“影分身”と“遠隔分身”── 1プロンプトで8つのAIを使いこなす手法
続いてKinopee氏は、本セッションの中核となる「分身に働いてもらう」方法へと踏み込んだ。Cursorには「マルチエージェント」と呼ばれる機能があり、1つのプロンプトに対して最大8つのAIエージェントを並列に動かせる。
そして再び、先ほどのゲームプランが画面を参照し、3つのモデルに対してプラン通り実装するように指示を出した。これが、ローカル環境で用いる「影分身」である。いわば、同じ仕様書を複数のエンジニアに同時に配布するような感覚に近い。
指示を実行すると、ComposerやGPT系、Sonnetといったモデルが並び、処理が同時進行で進んでいく様子がリアルタイムで表示された。あまりの速さに説明が追いつかず、Kinopee氏が思わず苦笑する場面もあったほどだ。
今回は同じプランを起点としているため、画面には似通った結果が並んだ。しかし、モデルの特性や確率的な揺らぎによって、デザインや挙動に差が生じることも少なくない。今回は3つのモデルで比較したが、最大で8つまで同時に動作させられることを考えると、そのアウトプット量は圧倒的だ。
成果物はGitのワークツリーとして分離管理されるため、採用や破棄の判断も容易である。AIがすばやく生成した成果物から検証を開始し、その間に次の成果物が生成される流れを構築すれば、待ち時間もほとんど発生しない。
この影分身は、とりわけデザインやUI検討の工程において効果を発揮する。A案、B案、C案を順に作成する必要はない。同じ条件を与えて一度に生成し、完成したものから比較検討すればよいからだ。モックアップや挙動確認といった「大まかなイメージを把握したい段階」において、判断速度を飛躍的に高めてくれる。
ここから話題は、影分身をさらに拡張した「遠隔分身」へと移った。クラウド上で動作するエージェントを用いれば、処理の実体はインターネット上のAIに移り、ローカル環境から切り離される。Kinopee氏は「これは単に『保存場所が変わる』という話ではなく、使い方そのものが変化する」と指摘する。
クラウドエージェントの最大の価値は、「これまで生産性を生み出せなかった時間を活用できる」点にある。タスクさえ設定しておけば、就寝中や移動中、食事中であってもAIは作業を継続する。人間が作業できない時間が、そのまま開発時間へと転換されるのだ。
この指示はIDEだけでなく、Webやスマートフォン、さらにはSlackやGitHubからも行える。会場では、三目並べゲームをクラウドエージェントで開発する様子がデモとして披露された。短時間で生成された成果物をローカル環境に取り込み実行すると、勝敗判定まで含めて正しく動作した。
さらに、完成したゲームの品質を高めるため、アニメーションや効果音の追加指示を、再度クラウドに送ることも可能だ。影分身と遠隔分身を組み合わせることで、開発効率は驚異的な高みへと到達する。
