DXに挑み続ける「エンジニア」の答えとは?
最後に登壇した小島氏が説くのは、「DXに対してエンジニアがどう向き合うべきか」である。
2022年末にIDC Japanが発表した調査によると、国内パブリッククラウド市場規模は2027年に約13兆円になると予測される。「クラウドと共にAIが大きく発展し、DXを背景としたエンジニアリング市場も広がりを見せている」と小島氏は話す。
そんな潮流のなか、エンジニアリングとして大事なのは、電子化やデジタル化で行われる「変革」の部分だと強調する小島氏。電子化からデジタル化、デジタル化からDXという過程こそが、まさにエンジニアリングそのものだと示した。
また2018年に公表された経済産業省のDXレポートでは、「基幹システムを21年以上運用している企業は2025年に全体の6割に上る」という試算がなされた。それまでにさまざまな問題が発生するという「2025年の崖」への懸念は、SNSでも散見される。

菊池氏や下岡氏の事例が示す通り、この崖の縁に立たされている企業は少なくない。とりわけ製造業や建設業といった非IT企業におけるIT投資の予算比率は、売上高に対して1%程度と、非常に低い数字にとどまっている。産業や事業の構造上、「レガシー化するシステムを使い続けるしかない」という企業も珍しくないのだ。
加えて小島氏が挙げたのは、売上高100億円未満の企業がDXを行う場合の問題だ。多くの企業がエンジニアリングのコスト増加やクラウドの難解さを背景に内製化を選ぶ傾向にあるが、移行に伴うリスクと定着化支援は大きな課題となっている。

さらに小島氏は、「仮にDXを見越してCIOやCTOといった役職を設けるとしても、情報基幹システムと勘定系基幹システムの両方をやりきることは不可能なので、どちらかはBPO(業務外部委託)せざるを得ないという前提に立つべき」と説く。
そのうえで成功のカギを握るのは、「全体をアーキテクチャとして捉えることと、業務に長けた年長者、いわゆるドメインエキスパートをうまく活用することだ」という。とくに後者について小島氏は、「ローコードで開発し、エキスパート自身がシステム開発に関われる仕組みを整える必要がある」としたうえで、今後の潮流である「AI駆動」とも真正面から向き合うよう促した。
講演の最後に小島氏は、「エンジニアリングに求められるのは、プロダクト開発には終わりがないことを認めたうえで、覚悟を決めることだ」と話す。
経済活動に終わりがない以上、エンジニアリングにも終わりがあるはずがない。状況が激しく変わる今だからこそ、DXというキャッチーな言葉に惑わされず、DevOpsの実践を徹底することが大切だ——そんな普遍的だが真理を突いたメッセージで、リレーセッションを締め括った。

