「自分より優秀なメンバー」を率いるリーダーの苦悩と「自分ごと化」
次なる試練は、入社3年目に訪れた。大規模なシステムリプレイス案件である。既存サービスをEC2からECS(コンテナ環境)へ移行するという技術的難易度の高いプロジェクトにおいて、高田氏はエンジニア兼任の「プロジェクトリーダー」に抜擢された。
チームには、社内の技術を牽引するテックリードや、経験豊富なパートナーエンジニアが名を連ねていた。技術力でも経験値でも自分を上回るメンバーがいる中で、若手の自分がリーダーとして一体何の価値を発揮できるのか。「リーダーとして僕ができることは何だろう」と不安に苛まれる高田氏に対し、EMはシンプルな指針を示した。
「まずは誰よりもプロジェクトを理解すること」そして、「小さなことでも決断回数を増やし、提案することで価値を発揮する」ことだった。
しかし、理屈で分かっていても実践は難しい。実際、プロジェクトリーダーとして「これで進める」と決断したスケジュールがうまくいかず、他メンバーに想定以上の負荷をかけてしまう失敗も経験した。個人の担当範囲であれば自分の努力でカバーできるが、リーダーの判断ミスはチーム全体に波及する。この痛みを伴う経験を通じて、高田氏は「プロジェクトを自分ごと化する」こと(STEP 2)の重要性を骨身に染みて理解した。担当案件のアウトカムだけでなく、プロジェクト全体の影響範囲と成果に責任を持つ覚悟が決まった瞬間だった。
では、経験の浅いリーダーがチームを牽引するために、具体的にどのような行動をとったのか。
一つ目は、「コードレビューを先輩より意識的に早く見る」ことだ。自分より技術力のある先輩のコードをレビューするのは勇気がいる。「はじめは自分が指摘できなかった点を、後から先輩に指摘されるのが怖かった」と高田氏は振り返る。しかし、だからこそ先にレビューを行い、その後に先輩が入れた指摘との差分を確認する。それが自分に欠けている視点を学ぶ絶好の機会となった。
二つ目は、「ディスカッションの場で先に意見を言う」ことだ。以前はミーティング中に先輩の意見を聞いても「この時はそう判断するのか」で終わっていたが、プロジェクトの目的を自分ごと化してからは、先輩と意見が違ったときに「僕だったらこう判断したが、なぜ先輩はあの判断だったのか?」と違いや理由を考えるようになった。この思考プロセスを繰り返すことで、単なる「確認」ではなく「視座の答え合わせ」ができるようになり、学びの質が劇的に向上したという。

