管理職として奔走した会社が売却、当時何を思ったか
長谷川氏は、自身の経歴から話を始めた。長谷川氏は、26歳までは、Web制作・ホスティングサーバーの構築運用・DTPと幅広い仕事に携わっていたが「どれかひとつに絞らなければ」と思い、システムに絞ろうと決心した。そして、インフラエンジニアを経て、ソーシャルゲームの会社で管理職に就いたという。
「ここから暗黒時代です」と長谷川氏は続ける。ソーシャルゲームの会社で開発部門とインフラ部門の管理職になった長谷川氏は、さらに事業本部長執行役員になって350名ほどの部下を持つことになった。当時は月曜日から金曜日まで、朝10時から23時まで採用面接、土日も転職イベントで8時から20時まで面接。1年半ほど休みがなかったという。さらに、こうして心血を注いでいた会社が売却されてしまった。
しかし、たくさんのエンジニアと面接できたことは、とてもいい経験になったと長谷川氏は振り返る。
「1年半の面接の時間を計算してみたら、合計6335時間になりました。自分でもびっくりしました。一生の時間は、男性が78年生きるとすると68万3000時間になります。面接に人生の1%を使っている。ちょっと衝撃でした」
友人・知人をリファラル採用していたので、会社の売却は個人的な打撃も大きなものだった。長谷川氏がそのとき感じたのは「会社も、人が所有する持ち物・資産なんだな」ということ。
次の仕事をどうしようかと考えたとき、誰かが作った会社に入っても同じ結果になるかもしれない。そこで長谷川氏はgrasysを起業することに決めた。
技術を使ってどの業界で活躍するか
これまでの面談の経験が、起業したときにも役に立ったと長谷川氏は続ける。
「今でも採用面接を多くしていますが、たくさん面談してきて感じたことは、やっぱりエンジニアはつくづく実現・改善・解決が仕事だなということです」
長谷川氏が面接をしていると、技術が好きでエンジニアをやっている人がとても多いと感じるという。長谷川氏もそのタイプだ。しかし、なかにはキャリアパスにおいて迷子になっている人もいる。そういう人は「ただ技術や環境だけで仕事を選んだりしていないか」と問いかけてみるといいと、長谷川氏は言う。
「技術にこだわるのは大切です。しかし、技術をやるのではなくて、技術を使って何をするかが大切だと常々考えています」
具体的にいうと、技術を使ってどの業界で活躍するかが重要だと長谷川氏は続ける。
「技術の方向性だけで自分の進む道を決めると、10年単位の年月で見たとき先が難しくなります。それよりも、どの業界という視点のほうが良いと思います。その業界が好きで業界にそって技術を追いかけるほうが、自然なインプットがありますし、迷うこともありません。より大きなこととして、自分の技術を実現や課題の改善に自然とつなげることができます。そのおかげで、活躍することが明確かつ簡単になります」
長谷川氏自身は、ゲーム業界が好きだという。小学校1年のときにファミコンが出た世代であるため、幼少期からゲームに親しんでいた長谷川氏。今でもゲームが好きで、最近は「Kenshi」や「7 Days to Die」をやり込んでいる。
長谷川氏がゲーム業界に感じる魅力は、何十万人、何百万人といった多くのユーザーが集まり、世界中にリリースされていたりすること。さらに、システムのなかで波を打つようにユーザーが生きているのを感じることだ。
さらに技術的な課題も多い。グローバル対戦があったり、レイテンシをできる限り低くしたりと、難易度の高い課題が多い。そういう点も、やりがいを感じる要因だという。
長谷川氏は、自分の好きな業界が見つかると、いろいろなことが開けてくると熱く語った。