AI時代、マネージャーの仕事は「半分」になる
小田中:さて、現在私たちの環境は生成AIの台頭によって激変しています。LayerXでもAI活用が進んでいると思いますが、この変化の中でエンジニアリングマネージャーの仕事はどう変わっていくとお考えですか?
新多:極論を言えば、「マネージャーの今の仕事は半分になる」と期待しています。もちろん、暇になるという意味ではありません(笑)。
これまで人間がやっていた、コードレビューの一次チェックや進捗のアラート出し、タスクの細かな割り振りといったマイクロマネジメントに近い業務は、AIエージェントが担うようになるでしょう。「レビューに時間かけすぎだよ」「この実装方針はリスクがあるよ」といったフィードバックは、人間が気を使いながら言うよりも、AIが即座に指摘してくれたほうがお互い気疲れせず効率的です。
小田中:メンバーがAIを活用して「セルフマネジメント」できるようになる、ということですね。では、空いた「半分」の時間でマネージャーは何をするのでしょうか。
新多:より本質的な「組織の設計」と「アラインメント」です。AIという強力なリソースを含めたチーム全体をどう構成すれば成果が最大化するか。そして、会社の目指す方向性と、メンバー個人のキャリアやモチベーションをどう接続(翻訳)するか。ここはまだ、AIだけでは代替できない人間ならではの領域です。
また、マネージャーが見られる人数(スパン・オブ・コントロール)の限界も突破できるはずです。これまでは「1チーム5〜7人が限界」と言われてきましたが、AIの支援があれば、数十人のメンバーや複数のチームを見ながら、より大きな成果にコミットできるようになるでしょう。
小田中:「AIに仕事を奪われる」と悲観するのではなく、煩雑な業務から解放され、よりクリエイティブな組織づくりに専念できる未来ですね。ただ、その変化のスピードに疲れてしまう人もいるかもしれません。
新多:そうですね。だからこそ、私は「変化を楽しむためには、自分自身が元気でなければならない」と強く思っています。人間、元気がない時に「変化だ! キャッチアップしろ!」と言われても「うるさい、黙っててくれ」となってしまいますよね(笑)。
私は飽き性なので変化は大歓迎ですが、それを楽しみ続けるためには、自分の心身の健康(ジョブセキュリティ)を自分で守ることが、これからの時代の重要なスキルになっていくと思います。
マネージャーは「強くてニューゲーム」ではない。スライムから倒せ
小田中:最後に、これからエンジニアリングマネージャーを目指す若手や、今まさにマネジメントの壁に直面している方に向けて、メッセージをお願いします。
新多:ぜひお伝えしたいのは、「マネージャーになることは、RPGで別の職業に『転生』するようなものだ」ということです。
エンジニアとして優秀だった人ほど、マネージャーになった途端に「できない自分」に直面して自信を喪失してしまいがちです。「前のマネージャーはあんなに軽々とやっていたのに、自分は予定調整すらままならない」と。でも、それは当たり前のことなんです。なぜなら、ジョブチェンジしてレベル1からのスタートなんですから。
小田中:「強くてニューゲーム」だと思ってはいけない、ということですね。
新多:そうです。エンジニアとしての経験値や知識は引き継がれていますが、マネージャーとしてのスキルはゼロからです。最初から「キングスライム」や「魔王」を倒そうとしないでください。
まずは目の前の「スライム」を一匹ずつ倒していけばいい。「今はまだできないこと」があっても、「自分には向いていない」と責めるのではなく、「今はレベルが足りないから棚上げしておこう」と割り切る技術も必要です。そうやって一つひとつ経験を積んでいけば、必ず倒せるようになります。
もし道中のモンスターが強すぎて心が折れそうになったら、私の本を「攻略本」として、あるいはコミュニティを「酒場」として使ってください。仲間はたくさんいますから。
小田中:「できない自分」を受け入れ、レベル1から冒険を楽しむ。その視点があれば、マネジメントというキャリアはもっと希望に満ちたものになりそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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小田中 育生(オダナカ イクオ)
エンジニアリングマネジメントと目標設定(OKR)を専門とする。 株式会社ナビタイムジャパンでVP of Engineering、株式会社カケハシでHead of Engineeringを 歴任。 2026年7月よりKDDIアジャイル開発センター所属。 コミュニティにも 積極的に参加しておりEMConf JPにはコアスタッフとして関与。 スクラムフェス、Startup in Agile、DevLOVEなどによく出没。 DevOpsDays Antwerp 20...
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近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)
株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...
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ミヨグラフィ(ミヨグラフィ)
フットワークが窒素よりも軽いフリーランスフォトグラファー。ポートレート、取材、イベントなど主に人物撮影をしています。英語・中国語対応可能。趣味は電子工作・3Dプリント・ポールダンス。 Webサイト
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