エンジニアリングに終わりはない!「2025年の崖」に挑む、製造・建設のレガシー現場から学ぶ変革への覚悟
【Session1】それぞれのDX、それぞれの価値、本当のDX
2022年にChatGPTが登場して以降、仕事の在り方は大きく変化した。AIによる効率化がトレンドとなった昨今、AIを搭載したDXツールも数多く登場している。しかし、DXを実現できている企業はまだまだ少ないのが現状だ。このリレーセッションでは、DXに挑む岡野バルブ製造株式会社の菊池勇太氏、DXツールを提供する株式会社クアンドの下岡純一郎氏、DXを推進するエンジニア集団である株式会社オルターブースの小島淳氏が、それぞれの立場からDXの現在地と展望を語った。
サイバー攻撃でシステム全焼。レガシーシステム刷新までの物語
最初に登壇したのは、高温高圧バルブを製造する岡野バルブ製造で2021年から取締役を務める菊池勇太氏だ。同社の主軸は、強力な高温高圧バルブであり、岡野バルブ製の製品を50年以上使用するプラントもあるという。
伝統ある企業に、外部から加わった菊池氏。「就任後に初めて社内システムにログインしたところ、見たこともないほど古い画面に驚きました」と当時を振り返る。
実は当時の岡野バルブでは、代表の岡野武治氏が自身の知見で改革を試みたものの、情シス側が安全面などを理由に、従来の運用方法を容易には変えようとしなかったという背景があったのだ。
しかし長年続いたシステムとの闘いは、1通のメールに仕込まれたランサムウェアによるサイバー攻撃で幕を閉じた。ウイルスで社内システムが焦土化し、システム内のほぼ全データが消失。2億円ほどの損害を出した。
菊池氏はこのトラブルについて「社内システムは、増改築を繰り返して『ハウルの動く城』と化していた。火災で燃えて更地になったので、新築を建てようという話になった」と回顧する。
ランサムウェアという業火に焼かれ、一瞬で消えてしまった社内システム。会社は再起をかけて市販のSaaSを導入し、業務の標準化を目指した。しかし、サイバー攻撃後も残った「独特な運用ルール」が障害となり、経費精算などの経理業務はかえって煩雑化した。
レガシーな「システム」が消え去った後に待っていたのは、レガシーな「ルール」との新たな戦いだったのである。
数年間に及ぶ改革の中で、管理・総務部門のDXは進んだものの、製造現場の壁は想像以上に厚かった。現場のデータは扱いづらい形式で散乱しており、それを整理する仕組みすらない。そもそも「データを活用する」という考え方そのものが浸透していなかった。
その結果「社外SaaSの導入から1年経っても現場では苦戦している」ようなシーンも散見され、現場と歩調を合わせることが至上命題だった。
それでも、自身が取締役に就任してからの4年間で「ようやくデジタル化の第一歩ができてきた」と語る菊池氏。今後はデータの蓄積や読み込みを行い、データ活用に入っていくという青写真を描いている。
今後の鍵として、菊池氏は「AIエージェント」の活用を挙げた。長年にわたって増改築を繰り返してきたレガシーな会社だからこそ、無理に一つにまとめるのではなく、部署ごとに「ローカルなシステム」を作り、そこにAIを導入していく方が合っている。 そう結論づけ、現在は現場単位でのAI活用に取り組んでいる。企業風土は大きく変えずにAI活用を目指す意欲を見せた。
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中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)
立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
CodeZineは、株式会社翔泳社が運営する開発者のための情報メディアです。日々の開発に取り組むエンジニアやテクノロジーを学びたい方に向けて、プログラミングやAI活用、開発ツール、エンジニアの学びとキャリアに関する記事をお届けしています。
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林田 大輔(ハヤシダ ダイスケ)
1977年生まれ長崎出身。2002年出版社写真部へ入社。 チーフカメラマンを経て2008年よりフリーランスで活動開始。 現在、福岡を拠点に広告写真撮影を主に活動中。マイクロドローンFPVや映像撮影も行う。 http://s-flame.jp/
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