ツールチェーンではなくプラットフォームがもたらす価値
ピクシブにおけるテクノロジー変革をより詳しく見ていこう。ピクシブは2007年にサービスをリリースした。当時のソースコード管理は集中型のSubversion(SVN)が主流でピクシブでも採用していたが、後に分散型のGitへの流れがあり、ピクシブも2014年にオープンソース版のGitLabをGitサーバーとして導入した。以来、バージョンアップを重ねながらセルフマネージドで運用を続けてきた。
2024年になると、ピクシブはソフトウェア開発ライフサイクルの基盤として有償版となるGitLab Ultimateの導入を決断する。セキュリティスキャンも含めた運用をすべて統合してDevSecOpsを推進すること、バリューストリームの可視化も進めていくことを狙いとした。そして2025年にはGitLab Duo(GitLabが提供するAI機能の総称)も導入した。
なおGitLabはソースコードリポジトリの定番ではあるものの、直近では「AI-Native DevSecOps Platform」を掲げ、進化を続けている。AI技術を中核に据えて設計されており、DevSecOpsに必要な機能が1つのプラットフォームに集約されている。
DevSecOpsのあらゆるプロセスに関わる各種データを1か所に蓄積するため、一貫したコンテキストを生成できるというメリットもある。2026年1月には満を持して、エージェント型AIを使用した開発プラットフォーム「GitLab Duo Agent Platform(以下、DAP)」の一般提供が開始となった(そのためDevelopers Summit 2026はGA直後の初のお披露目の場となった)。
ここでピクシブがGitLabを採用した時に話を戻そう。GitLabはプロセス全体をカバーするプラットフォームとなるが、対抗軸となるのがツールチェーンだ。それぞれのプロセスで最適なツールを選択して、それらを数珠つなぎにして使う。GitLab採用時にはピクシブでも「プラットフォームかツールチェーンか」が大きな論点として浮上した。
ツールチェーンについて、bash氏は「ツール選びはエンジニアにとって“とても楽しい”側面があります。かゆいところに手が届きますし、いいものを選び抜いたという満足感もあります。しかし組織レベルの視点に引き上げると、小口契約になるので契約上のスケールメリットが乏しくなってしまいます」と指摘する。ツールがばらばらだとメンバー異動時にキャッチアップが難しく、オンボーディング・オフボーディングのアカウント管理の負荷も増えていくからだ。ツールを入れ替えたくなる誘惑もあり、どこかでシャドーIT化や作り込みが生じてしまうというリスクとも隣り合わせだ。
一方、プラットフォームだと「一貫して扱えたほうが全体最適を追求しやすい」とbash氏は強調する。加えて、有償版となるGitLab Ultimateへの移行では、かねてから使用してきたオープンソース版のコンポーネントを継承できることも後押しとなった。bash氏は「ブラックボックス的なベンダーロックインにならず、データのオーナーシップも持てる点を重視し、引き続きセルフマネージドで運用して、必要に応じてパッチ適用やバージョンアップしていこうと選定しました」と説明する。
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