「安全への視点」と「先端技術開発」が日産自動車の開発の歴史
基調講演の最初のスピーカーとして登場した安保氏は、冒頭、日産自動車の30年にわたるクルマの開発の歴史を振り返り、その重要なポイントとして、安全への視点とそのための先端技術開発が常にあったと強調した。「日産自動車はいつの時代にも、世界初の技術を提供してきた。2007年発表のインフィニティG37に搭載されたVVEL(バルブ作動角・リフト量連続可変システム)エンジンや、スカイラインGT-Rのシャシー、エンジンに盛り込まれた先端テクノロジーの数々など、話題になったものも少なくない」
「社会―人―クルマ」の視点から環境と安全への取り組みを推進
近年では「社会―人―クルマ」の包括的な視点から環境と安全への取り組みを行う「トリプルレイヤードアプローチ」を標榜し、そのコンセプトのもとで技術開発を進めている。「中でも注力してきたのが、“安全技術”だ。その実現に向け、日産では、『Vision2015』と呼ばれる安全技術と環境技術に関する目標値を設定している。まず安全面では、日産車の関わった死亡・重傷者事故の半減を目指し、2015年時点での日産車1万台あたりの死亡・重傷者数を、1995年時点の半分に減らすことを掲げている。これには日本国内だけにとどまらず、発展途上国での安全や世界の交通事故の現状を踏まえたグローバルなプランだ」
この事故被害削減のキーワードとして、安保氏は「セーフティシールド」を挙げる。「これは、万が一の事故の際に“クルマが人を守る”という考え方だ。具体的なテクノロジーとしては、速度や車体の動きに合わせてヘッドランプを自動で制御する『自動配光システム(AFS)』や『車線逸脱防止(LDP)』、『横滑り防止装置(VDC)』、追突の危険性をコンピュータが感知してブレーキをかける『追突被害軽減ブレーキ』、そして『衝突安全ボディ』などがある。2007年にはフーガに、先行車への追突の危険を感知してアクセルを押し戻しブレーキをかける「DCA(Distance Control Assist)」を世界で初めて搭載した。こうした電子技術やハードウェアの改良によって、何重ものシールドを張って人間を守るというスタンスで開発を進めている」
こうした安全対策の一方では、『環境Vision2015』のもと、2015年時点でのCO2排出量を2005年時点の40%削減する目標を掲げ、燃費の向上や電気自動車(EV)の普及拡大のシナリオ整備などを進めていると安保氏は語る。