はじめに
ChatGPTが公開されて早くも1年が経ちました。その当時から随所で囁かれてきた「生成AIが世界を変える」という言葉も少しずつ現実味を帯び始めてきています。既に多くの企業が生成AIを業務に取り入れ、作業効率化やコストカットを実現している一方で、まだ自社の業務との繋がりを見出せていなかったり、興味はあれどどのように活用すれば良いかわからなかったりという方も多いのではないでしょうか。
事実、帝国データバンクによる2023年6月の調査によると、生成AIを実際に活用している、または活用を検討している企業は全体の61%に登るものの、37.8%の企業は活用イメージが湧いていないと回答しています。
本連載では、そんなChatGPTの活用を検討しつつもまだ手を出せていない方々に向けて、ChatGPTを自社のシステムに組み込めば何ができるのかを、具体的なコードを交えながら解説していきます。
対象読者
- ChatGPT APIの活用方法を探している方
- ChatGPTを公式のWebサイトから利用したことはあるが、API経由でプログラムに組み込んだ経験はない方
- ChatGPT APIの使い方や概要を押さえておきたい営業職の方
- ChatGPTに独自の知識を埋め込む方法を知りたい方
ChatGPTに独自の知識を実装しよう
連載第1回の今回は、ChatGPT APIを活用したチャットBotの基本的な実装方法に焦点を当てて解説します。
GPTを始めとする大規模言語モデル(LLM)の基本的な機能は、「文章の断片からその後に続く文章を予測・生成する」というものですが、ChatGPTはこの能力を会話文に特化させた形で開発されています。さらに、公式のWebサービスがそうであるように、APIインターフェースも会話タスクを中心とした設計となっています。これらの点を踏まえると、チャットBotとしての活用がChatGPT APIの能力を最大限に活かす方法だと言っても過言ではないでしょう。
チャットBotが活躍するのは単純にAIとの会話を楽しむようなエンタメツールだけではありません。APIを通じた会話プログラムの中に特定の処理を追加することで、企業固有のサービスや製品の情報、さらには外部に公開していないクローズドな情報までBotに実装することができます。そういったカスタマイズによって、AIはあなたの会社の優秀なビジネスアシスタントとして、業務改善に直接寄与できる可能性があります。
例えば、極端な使い方をすれば、自社サービスの専門知識を組み込んだチャットBotをWebサイト上に公開して、ユーザーからの問い合わせ対応を完全に自動化してしまうということも可能でしょう。または、完全なAI化にはまだ踏み切れなくとも、問い合わせを受け付けたと同時に返答の草案もオペレーターに提供するような「半自動化」を施すだけでも、従来の手動での対応と比べて大幅に作業を効率化することができるはずです。
これらの活用方法は既に多くの企業で実践されていますが、独自性を必要とする内容ではないため、取り入れるのは今からでも全く遅くありません。あなたの企業が自社サービスの問い合わせ対応に少しでもコストを割いているなら、充分に業務の改善が見込めます。
また、対外向けのチャットBotとしてではなく、社内のクローズド環境に内部用のチャットBotを導入し、AIヘルプデスクとして運用することでも、多くのメリットが期待できます。通常のWeb版ChatGPTと比較して、独自の社内AIを導入する利点を以下に挙げます。
- Slackなどの既存ツールへの組み込みが容易
- 非公開の社内情報や過去の問い合わせ履歴をAIに参照させることが可能
- AIに独自の機能や既存のサービスを実行させることが可能
- 通常は月額課金の「GPT-4」が従量課金で利用可能
- 会話データがAIの再学習に利用されることがない(※ Web版でも設定で回避可能)
- アイデア次第で多彩なカスタマイズが可能
以上のように、ChatGPT APIを利用したチャットBotの開発・導入は多様な業種で業務改善の鍵となる可能性を秘めています。
それでは、具体的なコードを交えながら、チャットBotの実装方法を詳しく解説していきます。