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Developers Summit 2023 セッションレポート

AIの第一人者松原仁氏が語る、AIの今と人間のあるべき姿とは?

【9-B-1】AIはどこまで来てどこに向かうか

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 3回目のブームを迎えているAI。デブサミ2023、Bトラック最初のセッション「AIはどこまで来てどこに向かうか」は満員御礼となり、その注目度の高さがうかがえる。急速に実用化が進む一方で、「人間の仕事が奪われるのではないか」と不安を覚える人も少なくない。実際、今のAIには何ができて、何ができないのか。そして進化し続けるAIとどう付き合っていけばいいのか。約40年にわたりAIの研究を続けてきた東京大学 次世代知能科学研究センター・教授 松原 仁氏が語る。

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AIの歴史と、松原氏が思うAIと共存する方法とは?

 「鉄腕アトムを作りたい」と夢見て、AIの研究を始めた松原氏。AI研究の工学的な目標は、まさに鉄腕アトムのような「人間のような知能を持った人工物(コンピュータ、ロボット)を作ること」であるわけだが、そもそも“知能”が曖昧であるがゆえに、いまだ専門家の間でも「AIとは何か」を定義できていない。

 「何ができれば知能を持っていると言えるのか。人間に置き換えても明確に定義しにくい。しかし機械であれば原理はわかっていることから、コンピュータを題材に知能を定義することがAIの科学的な最終目標であるとも言えます」(松原氏)

AIの歴史はブームと冬の時代の連続だった
AIの歴史はブームと冬の時代の連続だった

 ここで、これまでブームと冬の時代を繰り返してきたAIの歴史を簡単に振り返っておこう。はじまりはコンピュータができた1940年代。コンピュータは数だけでなく記号も扱える。言語は記号の典型であることから、「もしかするとコンピュータも知能を持てるかもしれない」という発想が生まれ、1950年代から研究がスタートした。

 その研究にAIという名前がついたのが1956年のこと。そこで1回目のAIブームが来たものの、当時のコンピュータは今のスマートフォンのスペックよりもよほど低かったことから、人々の過剰な期待に応えられず、冬の時代へと突入する。その後、1980年代に入り、コンピュータの性能が進化してエキスパートシステムが生まれたことで、2回目のブームが訪れる。日本にAIが入ってきたのはこの頃だった。以前のブームの頃に比べれば、それなりには進化していたものの、私たち人間が期待している“人間並み”までにはならなかったため、再び冬の時代に入ってしまう。

 そしていよいよ2010年代から始まったのが今の3回目のブームだ。2006年に発表されたディープラーニングがベースとなり、人間並みか、それ以上のことができるAIが次々と誕生している。その一例を挙げておこう。

  • スマートフォンやAIスピーカーで音声の対話をする
  • こういうものを買ったらどうですかと推薦してくれる
  • 乗り換えの案内をしてくれる
  • 自動車の運転支援をしてくれる
  • 将棋でプロ棋士より強くなった
  • 囲碁でプロ棋士より強くなった

 これらに共通して言えることは、AIが得意とするのは、「ルールが明確で範囲が限定されている状況下で解を早く求めること」。逆に、ルールが不明確あるいは範囲が非限定的な状況下では、まだまだ人間の方にはるかに優位性があることだ。

 「今後もしばらくはAIができることは増えていくとは思うが、部分的な問題をAIに任せて、AIが出した解を人間が集約して、最終的にどうすべきかという意思決定を人間が下す役割分担をしていくのが、AIの妥当な使い方である状態がしばらくの間は続いていくだろう」(松原氏)

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

 フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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