コスト削減にはビジネス特性の理解が欠かせない
ここで丹氏は、DELTAの支援によるコスト削減事例をいくつか紹介した。
「ドメインとアーキテクチャを繋げて考える」事例として紹介したのは、株式会社RECLOの取り組みだ。RECLOは、ハイブランドアイテムの買取・中古販売サービス。サービスの特性は、SKU(Stock Keeping Unit:在庫の最小管理単位)が非常に多いこと、つまり通常のECとは異なり、同じ商品でも、異なる人が、さまざまな状態の商品を出品する。そのためトランザクションの数だけ大量のアセットがアップロードされ、コストを圧迫していた。そこで、不要なバックアップの削除や適切な世代管理などの王道の対策に加え、アセットをアップロードする処理を最適化し、無駄を省くことで、バックアップ履歴の増殖や、ストレージ、通信料の削減を行った。その結果、年間で420万円のインフラコストを削減できた。このような最適化を行うには、ビジネスの特性を理解した上でプロダクトのアーキテクチャと繋げて考えることが欠かせない、と丹氏は言う。
Elephant in the roomに立ち向かった事例として挙げたのは、株式会社SUPERSTUDIOによるECプラットフォーム「ecforce」の最適化だ。従来は、ショップの数だけインスタンスが立ち上がる、いわゆるシングルテナント構成だった。そこで、ドメインやリクエスト元のURLに対して、動的に接続先DBを切り替えるマルチテナント化を行うことで、1ショップあたりのコストを80%も削減できた。これまではRailsのinitializersの中で一度だけ設定を読み込めば良かったが、マルチテナント化に伴い、毎回動的に設定を読み込み直すように変更するなど、大幅なリアーキテクチャが必要になった。コストを80%も減らせるなら、大変な作業でも、それに見合う価値がある。Elephantから逃げずに、腹をくくって取り組むことが大事だと、丹氏は訴えた。
全員参加のコスト削減を成功させるには
インフラコスト削減の取り組みは「早ければ早いほうがいい」と丹氏は言う。というのも、利益を増やすためには売上を増やすか、コストを削減するしかない。売上によって利益を伸ばすのは大変だが、コストなら削減した分がそのまま利益になるからだ。さらに、コストは時間積分で利益に影響する。サービスが長く続くほど、また成長すればするほど、高コストなら利益を圧迫するし、低コストなら利益を伸ばすことができる。このようにコスト削減がもたらす事業インパクトは、とてつもなく大きい。そして、コスト削減のベストプラクティス実践だけでなく、全員参加でアーキテクチャの見直しまで含めた根本的な対策をしたほうが、事業インパクトはさらに大きくなる。
それでは、全員参加のコスト削減を成功させるには、どうすれば良いのだろうか。丹氏は、まずCTOやVPoEといった技術責任者が「これ儲かるし、やろうぜ」と、音頭を取って進めていくことが大事だという。数字を見ながらディスカッションし、実際にコストが減っていくのを見るのはとても楽しい。数字で成果が見えるし、実際に儲かるからだ。そしてその喜びを、メンバー全員と共有することができる。これはいわば「お祭り」だ。丹氏が、セッション中何度も「コスト削減はお祭りムードで総力戦を」と繰り返したのは、このような理由からだ。まとめれば、手堅く結果が出やすい王道の施策も大切だが、事業インパクトを生み出すには、表面的な分析ではたどり着けない根本的なコスト要因に、全員の知恵を集結して立ち向かう「ケモノ道」の施策が大切だということだ。
