エンタープライズ向けRIAとして幅広く導入されているリッチクライアント/RIAテクノロジー「Curl」。5月31日には、Curlの業務システム向けUIコンポーネント群「Curl External Library(Curl EXT)」をオープンソースとして提供開始した。Curl EXTは、Excelのように使用できるワークシートや地図アプリケーションを作成できるジオグラフィックAPIなど多数の機能を搭載しており、開発者は生産性がさらに向上する業務システムを容易に構築できるようになる。今回は、CurlおよびCurl EXTの概要や特徴、今後の展望などについて、実際に開発に携わった方々にインタビューした内容を紹介する。
お話を伺ったのは、住商情報システム株式会社 Curl事業部 Curlプロダクトチームのプロダクトマーケティングの担当である三野 凡希氏、それに実際にCurl EXTの開発に携わった小段 政樹氏、カール ウィリアム スターン氏の3名だ。
世界1000社以上が使用している「Curl」
まず、Curlの現況について教えてください
三野氏
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「Curl」は、高度で複雑なユーザーインタフェースを持つシステムを構築できるエンタープライズ向けWebプログラミング言語です。1995年にMITで研究が開始され、1998年に米国でCurl社が設立されました。2004年には住商情報システム(SCS)がCurlの知的財産権を買収し、日本側のニーズを捉えた研究開発にも注力できる体制を整えています。
日本国内では500社以上の導入実績があり、海外でもFortune 500の企業をはじめ、米国や韓国などに1000社以上がパッケージ版を中心に導入されています。メインマーケットは日本国内ですが、今後はアジアを皮切りに海外へも積極的に展開していく方針です。
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エンタープライズ向けRIA「Curl」スクリーンショット
導入企業の規模や業種の傾向はいかがですか?
三野氏
エンタープライズ向けということもあり、大企業が多いですね。会計、物流、サプライチェーンなど大手企業を中心とした導入実績が多く、最近でのトレンドとしては特に製造業の「モノ作り」現場のコアなシステムなど、企業価値を決めるシステムにも導入されています。また、公共での導入事例として、例えば長崎県庁では「長崎クラウド」としてクラウド化、オープン化を推進していますが、フロントの電子申請システムにCurlが導入されています。
学習のしやすさと自由度の高さ
Curlの特徴、差別化ポイントを教えてください
三野氏
まず最初に、企業システムのニーズに対するパフォーマンスの高さ・高速性、それから企業システムに対応する高いセキュリティが挙げられます。次に、デスクトップにおいてマルチプラットフォームを実現していること、そしてそれをCurlという単一の言語、Curl RTEという単一の実行エンジンで実現していること。最後に、Excelや帳票など日本特有のニーズに対応していることがあります。テキストから3D、アニメーションと高い表現力を持ち、HTMLのスクリプトデザインやオブジェクト指向を入れられるなど、柔軟性が高いことも特徴です。
スターン氏
Curlは当初より「学習のしやすさ」をコンセプトにした言語で、初めての方にも基本のデザインでかなりのことが対応できますし、学習者のレベルに応じて機能を追加できることも特徴です。また、学習のハードルはそれほど高くなく、ドキュメントが豊富に用意されているという安心感もあります。Curlはエンタープライズ向きと言われますが、一般的なRIA(リッチインターネットアプリケーション)と比べてカスタマイズできる仕組みが豊富に用意されていることも大きなポイントだと思います。
小段氏
学習のハードルといえば、統合開発環境CDEで提供している
ヘルプドキュメント(Ver.7)が活かせると思います(※リンク先はWebサイト用)。ドキュメント内のサンプルをその場で改変して実行することができます。初めて学習する方にもプログラムを動かせることは、学習において非常に役立つと思います。
三野氏
CurlはLISP言語に似ていると言われますが、手続き型的にもスクリプト的にも対応できる、つまりVBライクにもJavaライクにも、多彩な形式、スタイルで書けるという特徴があります。Webの言語ですがイベントドリブンの開発ができることも特徴です。VB開発者の方には入りやすい言語かも知れません。開発スタイルとしてはオブジェクト指向で開発できます。
また、起動の速さもポイントです。サーバからソースコードがクライアントにダウンロードされ、クライアント側で即時コンパイル(JITコンパイル)するので一般的なアプリケーションに比べて高速に起動することができます。
テキストベースでクライアントに送られるので、マルチプラットフォームに対応しやすく、データをコンパクトにできるため、細い回線での運用も可能ということも特徴です。