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CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2025 KANSAI セッションレポート(AD)

データとデジタルの力で鉄道を動かす。JR西日本で仕掛けるDXの最前線

【B-9】西からいこか 〜JR西日本で挑戦するDX改革〜

 2023年10月、JR西日本のDX推進のため機能子会社として設立されたトレイルブレイザー。オフィシャル資料には事業内容として「鉄道オペレーションの生産性向上および顧客接点・体験に関する企画・開発、JR西日本グループデジタル施策実行支援」と記されており、エンジニア視点で見るとJR西日本の持つデータとITを組み合わせた活躍の場となりそうだ。デブサミ2025関西では、やりたいことのために組織やプロセスを変えていきたい方に向けて、エンジニアの枠を飛び越えたトレイルブレイザーでの取り組みを紹介した。

フルリモートで全国から精鋭が集結。JR西日本のDX組織

 JR西日本エリアで移動と暮らしを支えるデジタル空間で、エンジニアがスキルや経験を発揮して挑戦できる新たなフィールドが誕生した。トレイルブレイザー(以下、トレブレ)のオフィシャル資料では「JR西日本グループの事業共創をデジタルの力で加速させる」「データ・デジタル技術を活用し、顧客体験・鉄道システムの再構築に挑戦」とあり、JR西日本のデジタル化やデータ活用を実現していく。

 鉄道システムの再構築もさることながら、現時点で注力しているのは「個客」体験の再構築だ。個客体験とは顧客一人ひとりに寄り添うという意味を込めた造語で、JR西日本エリアではおなじみスマートフォンアプリ「WESTER(ウェスター)」を通じてユーザーに新しい価値を提供するなど、JR西日本が創りだす未来のデジタル体験を技術で支援する役割を担っている。

 ミッション、ビジョン、バリューはどれも尖っている。ミッションは「GO WILD WEST」で新しいことに挑戦する果敢さがあり、ビジョンは「日本はいつも 西から変わる」、バリューは「伸びしろしかない」「西からいこか」「はよやろう」と関西のノリで、勢いと親しみやすさが伝わってくる。

 現場部門を見ると、最も人数が多いのはデータコンサルティング事業部で、データのコンサルティングやデータサイエンティストが在籍する。次に多いのが、ITスキルを活かして新しい仕組みを形にするソリューション事業部で、現在は23名が所属している。ほかにもミドルオフィスとしての役割を担う事業戦略部があり、現場部門全体で約100名程度が在籍している。

 スピーディーな成長を促すため、人事評価制度に「リアルタイムプロモーション」を導入している点も特徴だ。通常の人事評価は年に1回や、半年に1回だが、トレブレでは「次の職階の要件を満たした」と自ら判断したタイミングで上長に面談を依頼できる。面談を経て社内で承認が得られれば、翌月から昇格が可能。高頻度で起こるものではないが、評価時期を待たずにいつでも昇格に挑戦できる制度となっている。

株式会社TRAILBLAZER ソリューション事業部 部長 直井 和久氏
株式会社TRAILBLAZER ソリューション事業部 部長 直井 和久氏

 トレブレ ソリューション事業部 部長 直井和久氏は、「これだけでも覚えてもらえれば嬉しいです」と、トレブレの特長として次の4点を挙げた。

  1. JR西日本のグループ会社
  2. 内製でデジタルやDXをやっている
  3. 日本各地のスキルレベルの高いIT人材がフルリモートで働いている
  4. いろいろと挑戦的なことをしている

領域を超えて価値を届ける開発チームの今

 開発の実働部隊となり、まだ二十数名のソリューション事業部が今何をしているかにフォーカスを当てていこう。主な業務は、プロダクト「WESTER」と「tabiwa」の開発だ。関西圏ではおなじみだが、WESTERは移動に伴う各種サービスやポイントが利用できるJR西日本の会員制デジタルサービスで、その中で旅行や観光に特化した機能がtabiwaである。

 このWESTERとtabiwaにまつわる、事業戦略・推進、PMO、プロダクト企画、要求整理・要件定義、UX/UIデザイン、SRE、設計・開発、QA、データエンジニアリング……「要するに必要なことはなんでもやっています」と直井氏は率直に言う。現状在籍しているのはプロダクト開発を経験してきたメンバーが中心だ。しかしビジネスに関する部分もあり、自分の枠を飛び越えて挑戦する機会があるとも言える。まだ新しく、十分に人が集まっていない段階だからこそではないだろうか。

 直井氏は、自らの理想も交えながらトレブレ誕生の経緯を説明した。事業会社が「ビジネスを成長させたい。プロダクトを良くしたい。しかし、どうすればいいのか」と悩むと、まずはコンサルタントに手ほどきをしてもらい、次にSIerなどに開発を依頼するのが一般的だ。しかし、それでは自社で事業判断をするのが難しく、外部委託によって時間もコストもかさんでしまうという課題があった。

 そこで事業戦略を一緒に考え、プロダクト開発やマネジメントも内製できるグループ組織を設立したという流れだ。アジャイルに開発できて、開発工程の管理も行う。評価のためにKPIを立ててPDCAを回していくこともする。

 理想としては、ビジネス側で事業戦略や事業推進とともにプロダクトのロードマップや要件定義を行い、設計、開発、QA、リリース、検証といったサイクルを回し、また運用監視も行うなど全領域をカバーする。直井氏は「エンドユーザーに価値を早く届けたい。そのために必要なことなら何でもやる。そんな組織を目指しています」と話す。

理想は事業戦略から運用・監視まで
理想は事業戦略から運用・監視まで

鉄道という巨大アセットと内製開発。面白さと課題とは?

