『勤務シフト』だった。さまざまな思惑、希望が反映されるものであり、だからこそ働く人の生活の質にも関わってくる。さらにサービスの質も担保する必要を鑑みると、勤務シフトを効率的により良い形で作成することが重要」と説明。シフトの割当を命題論理式に変換できるものとしてMAX-SATソルバーを採択、さらに勤務時間の割当は整数計画ソルバーで対応し、数十秒で最適なシフトが作成できるシステムを開発した。
吉岡氏は、「技術者なら制約があるほど腕の見せ所と感じられるはず。実際、介護福祉の世界では、老眼だったり、スマホを持っていなかったり、さまざまな制約があるなかで、例えばMAX-SATソルバーをノーコードで書けるシステムを開発しなければならない。それはワクワクすることではないか」と語り、「福祉の業界にはいろいろと解決しなければならない問題が山積みとなっている。社会的な意義にも直結しており、大変やりがいのある仕事だと思う。是非興味のある方は参画してほしい」とアピールし、セッションをまとめた。
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駆け足ながら、それぞれ興味深い7社のピッチを振り返り、東大IPCの小澤彩織氏は「ベンチャーの事業についてもう少し詳しく知りたい、エンジニアのキャリアパスについて聞いてみたいという方がいらしたら、ぜひ連絡をしてほしい」と語り、改めてアカデミア系ベンチャーへの転職・副業・インターンの求人情報を提供する、同社の「DEEPTECH DIVE」を紹介。「完全無料でクローズドで面談もでき、コンサルタントのアドバイスも受けられる」とアピールした。
さらに新企画として、東大関連ベンチャーによるエンジニア向け限定公開の技術コンテスト「Tech Challenge」や、毎月平日夜に定期開催中の「東大IPCキャリアカフェ」などが紹介された。興味のある方は、ぜひ問い合わせてみてほしい。
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