日亜化学工業によるForguncy活用事例紹介
後半のセッションでは、日亜化学工業株式会社 システム開発本部 第一部第二課の遠藤純氏が登壇し、「Forguncyの活動事例と導入によるチーム力アップの奇跡、そして未来のビジョン」というタイトルでセッションを行った。
日亜化学工業は徳島県阿南市に本社を構える、LEDやレーザーダイオードなどの光半導体事業、正極材料、磁性材料などの化学品事業を展開する化学メーカーである。遠藤氏は所属するシステム開発本部第一部第二課で、ローコードシステムでの開発と製品番号体系の運用・管理を担当しているチームのリーダーを務めており、その業務中でForguncyを活用している。
まず遠藤氏がForguncyを活用した事例として紹介したのが、「Plin(Product model number Information-Link:プリン)」というシステムの構築。Plinは基幹システム、部門ごとに構築されたシステム、部分最適されたシステムにより分断されている製品関連情報を、1つのWebアプリケーションで参照できるようにしたシステムである。
「同システムを導入する前は、情報取得に複数のシステムを参照するほか、マクロを使用する必要があり、非常に手間がかかっていた」(遠藤氏)
そのほかにも、当時チームにはシステム開発を行えるのが遠藤氏しかおらず、運用が難しかったことや、マスタ管理業務についても優先度が低く、システム開発ができないという実情があった。
この課題を解決するために遠藤氏が採用したのが、ローコード開発ツールの導入だった。「将来的に開発者を増やしていくこと、自分たちのチームでも開発を推進できるようにしていくことを視野に置き、ツールの選定をした」(遠藤氏)
さまざまなツールを検討し、選択したのがForguncyである。既存DBが使用可能であり、環境構築が容易であることが決め手だった。
PlinはForguncyを活用した第1号のシステムとしてリリース。Plinが導入されたことで、大幅に使用性が改善された。1つのアプリで製品関連情報の参照が可能になり、現場では高い評価を得ている。開発者目線においても、Ver.1.0.0は約40時間と非常に短い工数でリリースできたという。表示項目追加は即日対応できるなど、保守性の良いアプリを開発できた。現在、Plinを中心とする製品ライフサイクルマネジメントのシステムについても、Forguncyでリプレースを進めているそうだ。
もう一つの活用事例は、職域接種サポートアプリ。「1回目の接種は本当に時間がなかった」と遠藤氏は振り返るように、金曜日に打ち合わせをして、2営業日後の翌火曜日にはプロトタイプを提供するというスケジュール。だがそれも「Forguncyのおかげで火曜日の午後には提出できた」と遠藤氏は言う。
1回目の接種サポートアプリは、接種者リスト、予診票改修記録、接種券張り付け記録ができるというもの。2回目以降の接種に関しても、時間があまりとれなかったので、機能をある程度絞り早期にα版を立ち上げて、運用を開始したという。2回目3回目の接種サポートアプリでは、受け付け、接種完了記録、未受付リスト、接種状況照会、接種管理というように、何人が接種して何人が完了したかという状態の見える化を行った。
職域接種サポートアプリの導入の最大の効果は、トータルで2万7167回分の職域接種という未経験の作業を無事完了できたこと。そのほかにも、バーコードスキャンのみの入力に統一したので、ヒューマンエラーを最小に抑えて受付時間を大幅に削減できた。「感染拡大予防にも貢献できたことで、プロジェクトチームからはお褒めの言葉をいただいた」(遠藤氏)
開発者1人から16人のチームへと成長、スキル格差課題に取り組む
このようにすでに複数のForguncyの活用事例が登場している日亜化学工業。2018年にForguncy 4を導入した際には、遠藤氏一人しかForguncyの開発者はいなかったが、2019年には2人、2020年から2022年にかけて教育カリキュラムを整備したことで8人まで増加した。現在はForguncyドリルを活用し、16人まで増えている。
遠藤氏が率いるマスタ管理チームの業務も、Forguncyによって「かなり変わった」という。これまでは依頼者からデータ抽出やツールの作成をお願いされても、他の業務もあるのでなかなか進まなかった。そこで他のメンバーにもForguncyの学習を促したところ、最初はSQLやシステム開発の知識がないから不安だと思っていたメンバーも、他のチームでプログラム経験の無い人たちがForguncyを使っている話を耳にする中で、不安よりも期待が大きくなり、学習に取り組むようになった。
学習後の今は、「Excelのような感覚で開発できるから、想像よりも修得しやすかった」「SQLを覚えるきっかけになってよかった」「新しいコマンドを覚えるたびに、やりがいを感じる」など、ポジティブな意見が増えている。現在はステップアップし、性能を上げるためにはどうすればよいかなど、「エンジニアチームに成長したと実感している」と遠藤氏は話す。
とはいえ、課題もある。まずは、スキル格差があること。中規模のシステム開発ができる、高度な技術を習得・使用したアプリ開発ができるメンバーがいる一方で、約半数のメンバーは登録画面が作れるところで止まっている状態だからだ。そこで遠藤氏はスキル格差を埋めるべく、スキルレスで使えるサーバコマンドやサンプルアプリ、ノウハウを共有するためのナレッジサイトの構築、標準テンプレート開発標準化などのアイテムを用意していく予定だ。これらを使って「開発者の効率的な技術の向上、適用業務範囲の拡大を図っていきたい」と意気込みを語り、セッションを締めた。