女性がリーダーシップを取る意義
bgrass株式会社のCEO兼CTOを務めるだむは氏は、エンジニアとしてSIerやWeb系企業、フリーランスを経て、約7年のキャリアの末に起業を果たした人物だ。女性エンジニアとしての経験からジェンダーギャップの課題を痛感し、「sister」という1on1サービスを個人開発。その後、女性が正当に評価される社会を実現すべく、「WAKE Career」というキャリア支援サービスを展開している。
だむは氏は、自身について「特別ではない」と語る。学歴や有名企業でのバックグラウンドがない中でキャリアを築き、通信制高校からスタートした経歴を持つためだ。挫折やコンプレックスを乗り越え、自ら道を切り拓いてきた経験をもとに、夢を形にする力やジェンダーギャップ解消への想いを共有するセッションが始まった。
初めにだむは氏が提示したのは、CTOが集うイベント「AWS CTO Night & Day」の写真だった。多くのCTOが参加するこのイベントで、女性の姿はわずか4人。
だむは氏の調査によれば、日本企業のCTOのうち98%が男性であり、IT業界における女性比率は20%、管理職比率に至ってはわずか6%にとどまっている。「この状況に違和感を持たないとすれば、それはすでに染まってしまっている証拠だ。非常に異様なことだと思う」とだむは氏は語気を強めた。
ただ、女性エンジニアの数はこの10年で10%以上増加し、転職数も6倍に伸びている。多くの女性エンジニアたちは、公平に評価され、新たに挑戦し続けられる環境を求め、積極的に転職先も吟味しているという。しかし現状、転職や評価の場面では、依然としてジェンダーバイアスが存在している。LinkedInのデータによれば、女性のプロフィールが男性に比べてクリックされる確率は13%も低いというから驚きだ。
「女性たちは着実に増え、IT業界で活躍しようとする波が来ている。それにも関わらず、リーダー層やトップ層の薄さは依然として課題だ。女性たちは自分たちが正当に活躍できる環境を求めているが、現状はまだ大きな壁がある」(だむは氏)
科学技術の発展において、多様性の欠如は深刻な問題を引き起こす。だむは氏は、意思決定層であるCTOのジェンダー不均衡がもたらす影響について具体例を挙げる。例えば、自動車の衝突試験用ダミーは男性の体を基準に設計されているため、女性や性的マイノリティが考慮されていないケースが多い。また、AIにもジェンダーバイアスが内在し、多様性の欠如が設計や運用に影響を及ぼすこともある。
「多様な人材が関与しなければ、こういった問題は見落とされ続ける。意思決定層における多様性の重要性は疑いようがなく、日本企業のCTO層においても、それは当たり前に重要なことだ」とだむは氏は危機感を募らせる。