はじめに
Adobe AIRと言えば、Windows/Mac OS X/Linuxなど、OSに依存しないデスクトップアプリケーションの実行環境(ランタイム)として脚光を浴びてきましたが、2010年10月にリリースされたAIR 2.5からは、さらにPC以外のモバイル端末やスマートTVなどにも対応しました。特にAndroidは「AIR for Android」として大幅に強化されています。
今まで、このAIR for Android上で動作するアプリケーションを作るには、Adobe技術に精通している必要がありましたが、先日試用版ダウンロードがスタートした統合開発環境「Flash Builder 4.5」によって、手軽に高度なアプリケーションが開発できるようになりました。本稿では、Flash Builder 4.5の基本的な使い方や開発のフローを体験してもらうために、「複数画面を持つ単位変換アプリケーション」を作っていきます。
対象読者
- Androidアプリケーションの開発に興味がある方
- IDEでもっと簡単にAndroidアプリケーションを作りたいVB/C#/Javaユーザーの方
- AIR for Androidについて知りたい方
Flash Builder4.5によるAndroidアプリ開発の概要
AIR for Androidアプリケーションの開発メリット
AIR for Android向けのアプリケーションを開発するメリットは、「Flex」という今までのデスクトップアプリケーション作成時と同じフレームワークを使って開発を行うことができる点です。
Flexフレームワークは、オープンソースで提供されているフレームワークです。Adobe Flash PlayerやAIR上で動作するアプリケーションの作成に利用できます。アプリケーションを作成するための工数を大きく削減できる多数のコンポーネントが含まれています。「ActionScript」というプログラミング言語や「MXML」というXMLファイルを使ってアプリケーションを作成できます。
このFlexフレームワークが利用できることで、タブによる画面遷移を実現したいと思ったときなどに、面倒な処理を記述する必要がありません。さらに、コンポーネントの拡張性が高く、独自UIをコンポーネントとして手軽に再利用することも可能です。そのため、高度なアプリケーションを手軽に作ることができます。
また、モバイルとデスクトップアプリケーション共通のフレームワークとなっており、画面サイズなど各デバイスの特性に合わせてUIを変更する必要はありますが、ロジック部分を流用することができるのもポイントです。デスクトップアプリケーションとして作成したものを、Androidなどにも流用する必要がある、といった場合、大幅に工数を削減することができます。
統合開発環境「Flash Builder 4.5」とは?
こうしたAIRアプリケーションを開発するためのツールが「Adobe Flash Builder」です。
Flashと言えば、Webアニメーションからゲームまで作成可能な、「Adobe Flash Plofessional」を想像する方も多いと思います。Flash Builderは、Flashと違うのでしょうか。もちろん、Flash Builderは「Adobe Flash Platform」ツール群の一員ですが、Flash Professionalのように、イラストや絵を描くための機能はついていません。
Flash Builderはプログラマー向けの開発環境と言えます。Java開発でおなじみの「Eclipse」をベースにした統合開発環境で、コード補完機能やリファクタリングの機能を利用でき、AIRアプリケーションの開発、テスト、デプロイメントなどをサポートしています。Visual Studioなどのフォームデザイナーのように、パレットからコンポーネントをドラッグ&ドロップでペタペタ貼り付けていくことで、画面を作成することが可能です。
そして前述のとおり、最新バージョンの4.5から新たにAndroidアプリケーションの開発に対応しました(※)。作成したAndroidアプリケーションは、「AIR Debug Launcher(ADL)」というシュミレーター上でプレビューやデバッグも可能です。Flashをベースとしているため、Android SDK標準のエミュレータよりも軽快に動作し、素早くアプリケーションの実行結果を確認して、デバッグできます。さらに、Android Marketへアップロードして対象デバイスにインストールできる形式(.apkファイル)で処理されるため、アプリケーションの開発から公開まで、スムーズに行うことができます。
2011年下半期のリリースが予定されている無償アップデーターにより、iOSとBlackberry Tablet OSアプリケーションの開発にも対応する。
では、アプリケーション作成の準備を整えていきましょう。