 新しい企業であり、手がけているプロジェクトに関して詳細に話すにはいろいろと制限があって難しい。そこで直井氏は同じソリューション事業部のメンバーとデブサミ関西のステージ上でぶっつけ本番のトークセッションをすることにした。

 あらためて登壇者の経歴を紹介する。ソリューション事業部 部長を務める直井氏は文系出身で「食いっぱぐれない」仕事を探した結果、SIerに就職した。7年ほど務めた後に内製でWeb系をやりたくなり、EC企業のアプリケーションエンジニアとして転職する。そこでプレイングマネージャーとしてサービス企画からプロダクト開発まで幅広く経験を積む。

 17年経験したので「今までの会社とは全然関係ない業界に貢献したい」という意欲がわき、トレブレに応募した。当初はPdMやテックリードを担う想定でいたものの、2024年7月にトレブレに入社したら部長をアサインされて面食らったようだが、今では「JR西日本のプロダクト開発内製化のためにできることをなんでも挑戦中」と話す。なお東京出身。トレブレはフルリモートなので関西出身・関西在住だけではなく、日本各地から経験を積んだエンジニアが集まっている。

株式会社TRAILBLAZER ソリューション事業部 西林 拓志氏
株式会社TRAILBLAZER ソリューション事業部 西林 拓志氏

 もう1人の登壇者は、直井氏と同じくソリューション事業部でモバイルアプリケーションエンジニアの西林拓志氏。関西出身で、子どものころの将来の夢は電車の運転手というほどの「鉄道オタク」だ。2010年に新卒でWeb系の会社に入社し、Perlを書きつつも同社初のAndroidアプリエンジニアとしてアプリを立ち上げた経験を持つ。そこからAndroidを中心にiOSやバックエンドも経験する。

 大阪にUターン、受託開発も経験した後、有名Web企業や大手SaaS企業でテックリードやアーキテクトなど経験を広げて行く。2025年6月にトレブレに入社し、WESTERチームのAndroidリードエンジニアとしてプロセス改善やテックマネジメントに携わっている。

 トークセッションは直井氏から西林氏に公開インタビューするような形で進めた。1問目は「エンジニアとしてどんなところが面白いか」。

 西林氏は「JR西日本はご存じと思いますが、鉄道やホテルなどリアルとつながるアセットがいっぱいあります。一般的なWebやアプリ開発をしている会社では直接関わることができない経験ができるのが面白いです」と話す。加えて象徴的なのがWESTERだ。西林氏は「ぼくは西日本在住なのでJR乗る時にはWESTERを使います。普段から使っているサービスに関われるのはとても面白いところです。個人的には、自己紹介で鉄道オタクと言った通り、電車の運転手になることが夢だった人間が鉄道事業に関われるのはとてもやりがいがあります」と熱く語った。まさに子どものころの夢がモダンな形で実現したと言えるだろう。

 次の質問「逆に大変なところ、課題点は何ですか?」に対して、西林氏は新しい企業なのでいろいろと未整備なところがあり「課題解決したい時に、その前にこちらを解決しなくてはならない」みたいなことに直面するという。

 ここで直井氏が補足する。トレブレはゼロスタートではなく、親会社で数年ほど内製の取り組みを経たうえでトレブレが生まれたものの、高度なフルフレックスやアジャイルを経験したメンバーからは「成熟度に課題がある」と見えてしまうところがある。ここは鋭意改善中というところだ。

 3問目は「これからやっていきたいことは?」。西林氏は「ぼくも含めて、他社で長いこと豊富な経験を積んできたメンバーが多いので、そうしたメンバーがちゃんと動けるようにしたいです。将来的にはトレブレのメンバーがチームをリードして『トレブレに任せれば解決できる』と信頼されること、全行程に関われることもしていきたいです。あとトレブレはまだ設立2年弱なので、知名度を高めるためにコミュニティに出ていくなどもしたいです」と抱負を語った。

 直井氏も「自分自身もエンジニアやりながらプロダクトもやっていました。早くものをつくりたかったのが単純な動機でしたが、そのために今は準備期間だと思っています。これから1年以内にはパワーが出せるようにして、いろんなプロダクトをリリースしていきたい」と意欲を見せた。

JR西日本のDX推進にチャレンジ!フルリモートで全国から仲間を募集!

 株式会社TRAILBLAZERではJR西日本のDX推進のために様々な職種で一緒に働く仲間を募集しています。本記事で紹介されたPdMやエンジニア(バックエンド、QA、モバイルアプリ、SREなど)も募集しておりますので、気になる方は採用HPをご確認ください。

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提供:株式会社TRAILBLAZER

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/22338 2025/10/31 15:10

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