「データの裏付けがある壁打ち相手」としての生成AI
ここまでは生成AIを活用するだけで実現できる生産性向上の事例を紹介してきたが、ここからは少し進んで、生成AIと人間の共同作業についての解説になる。廣瀬氏はまず、「生成AIをデータの裏付けがある壁打ち相手として活用する」というアプローチを提案する。生成AIを単なるアウトプット生成ツールではなく、意思決定を支える補助的な存在として位置づけるのだ。
例えば、物流が滞った場合、その原因をすぐに特定するのは難しい。交通状況、天候、機器のトラブルなど、想定できるものはいくらでもある。しかし、もし上記のようなデータをあらかじめリアルタイムで同期する仕組みがあれば、それを生成AIに学習させることで事前予測や原因特定、さらには対処法の壁打ちが可能になる。まさに冒頭で挙げた4つの分類のうちの「原因の特定と対処」が可能になるのだ。このレベルまで生成AIを活用できれば、生産性は大きく向上するだろう。
ただし、ここまで挙げた4つの活用法すべてに共通することではあるが、「いずれも信頼できるデータとそうしたデータに安全にアクセスできる仕組みがあって初めて成立するもの」と廣瀬氏は強調する。そのためのデータベースをきちんと整備できるかが、今後の課題になってくるのではないだろうか。
また廣瀬氏は、従来の業務フローを見直し、生成AIを前提としたプロセスに移行する重要性も指摘した。これには、従業員教育やAI活用スキルの向上が必要になる。データと人、両面において適切に導入できるかがポイントになってきそうだ。
講演を通じて、生成AIが企業の業務プロセスを進化させる強力なツールであることを改めて実感することができた。廣瀬氏が紹介してくれた事例や導入のポイントは、開発者が生成AIを活用するうえでも重要な指針となるだろう。ぜひ、皆さんも参考にしてほしい。