1人ユニコーン企業は可能か?少人数チームが現実解になる理由
AIによってエンジニアの仕事が変わるなら、チームの構成はどう変わるのか。藤倉氏は「1人ユニコーン企業は理屈上可能だが、現実的には疑問だ」と問いかける。AIの技術は全員が持っている。1人で開発できるようになったとしても、同じAIを使える10人のチームの方が相対的に早い。優れた1人が突出しているケースでのみ1人ユニコーンは成立しうるが、それは相対比較の中でのレアケースだ。
エンジニア組織全体のサイズについては、藤倉氏は「小さくしていいとは思っていないが、結果として小さくなってしまうだろう」と率直に語る。AIによってエンジニアに求められるスキルセットが絞り込まれ、「今残っている2つの重要なスキル」を持つ人材が採用市場でより希少になるからだ。以前は10項目のスキルのうち8項目で活躍できていたエンジニアが、残る2項目を持っていなければ活躍が難しい状況になりつつある。これは残酷な現実だが、採用競争の結果として組織規模は縮小圧力を受ける。
最小のチーム単位については、「2〜3人が妥当ではないか」と藤倉氏は考える。エンジニアが「考えて判断して責任を取る」というタフな役割を担う以上、1人に全責任を負わせるのは無理がある。複数人でお互いにチェックし、責任を分担し、上位のマネージャーに相談できる体制が不可欠だ。さらに、PdM・デザイナー・エンジニアという職種の境界線が溶け合い、「プロダクトマネジメントから体験の設計、エンジニアリングまでエージェントを使ってやってしまう人」が出てくるという。その結果、職種横断的に動ける2〜3人のチームが最も納得感のある形になるとの見立てだ。

エンジニアリングマネージャーの仕事は楽になるのか
ではエンジニアリングマネージャーの仕事はどう変わるのか。藤倉氏はまず「プロジェクトマネジメントの相対的重要性は下がる」と言う。ソフトウェア開発の歴史は複雑さを隠蔽して誰でも使えるようにしてきた先人たちの積み重ねであり、技術的な不確実性はこれからも下がり続ける。AIがその複雑性への向き合いをさらに軽減するため、プロジェクトの技術的なリスクコントロールという側面でのEMの負荷は相対的に小さくなるだろうというわけだ。
技術マネジメントの領域では、「何の技術を使うか」という意思決定が最重要の仕事になると藤倉氏は語る。設計のパターン化が加速する中で、「この技術は今トレンドに上がっているが、私たちは使うべきではない」といった判断こそが、技術マネジメントの核心になっていく。
一方で、組織・人のマネジメントは「大変さが増す」と藤倉氏は言う。チームメンバー一人ひとりが「考えて判断して責任を取る」という重い役割を担うようになれば、その支援をするマネージャーの仕事も必然的に重くなる。かつて若手エンジニアの悩みは「先輩のような設計ができない」「コードが遅い」といったものだったが、これからは「どうやって責任を取ったらいいですか」「どのプロダクトを今マーケットに当てるべきですか」という相談が増えると藤倉氏は予想する。1on1の数が半分になっても、1on1の内容が格段に重くなる——そういう時代が来ると見ている。
