生成AIの出力特性と「人間的なノイズ」の関係を徹底解明
合同会社Hundreds代表の大塚あみ氏は、エンジニア、作家、研究者として多面的に活動している。SwiftやNext.jsを用いたアプリ開発、企業や大学での講演、経営層向けのAI導入支援など、その活動幅は広い。とりわけ著書『#100日チャレンジ』で知られ、SNSやnoteでは週3回のペースで情報発信を続けている。加えて、ソフトウェア開発工程の効率化や学習プロセスをテーマに国内外の学会で発表するほか、ハッカソンでの受賞歴も持つ。
華やかなキャリアを歩む大塚氏だが、その出発点は意外なところにあった。
2023年4月、経済学部の学生だった大塚氏は、大学のICT基礎の授業でChatGPTと出会う。手動で書けばエンジニアでも20分以上かかるコードが「ゲームを作りたい」と入力するだけで一瞬にして生成される。AIによる圧倒的な生成速度に、大塚氏は強い衝撃を受けた。
ほぼ未経験者に等しかった大塚氏だが、ChatGPTとの出会いは自身の世界観を一変させる存在となった。
しかし、授業では「ChatGPTはレポートも書けるが、宿題に使ってはならない」と注意を受けた。そこで大塚氏の心に浮かんだのは、「ChatGPTを使えば、宿題をサボれるのではないか」という発想だった。大塚氏の関心は「宿題をどうこなすか」ではなく、「いかにしてバレずに宿題をサボるか」へと移っていった。
とはいえ、当時の生成AIは現在と比べものにならないほど精度が低かった。冗長な言い回しや抽象的な文章、動作しないコード。一読すればAI生成だと判別できる程度の出力であり、安易にレポートを提出した学生の多くが単位を失っていった。
それでも大塚氏は諦めなかった。むしろ、そのハードルを乗り越えるために腕を磨いた。AI検出を回避し、教員に見抜かれない文章を生成する手法を確立するため、1か月間、毎日ChatGPTと向き合い続けたのだ。目的は「バレない出力」を作ること。その執念は尋常ではなかった。
検証に費やした時間は、実に約300時間に達した。AI検出の手法を徹底的に調査し、関連する海外論文を読み込み、検出ロジックを分析する。英語論文はChatGPTを用いて読み解き、その仕組みを理解した上で回避策を設計した。仮説を立て、出力を試し、検証し、修正する。このサイクルを愚直に繰り返したのである。
最終的にたどり着いたのは、自身の体験や日記的な要素を織り交ぜ、文末表現を変え、文体に揺らぎを持たせるという手法だった。いわば「人間的なノイズ」を意図的に混ぜ込む形だ。手法自体はシンプルだが、重要なのはそこに至るまでの過程である。生成AIの癖、限界、そして強みを徹底的に観察し、自分なりの「扱い方」を体得した。
この異様なまでの検証プロセスが、後に学会発表や100日チャレンジへとつながっていった。
