NECが行った「3つの推進ステップ」の具体例
NECでは、「アジャイル対応力レベル」に応じて段階的に変革する取り組みを行っている。チームでの実践が始まるレベル3からは変革チームを組成し、レベル4である組織内への拡張や定着を目指した活動を推進する。
これら活動の一つとして、レベル2から3へ移行するための「組織変革事例」が紹介された。この事例は、大内氏のアジャイルプロフェッショナルグループと組織側の変革チームが連携し、現場チームの課題を把握したうえで働き方(WoW)についての指針提供を目的としたものであった。
チームにおける困りごとなど①課題抽出を行い、②整理して「解決すべき課題」を明らかにし、さらに③解決策としてDisciplined Agileツールなどを使って指針を定めていく流れだ。その上で、実際に導入するチームが選択肢の中から選んで確定する。
「①課題抽出」では、具体的なチームを念頭に、現場目線で課題の抽出を行うことを目的として「カスタマージャーニーマップ」が活用された。具体的なチームのペルソナを設定し、時間軸にそってどのような出来事があるのか、ペインやゲインが発生するのかを抽出していく。大内氏は「チームを組織の顧客と見立てると、その困りごとを分析するのにカスタマージャーニーマップが適している」と語った。
たとえば、社内組織AのチームBでは、ローコードプラットフォームを活用して、アジャイルで新規事業開拓プロジェクトを実施。なんとか終了したものの困りごとが多く、次回以降それを発生させないために当施策を実施した。
まずプロジェクトの流れの中で、それぞれ発生した出来事や行動を入れていき、それに沿った出来事や課題を抽出した。「新規領域の業務ノウハウがない」「品質をどう担保するか」「運用をどう定めるか」などの他、審査やリリースのプロセスも未整備であることが明らかになった。これをKJ法で「似た情報」を整理し、「今後整備すべき課題」としてバックログに登録する。
さらに解決策の検討として、どのような働き方ならば課題が解決できるかを考えていく。なお、ここではチームBの課題および解決策だが、今後は他のプロジェクトにも適用することを想定し、幅をもたせて定義するのがポイントだ。前述のDisciplined Agileおよび他にNECが持つノウハウやナレッジを活用していく。
Disciplined Agileについては、企業全体の「エンタープライズレベル」から「基礎レイヤー」まで用意されているが、今回は組織改革として「DevOpsレイヤー」が該当し、組織のプロダクト開発および前後のプロセスを含んだ領域が対象になる。
その中に、プロセスゴールとして考慮すべきポイントが多々ある。たとえば、「方向付け」としては「チームの形成」や「エンタープライズ方針との整合」などがあるが、必ずしも全てを考える必要があるわけではない。これをバックログに登録した内容と、どのプロセスゴールを考えるべきか、紐付けを行う。たとえば今回の事例なら、「チームの形成」「チームのチームメンバーの成長」「作業方法の進化」「リスクへの対処」などが見るべきプロセスゴールになる。
そして、これらのプロセスゴールに対して、Disciplined Agileでは「プロセスゴール図」と呼ぶツリー状のナレッジを提供している。
例えば、「チームメンバーの成長」というプロセスゴールなら、「ディシジョンポイント」として、「スキルと知識の改善」「フィードバックの提供」「チームの維持」などがあり、「スキルと知識の改善」において「選択可能なオプション」として「コーチの配属」や「ノンソロ作業」などが推奨される。その中から各チームが選択して、実行していくわけだ。これを組織の制度の仕組みや規律として制度化していく。
こうした方法でNECのアジャイルへの取り組みは進められており、少しずつ変革の成果が出はじめている。例えば「①ビジョンの共有」に関しては、組織の意思とぶれないチームが実現しつつあり、「②多様な事業環境への対応」については、柔軟性や俊敏性が向上して無理・無駄が減ってきた。「③顧客中心主義の実現」では、顧客が受け取る価値を意識することが定着してきた。
大内氏は、「ビジネスアジリティの獲得には、既に取り組んでいる企業・組織もあると思う。NECの例が参考になれば幸い」と語り、「組織変革やビジネスアジリティ獲得に支援が必要であれば、ぜひお声かけいただきたい」と語り、セッションの結びとした。
NECはお客さまのビジネスアジリティの実現をサポートします
NECはアジャイルもビジネスの一環としてとらえ、システム開発だけに留まらず、お客さま視点で課題に共に向き合い、お客さまに価値を提供することを大切にしています。「NECのアジャイル」にご興味を持たれた方は、公式サイトからお問い合わせください。