コードレビューの委任、コーディングルールの更新──TOKIUM流「ハーネスエンジニアリング」とは
坂上氏のチームはAIを組み込んだ開発を始めてから約1ヶ月で、3人のメンバーが1日10件以上のプルリクエストを継続的に出せる状態に達した。人間が手で書いていたころは多くても1日3~5件だったが、あるときは1営業日あたり10件以上、1件あたり500~1000行規模のプルリクエストを出せるようになった。
しかし、成果物の急増は新たなボトルネックを生んだ。チーム全員がレビュー作業に疲弊したのだ。「認知負荷と体力的な面で、この体制を続けていくのは難しいと感じました」と坂上氏は振り返る。
そこで取り組んだのがコードレビューのAIへの委任だ。「人間が今までの形と同じように細かくコードを読んでコメントしていく進め方は、AIのアウトプットを必要以上に絞ってしまうと感じました」と坂上氏は明かす。
実際にAIにレビューさせると人間が見落としていた指摘が上がるケースも多く、「AIにレビューさせた結果を信じて、mainブランチにマージしていくスタイルを作っていこうとしています」と坂上氏は話す。
AIによるレビューを運用し始めると、次の課題が浮かんだ。それは、同じ指摘が何度も繰り返されることである。このままでは、AIが毎回同じコメントを出し続ける非効率が生じる。そこで設計したのがコーディングルールの自動昇格だ。週2回、プルリクエストのコメントを全件洗い出し、共通する指摘があれば「このルールをコーディングルールに昇格すべきです」と自動でレコメンドするプルリクエストが開発者に届く。ルールがアップデートされることで、AIがコードを生成する時点から問題が解消された状態となる。
AIレビューへの移行が進む一方、品質をどう担保するかは現在進行形の課題である。現在検討しているのは、絞り込んだテストケースを人間がレビューするアプローチだ。タスクやシーンの切り方を工夫してテストケースの差分を見えやすくし、そこだけを人間が確認する。「チームで合意まで取れていて、仕組みはこれから作り始めるところです」と坂上氏は話す。
スクラムの運営にもAIを組み込んでいる。Slackチャンネルにはメンバーが開発したAIボットが常駐し、朝会の議事録を自動でまとめてToDoを抽出し、完了するまで繰り返しリマインドする。スプリントの振り返りではMiro上のホワイトボードからKPT(Keep・Problem・Try)の内容を読み取り、JiraのチケットへAIが変換する。開発以外のタスク運用コストも、AIが吸収していく。

メンバーで開発した議事録をまとめるAIボット(※アプリ作成者が広島出身のため広島弁)
エンジニアリングの成果を測る定量指標として採用しているのは、ソフトウェア開発の生産性を測るフレームワークであるFour Keysだ。なかでも変更リードタイムの改善を重視している。一方で、今後はAIが自動マージする比率や、1回のプロンプトでAIが実行し続ける時間の長さなど、Four Keys以外の新たな指標も活用していく考えだ。
チームごとのアプローチは一律ではない。別のチームでは、チーム人数を半分に絞りながら成果量を維持する取り組みを進めた。コードを細かく読む代わりに、インプットとアウトプットが仕様通りかを自動でレビューする仕組みに集中した結果だ。プロダクトの性質によって整備の勘所は異なり、各チームが自律的にボトルネックを見つけ解消していく姿勢がTOKIUMのハーネスエンジニアリングを支えている。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...
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関口 達朗(セキグチ タツロウ)
フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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提供:株式会社TOKIUM
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