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Developers Boost 2025 セッションレポート

「#100日チャレンジ」で体得した仕様駆動の開発術 ――大塚あみ氏が語る生成AIとの向き合い方とは?

【A-1】生成AI時代の新・開発術 「#100日チャレンジ」から始まった私なりのコードとの向き合い方

 生成AIの進化に戸惑いながら、エンジニアとして自分はどう成長すべきかと悩む若手は少なくないだろう。その問いに対する実践的な示唆となるのが、大塚あみ氏の「#100日チャレンジ」である。本セッションでは、経済学部の学生だった大塚氏が「宿題をサボる」ことをきっかけにChatGPTを徹底的に研究し、やがて学会での論文発表や受賞へと至った経緯と、100日間にわたる公開実験から得られた知見と成果が語られた。

生成AIの出力特性と「人間的なノイズ」の関係を徹底解明

 合同会社Hundreds代表の大塚あみ氏は、エンジニア、作家、研究者として多面的に活動している。SwiftやNext.jsを用いたアプリ開発、企業や大学での講演、経営層向けのAI導入支援など、その活動幅は広い。とりわけ著書『#100日チャレンジ』で知られ、SNSやnoteでは週3回のペースで情報発信を続けている。加えて、ソフトウェア開発工程の効率化や学習プロセスをテーマに国内外の学会で発表するほか、ハッカソンでの受賞歴も持つ。

合同会社Hundreds 代表/エンジニア・作家・研究者 大塚 あみ氏
合同会社Hundreds 代表/エンジニア・作家・研究者 大塚 あみ氏

 華やかなキャリアを歩む大塚氏だが、その出発点は意外なところにあった。

 2023年4月、経済学部の学生だった大塚氏は、大学のICT基礎の授業でChatGPTと出会う。手動で書けばエンジニアでも20分以上かかるコードが「ゲームを作りたい」と入力するだけで一瞬にして生成される。AIによる圧倒的な生成速度に、大塚氏は強い衝撃を受けた。

 ほぼ未経験者に等しかった大塚氏だが、ChatGPTとの出会いは自身の世界観を一変させる存在となった。

 しかし、授業では「ChatGPTはレポートも書けるが、宿題に使ってはならない」と注意を受けた。そこで大塚氏の心に浮かんだのは、「ChatGPTを使えば、宿題をサボれるのではないか」という発想だった。大塚氏の関心は「宿題をどうこなすか」ではなく、「いかにしてバレずに宿題をサボるか」へと移っていった。

大学の授業で生成AIと出会い、「宿題に使ってはならない」という一言からすべてが始まった
大学の授業で生成AIと出会い、「宿題に使ってはならない」という一言からすべてが始まった

 とはいえ、当時の生成AIは現在と比べものにならないほど精度が低かった。冗長な言い回しや抽象的な文章、動作しないコード。一読すればAI生成だと判別できる程度の出力であり、安易にレポートを提出した学生の多くが単位を失っていった。

 それでも大塚氏は諦めなかった。むしろ、そのハードルを乗り越えるために腕を磨いた。AI検出を回避し、教員に見抜かれない文章を生成する手法を確立するため、1か月間、毎日ChatGPTと向き合い続けたのだ。目的は「バレない出力」を作ること。その執念は尋常ではなかった。

 検証に費やした時間は、実に約300時間に達した。AI検出の手法を徹底的に調査し、関連する海外論文を読み込み、検出ロジックを分析する。英語論文はChatGPTを用いて読み解き、その仕組みを理解した上で回避策を設計した。仮説を立て、出力を試し、検証し、修正する。このサイクルを愚直に繰り返したのである。

 最終的にたどり着いたのは、自身の体験や日記的な要素を織り交ぜ、文末表現を変え、文体に揺らぎを持たせるという手法だった。いわば「人間的なノイズ」を意図的に混ぜ込む形だ。手法自体はシンプルだが、重要なのはそこに至るまでの過程である。生成AIの癖、限界、そして強みを徹底的に観察し、自分なりの「扱い方」を体得した。

 この異様なまでの検証プロセスが、後に学会発表や100日チャレンジへとつながっていった。

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「宿題の自動化」がソフトウェア工学の視点で学会登壇へと昇華

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この記事の著者

水無瀬 あずさ(ミナセ アズサ)

 現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、オウンドメディアコンテンツを執筆しています。得意ジャンルはIT・転職・教育。個人ゲーム開発に興味があり、最近になってUnity(C#)の勉強を始めました。おでんのコンニャクが主役のゲームを作るのが目標です。

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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