開発の短期間化にデジタルを活用した開発プロセスの革新で対応
続いて安保氏は、自動車開発における開発プロセスの革新について振り返る。「クルマにおいても開発期間の短縮とスピードアップは著しい。仕様(図面)決定から起算した一つの開発プロセスが1995年には29.5か月だったのが、現在は10.5か月にまで短縮されている。こうした短期化にともなって、電子部品などの開発期間も非常に短くなってきている」
日産自動車ではこうした開発スピードのアップに、さまざまな「デジタルプロセスへの取り組み」を通じて対応しているという。「まず『デジタル設計』がある。熟練工によるモノ作りのノウハウをシステム化し共有・伝達することで、若手でも短期間にベテラン技術者なみの設計技術を習得できるようになる。例としては、PCに設計ノウハウをすべて登録した『デジタルCAD』などがある。また実験分野では、性能・品質の解析をコンピュータ上で行う『デジタル実験』が、燃料タンク内のガソリンの揺れが起こす障害の解析などに応用されている。さらには組み立て工程のシミュレーションなどを行う『設備のデジタル化』も進んでいる。生産試作をコンピュータ上で行い、ここでOKとなれば世界中の生産拠点へ展開することで、品質の集中管理と均質化が実現できるようになる」
カーエレクトロニクスの進化で開発規模が爆発的に拡大
一方、製品としての自動車においても、カーエレクトロニクスはかつてない規模にまで質・量ともにふくらんでいると安保氏は指摘する。「最近の高級車に使われる半導体はPCの5台分に匹敵し、車載コンピュータも50個くらいある。ブレーキユニットなど内部に仕込まれているものや小さなセンサーなどを含めると、その数はさらに増えるだろう。いまや電子部品のコスト比率は、全体の約半分近くに上っている」
これをソフトウェアの観点から見ると、さらに爆発的な増加を続けている。車載ソフトウェアのソースコードは、1980年にはC言語で2,000行程度だったのが、20年後の2000年には約1,000倍にまで増えた。この背景には、かつての走行制御系に加えて1990年頃からは情報系を含む車両全体にわたる電子化が進んできたことがあるという。
また安保氏は自動車用ソフトウェアの特徴として、安全性と即応性に重点を置いた構成になっている点を挙げる。4輪操舵システムでも自動配光システム(AFS)でも、“フェイルセーフ・安全診断”がソフトウェア全体の20~30%を、“チューニング”を30~40%が占めている。走行の安全とそのための即応性を重視する自動車ならではの比率だといえよう。
「開発の体制という点では、国内ではナビゲーション系を中心に生産プロセスの中でTier2と呼ばれるソフトウェアメーカーが増加している。また海外を見ると、従来の日・米・欧に加えて東欧・中国・インドといった国の割合が増えつつある。1台のクルマのシステムを作るには、こうした内外の80近い拠点でシステムを開発してもらい、それを取りまとめるという大がかりな作業になってきている」
