ジェンダーギャップを乗り越え、「夢を形にする」マインドセット
だむは氏がこのセッションを通じて最も伝えたかったのは、「夢を形にする技術」だ。ジェンダーギャップの解消という大きな目標を実現する基盤となったのは、自身が大切にするいくつかのマインドセットだった。
まず一つ目は、「チャンスが来たら迷わず掴む」こと。だむは氏は、先輩起業家から教わった話として「チャンスの神様には前髪しかない」という言葉を引用し、好機は一瞬で過ぎ去るものだと語る。だからこそ、「これは人生にとって重要な機会だ」と直感したときには、迷わず掴むことが重要なのだ。彼女自身、これまで数々の転機を迎えるたびに挑戦を選び、それが今の自分を形作ってきた。「掴んでみて違うと感じたら手放せばいい。まずはしっかり握って挑戦してほしい」と力強く呼びかけた。
次に、「根拠なき自信のなさを認めない」ことだ。特に女性に多いとされる「自信の欠如」には、社会構造や文化的背景が大きく影響している。だむは氏は「自信を持つ」こと以上に、「理由なく自分を過小評価することをやめる」ことが大切だと指摘する。多くの人はファクトベースで見れば素晴らしい努力や実績を積み上げているのに、それを正当に評価できていない場合が多いためだ。「私なんて」と思う前に、自分がやってきたことや成果を振り返り、根拠のない自信喪失を払拭してほしいと訴えた。
さらに、「夢を口に出すことを恥ずかしがらない」ことも重要だ。日本には、夢や目標を語ることをどこか冷笑する文化がある。しかしだむは氏は「夢を語る人はかっこいいし、尊敬すべき存在だ」と断言する。むしろ、「夢や目標を口に出せないこと、あるいはそれを馬鹿にするほうがかっこ悪い」。夢を声に出すことで、その実現に一歩近づくという、だむは氏の信念だ。
「苦しいときは助けを求める」という姿勢も、だむは氏が大切にしている考え方だ。人は一人で生きていけない。一人で全てを抱え込まず、必要なときには周囲の力を借りることで、自分ひとりでは成し遂げられないことも実現できる。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という言葉の通り、仲間と助け合うことで目標に近づけるのだ。
「中長期的な視点で考える」ことも、だむは氏が実践するマインドセットの一つだ。目の前の状況だけに囚われず、人生全体の文脈で物事を捉えることで、チャンスの本質を見極める力が養われるという。チャンスに直面したときこそ、「自分がどうなりたいか」を軸に判断し、将来の成長や目標達成に向けて行動するようにしたい。
そして、「自分の選んだ道を正解にする」こと。ジェンダーギャップ解消というテーマで事業を進める中で、だむは氏は多くの否定的な意見を受けてきた。それでも「ジェンダーギャップを解消しない未来は想像できない。それを加速させるのは自分だ」と信念を貫き、自らの道を正解にしてきた。だむは氏の言葉には、外部の評価に頼らず、自らの信念と行動で未来を切り拓く力強さが込められている。
最後のマインドセットとして、だむは氏は「私にはできる」と思い続けることの大切さを強調した。数学が苦手という偏見を持つ教師のもとでは女子生徒の成績が下がるという研究結果もあるように、無意識のバイアスはパフォーマンスに大きく影響を及ぼすためだ。「言霊は非常に重要だ。挑戦を恐れず、『私にはできる』と自分の可能性を信じることで、未来を切り開く力が生まれるだろう」と語った。
セッションの締めくくりとしてだむは氏は、自分のバイアスを認識することが夢を形にする第一歩だと語る。だむは氏自身、女性起業家として数字の見せ方やプレゼンの仕方において「控えめ」に見られる傾向に直面してきたが、これに対しては「数字を1.5倍から2倍に大きく計画する」「堂々と声を張って話す」といった具体的なアクションで立ち向かってきた。
「挑戦に踏み出せなかったり、自信を持てなかったりするのは、決してあなただけのせいではないかもしれない。一方で、社会のバイアスはすぐにはなくならない。現実を受け止め、その上でどんなアクションを起こしていくかが重要だ」(だむは氏)
最後にだむは氏はヒラリー・クリントン氏のスピーチの一節を引用した。「この演説を聞いているすべての女の子たちへ。あなた方には価値があり、強さも備え、この世界であらゆることに挑戦するにふさわしいということを、決して疑わないでください」。この言葉に込められたメッセージを共有しながら、だむは氏は自身のミッション「なりたいを解放する」ことの重要性を改めて強調した。
バイアスにとらわれず、自分の可能性を広げ、未来を切り拓く。だむは氏の言葉は、多くの女性エンジニアたちにとって、新たな一歩を踏み出す力強い後押しとなったに違いない。