アプリケーションの実装
さまざまな設定を行ったアプリケーションはその設定をもったプロトタイプとして実装することができます。具体的には、同一ソリューション内にプロジェクトが作られることになりますが、以下のアプリケーションの種類(アプリケーションデザイナのツールボックスに表示されているアプリケーションを指します)がプロトタイプの実装に対応しています。
- ASP.NETWebApplication
- ASP.NETWebService
- OfficeApplication
- WindowsAppliaction
これらのアプリケーションをデザインしている場合、デザイナ上で対象アプリケーションを選択すると、プロパティウィンドウに[実装]というカテゴリが表示されます。例えば、ASP.NETWebApplicationを選択すると[図13]のような内容が表示されます(表示される内容はアプリケーションの種類によって異なります)。ここで、実装されるプロトタイプの.NETのバージョンやベースとなるVisual Studioテンプレートを選択することができます。
プロパティの説明
プロパティウィンドウの[実装]カテゴリに表示されている項目について簡単に紹介していきます。
ターゲットフレームワーク
実装する.NET Frameworkのバージョンを設定します。.NET Framework 2.0/3.0/3.5のいずれかから選択することができます。
テンプレート
対象のアプリケーションの種類によって表示される内容は異なりますが、新しいプロジェクトを作成するときと同じようなプロジェクトのテンプレートを設定します。標準では以下のものが用意されています。
アプリケーションの種類 | テンプレートの種類 |
---|---|
ASP.NETWebApplication | ASP.NET Web サイト |
空の Web サイト | |
ASP.NET Web アプリケーション | |
ASP.NETWebService | ASP.NET Web サイト |
空の Web サイト | |
ASP.NET Web アプリケーション | |
OficeApplication | 2007 Excel 2007 テンプレート |
2007 Excel 2007 ブック | |
2007 Outlook 2007 アドイン | |
2007 Word 2007 ドキュメント | |
2007 Word 2007 テンプレート | |
2003 Excel 2003 テンプレート | |
2003 Excel 2003 ブック | |
2003 Outlook 2003 アドイン | |
2003 Word 2003 ドキュメント | |
2003 Word 2003 テンプレート | |
WindowsApplication | コンソールアプリケーション |
Windows フォーム アプリケーション | |
Windows サービス |
プロジェクト
プロジェクトの名前を設定します。通常、新しいプロジェクトを作成するときに設定するプロジェクト名と同一のものです。プロパティウィンドウ内の[デザイン]カテゴリ内にある[名前]と別の値に設定することもできますが、同一にしておくことをお勧めします。
言語
プロトタイプを実装するときに利用する言語を設定します。Visual BasicかVisual C#を選択することができます。
プロジェクトの場所の種類
ASP.NETWebApplicationまたはASP.NETWebServiceのプロパティにのみ表示されます。ファイルシステムとHTTPから選択することができます。
WPFアプリケーションへの対応
実装のためのプロパティの設定をみて、あれ? と思った方いますか? WindowsApplicationのテンプレートにWPFアプリケーションがありませんね。ちょっと意外ですが、対応させることもできるようにはなっています。
どのアプリケーションの種類でも[実装]カテゴリ内の[テンプレート]プロパティを選択しようとすると、[カスタムテンプレート]が表示されるようになっています。ここでは、Visual Studioが使っているプロジェクトテンプレート(具体的には、.vstemplate拡張子のもの)を指定できます。
WPFアプリケーションを作成するためのプロジェクトテンプレートはVisual Studioをデフォルトインストールしている場合、C#用は「C:\Program Files\Microsoft Visual Studio 9.0\Common7\IDE\ProjectTemplates\CSharp\Windows\1041」フォルダに[WPFApplication.zip]という名前で格納されています(Visual Basicの場合は、パス名内の[CSharp]を[VisualBasic]に読み替えてください)。
WPFApplication.zipファイルを解凍すると、[csWPFApplication.vstemplate]という名前のファイルを含んだWPFApplicationフォルダが作成されます。このフォルダを適当な場所にひと固まりのままで置いておき、前述の[テンプレート]プロパティの設定から[csWPFApplication.vstemplate]ファイルを選択することで、WPFアプリケーションベースのプロトタイプを実装できます。
この方法は、GenericApplicationというアプリケーションの種類に対して、自分の好きなテンプレートを指定して独自のプロトタイプを実装させるなどにも応用が利きますので、ぜひ押さえておいてください。
実装
さまざまな設定が完了したら、デザイナ上で実装対象アプリケーションを右クリックして、[アプリケーションの実装]を選択します[図14]。全アプリケーションを一気に実装してしまう場合には、[すべてのアプリケーションを実装]を選択します。
確認ダイアログが表示されたら[OK]を選択すると、指定した設定に基づくVisual Studioプロジェクトが生成されます。プロジェクトが生成されると、アプリケーションの[実装]プロパティは変更できなくなりますので注意してください。また、作成されたプロジェクトとモデル上のアプリケーションは同期しています。このため、アプリケーションデザイナ上でアプリケーションを削除すると、作成したプロジェクトも削除されますので注意してください(ソリューションから削除されるだけでHDDから削除されるわけではありません)。
まとめ
今回は、アプリケーションデザイナを使ったアプリケーションモデリングを行う際の基本的な説明を行ってきました。聞きなれない用語がたくさんあって戸惑う部分も多かったかもしれません。VSTS-AEは対象とするアプリケーションの規模が比較的大きいなど、他のTeam System製品に比べると少し使いどころの範囲が狭いと感じられてしまう製品ではあります。しかし、本稿や今後説明していく他の分散デザイナとの連携などの内容をもとに、利用方法のアイディアにつながれば幸いです。
次回は今回アプリケーションデザイナで定義したアプリケーションを基に、もう少しアプリケーションの種類が増えた時の対応を行う「システムデザイナ」という機能について紹介します。システムデザイナは分散デザイナの中核をなす機能で、他のデザイナとも密接に連携していくものです。そのあたりに比重を置いて解説していく予定ですので、どうぞお楽しみに。