ベロシティ急落——シニア4名離脱の危機と、Copilotエージェントによる立て直し
シチズン時計のHealth Scanアプリは、同社のヘルスケア機器とBluetoothで接続して測定データを記録・管理するスマートフォンアプリだ。2024年にリリースされ、血圧計や体重計など4機種と連携して健康状態の把握と改善をサポートする。2023年度に社内初のスクラムチームとして発足し、シチズン時計・グループ会社・外部ベンダーの3社合同体制で内製化を進めてきた経緯がある。
2024年度は8名体制で、うち4名がシニアエンジニアという布陣だったが、後半にその4名全員がチームを離れた。プロジェクト全体を把握し技術的な柱を担うメンバーが一気に抜けた結果、ジュニアの割合が急増。ベロシティの数字にも如実に表れ、70ポイント前後あったものが次のスプリントでは大幅に落ち込む見通しとなり、このままでは機能リリースが止まると、チーム内に危機感が漂い始めた。
そのタイミングで打ち手として素早く導入したのが、GitHub Copilotエージェントだ。チームはすでにGitHub Copilotを活用していたが、エージェント機能が登場したタイミングに合わせていち早く試験導入した。
コーディング作業の推進だけでなく、それまで人間同士でやっていたペアプロ・モブプロをCopilotエージェントとのペアプロに切り替え、プロジェクトの理解深化やエラー解析に活用した。MCPサーバーとの連携を利用してGitHubのPR作成を自動化し、プロダクトバックログからの簡単なタスク実装も任せるようにした。半年ほどの運用でベロシティは50〜60ポイントまで回復した。
しかしチームが安定を取り戻すにつれ、新たな問いが頭をもたげてきた。簡単なコードやテストは生成AIに任せ、エンジニアの作業がコードレビュー中心になりつつある。
このスピード感が上がり続ければ、設計や動作確認は必要だとしても少人数でチームが回るのではないか。将来的にはPOと優秀なエンジニア1名でチームが機能してしまうかもしれない。「AIに仕事が奪われてしまったら、エンジニアは何をして生きていけばいいんだろう」という問いが、黒川氏の中で具体的な重みを持ち始めた。
