「クラウドが得意じゃない」からのスタート——気負わないコミュニティへの第一歩
Jagu'e'r(ジャガー)は、Japan Google Cloud User Group for Enterpriseの略称だ。Google CloudやWorkspaceを活用するユーザー・パートナー企業の相互交流を促進するコミュニティで、講演当時で1425社・5213名が参加し、37の分科会が活動している。
このコミュニティを設立し、書籍『優れたエンジニアがコミュニティの中でしていること』の著者でもある黒須義一氏がモデレーターとなり、Jagu'e'rで活躍する2人のエンジニアとのパネルディスカッションを通じて、コミュニティがキャリアに与えた影響を掘り下げた。
大日本印刷の加藤輝実氏は、入社から7年間エンジニアとしてWebアプリやAndroidアプリの開発に携わり、現在は生成AI分野へとシフトして社内外に生成AIツールの提供や勉強会コンテンツの開発を行っている。すかいらーくホールディングスの藤本祥恵氏は、新卒で店舗での接客・調理から始まり、本部での秘書・予算・採用担当を経てDX推進担当に着任した3〜4年前からIT領域に深く関わるようになった異色の経歴を持つ。
加藤氏がJagu'e'rに初めて参加したのは入社6年目のことだ。上司から「美味しいご飯が食べられるらしいよ」と誘われたのがきっかけだった。実はJagu'e'rへの会員登録はイベント参加の1年以上前からしていたが、「クラウドが得意じゃない」という自信のなさから踏み込めなかった。実際に参加してみると、クラウドに詳しい人が多い場であるにもかかわらず、「すごくウェルカムで、自分の経験やお悩みを話しても積極的に聞いてくれる、あたたかい雰囲気」が強く印象に残ったという。
藤本氏のJagu'e'r参加のきっかけもまた、軽い誘いだった。面識の薄い別部門の同僚から、Jagu'e'rの人材育成分科会が開催していた資格取得イベントの話を聞いた。「上位50位に入るとバウチャーがもらえるよ」という誘い文句に、気軽な気持ちで飛び込んだ。学習ツールでコンテンツをクリアすると週次ランキングが発表されるという競争形式が、それまでIT勉強の機会がほとんどなかったレストラン業界での仕事環境を背景に、「コミュニティってこんなに勉強するんだ」という驚きと強いモチベーションをもたらした。
この2人の参加経緯を受けて、黒須氏は重要な観察を示した。「2人に共通するのは、事前にコミュニティをキャリアに活かそうなんて思っていなかったこと。気楽にそのお誘いを受けてみようかなとちょっと踏み出してみるというのが大事なのかもしれない。『ちょっと美味しいご飯あるけどどう?』とか『バウチャーもらえるよ』と誘ってくれそうな立ち振る舞いをずっとしてきたんでしょう」。周囲から誘いを受けやすくなる普段の姿勢そのものが、成長機会を引き寄せる第一歩になっている。
