セマンティック検索はオープンとオンプレのハイブリッドでいいとこどり
次にセマンティック検索のAPI実装に移ろう。これもAgent Skillsで実装していく。同じセマンティック検索(意味で検索)にしても、機密性に応じて相談するAIを使い分ける必要があるのがポイントだ。今回は2パターンに分けることにする。
まずは公開情報パターン。「冬向きの暖かい靴」というように、商品説明や一般的な問い合わせであれば、クラウドのAIが向いている。スケーラブルで高度な推論ができるのが特徴だ。もう1つは機密情報パターン。今度は「過去に購入した商品と似たもの」というように、ユーザーの購買履歴(他にも何らかの機微情報)を含むものであれば、ルーティング先を変えてオンプレミスにあるAIを使う。セキュリティや低遅延を優先するならこちらだ。
今回開発するECアプリは両パターンのハイブリッドとなる。単に商品を検索するだけではなく「おすすめ商品」のように、商品推薦機能も組み合わせるためだ。システム的にはエンドユーザーが「冬向きの暖かい靴」と入力したら、裏で関連商品を取得し、購買履歴も参照したうえで、推薦理由の文章「この商品は防水性があり、過去に似た商品を購入されています」を生成する。購買履歴は機密情報パターンで、推薦文作成は公開情報パターンでAIを組み合わせる。組み合わせることでデータ主権を守りながら、高度なAI活用を実現できる。
この時の実装のポイントは「Constitution.md」でルールを定義しておくことだ。例えば「個人情報は外部には送信しない」「データの機密性に応じてAIを切り替える」などだ。こうしておくと、GitHub Copilotで「商品推薦エージェントをConstitution.mdのルールに沿って実装して」と指定することで実装していける。
今回オンプレAIとして用いたFPT AI FactoryはVS CodeのターミナルからSSHで接続するため、Claude CodeやGitHub Copilotを閉域網内のGPUサーバーに使える。鈴木氏は「機密データを守りながら、クラウドと同等の開発体験が得られます」と説明する。
なおAIルーティングのロジックはAIに実装させることなく、Constitution.mdで定めていく。鈴木氏は「これは組織や機関により違いますので、データ属性やレイテンシーに応じてハードコードしていくような感覚でいいと思います」と言う。
モバイルアプリ(iOS)の画面もAIツールで生成していく。Copilotにモックアップの画像を見せても、Chatでは画像を認識できない。そこでCopilot CLIを起動し、モデルはGPT- Codex 5.3に切り替えて、ターミナルから「この画面をもとにSwiftコードを実装して」と指定することでSwiftUIコードが生成される。多少のエラーが出ることもあるが、少し直せばいい程度なので鈴木氏は「そこはご愛嬌(あいきょう)」と言う。
今回のデモ開発では、仕様を起点にAIを駆使することで、バックエンドからモバイルまで一気通貫で開発できることを示した。仕様駆動開発とは、人間が仕様を磨き、実装はAIに任せるものだ。これからの人間とAIにふさわしい役割分担のあり方として、新しい当たり前になっていきそうだ。
FPTジャパンホールディングスからのお知らせ
今回のセッションで活用した統合AI基盤「FPT AI Factory」は、かんたんにお試しいただけます。

