例年、日本からもツアーが組まれており、今年は約20名が参加します。参加者が楽しみにしているのは、なんと言っても注目の技術情報がいち早く聞けること、そして何か新しい発表に立ち会えること、の2点です。そこでこの記事では、ツアーに参加できない皆さんのために、Adobe MAXで注目の最新情報と、今年Adobe MAXで発表して欲しいというユーザーの勝手な予想を紹介します。
ユーザーの予想記事全文や、開催時のMAX現地からのレポートはADC Community Loungeという特設サイトでご覧になれます。
この記事は、「Adobe MAX 2011 in Los Angeles」(日本語サイト)および「ADC Community Lounge」の内容をまとめたものです。イベント内容の詳細や、基調講演のライブ配信やTweetキャンペーン、およびユーザーの予想記事全文などの詳細情報を知りたい方は、各公式ページも参照ください。
Adobe MAXで聞きたい最新情報
Flash Player 11/AIR 3
Adobe MAXといえば、何はさておきFlashに注目です。発表されたばかりのFlash Player 11/AIR 3では、表現力や機能に大きな拡張が行われました。
特にデバイス向けには、AIRアプリケーションからネイティブコードを呼び出せる機能など、Flashの適用領域を大きく広げる機能が追加されました。これからはデスクトップ環境向けだけでなくモバイルデバイス向けにも、Adobe Creative SuiteやAdobe Flash Builderを中心とした高生産性開発ツール群を用いて、非常に高いユーザーエクスペリエンスを提供し、かつ高機能なアプリケーションを開発することが可能となります。
Flash Player 11/AIR 3関連では多くの新機能に関するセッションが行われます。ここでは主な項目をリストしてみました。
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Stage3D:ハードウェア機能を利用した高速な描画を実現。CPU負荷を低減し、高度な3D描画もサポート
- NATIVE EXTENSIONS:AIRアプリケーションからネイティブコードで記述されたライブラリを呼び出す機能。デバイス固有のAPIを呼び出したり、既存のコード資産の再利用が可能になる
- Captive runtime:アプリ実行に必要なファイルをまとめて1つのインストーラーにパッケージ。常にランタイムとアプリのバージョンを固定して配布できる
- Nativeテキスト入力:OSが提供するテキスト入力画面をAIRアプリケーションから利用可能に。ネイティブアプリケーションと同等の操作性を実現できる
- JSONサポートの追加:FlashランタイムがJSONのパースを行うAPIを提供。簡単しかも高速にJSONデータをActionScriptから利用可能
Flex 4.6 SDK/Flash Builder 4.6
アプリを開発するならフレームワークも重要です。今年後半に出荷予定のFlex 4.6 SDKは、モバイルデバイス向けのアプリ開発をさらに強力にサポートします。また、フレームワークだけでなく、Eclipseベースの開発環境・Flash Builderの新バージョン「Flash Builder 4.6」も登場し、Flash Player 11/AIR 3/Flex 4.6 SDKの新機能を簡単に利用できるようになります。
Flex 4.6 SDK/Flash Builder 4.6の主な新機能は以下の通りです。
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新しいUIコンポーネント:上下にリストをスクロールして要素を選択できるスピナーリストやトグルスイッチなど、指で操作しやすい新しいコンポーネントを追加
- デバイスの向きで表示が切り替わるアプリケーションクラス:新しいSplitViewNavigatorの追加により、画面の向きに応じた表示の指定が容易に行える
- パフォーマンスの改善:Flex 4.6でアプリケーションをパッケージし直すだけで、最大50%パフォーマンスが改善
- 最新プラットフォームのサポート:iOS5を含む最新バージョンのOSへの書き出しに対応
- ネットワークモニターやユニットテスト:モバイルプロジェクトでも、ネットワークモニターやユニットテストが利用可能
- Natuve Extentionサポート:ネイティブコードを含むアプリケーションも簡単にパッケージ
HTML5
アドビはHTML5関連の技術にも大変力を入れています。Dreamweaverは昨年いち早くHTML5/CSS3に対応し、今年の春に発売されたCS5.5では、jQuery MobileやPhoneGapといったモバイル専用の開発環境にも対応しました。もうすぐjQuery Mobileが正式にリリースされる予定なので、Dreamweaverにも何らかの更新が期待されます。
また、「Edge」と「Muse」という新しいHTML5関連の製品にも注目です。どちらも、まだプレビュー版が公開されたばかりですが、短い間隔での更新が行われています。
EdgeはHTML5技術をベースとしたアニメーション作成ツールで、従来であればFlashが必要とされたようなインタラクションやアニメーションを簡単に作成して、HTMLに書き出すことができます。
Museは、サイトの構造設計や画面デザインからHTMLを生成して公開するまでをコードを書かずに行うことができるツールです。デザイナーだけでサイトの制作を実施/管理できるようになれば、Webサイトの制作の新しい姿を実現できるかもしれません。将来がとても楽しみな新製品です。
勝手に予想「Adobe MAX 2011でコレが発表される!?」
Adobe MAX 2011直前ということで、基調講演やセッションでお披露目されるかもしれない新技術や話題を、ユーザーの皆さまに予想してもらいました。ここでは、その一部を紹介します。
Flash編
まずは、ClockMakerの池田さんから。Flashユーザとして知られる池田さんですが、HTML5を使う機会が増えてきたからか、こんな予想をしています。
最近はHTML5の話題が盛んですが、次期Flash ProでHTML5の書き出しができるようになるのではと期待しています。
その理由ですが、既にAdobeは「Wallaby」というflaファイルをHTML5に変換するツールをAdobe Labsで公開しています。これって次期Flash Proで搭載されるんじゃないかと見ていますが、皆さんいかがでしょう?もしかしたらiOSからのアクセスだと自動的にHTML5に切り替わったりとか!
最後の、iOSからのアクセスだけHTML5にフォールバックするアイデアは、実現されたら嬉しいですね。
Flex編
次は、taiga.jpのtaigaこと廣畑さんです。Flash Builer関連でいくつか希望があるようで、普段からFlash Builderを使い込んでいる廣畑さんらしい予想になっています。
今年のAdobe MAXで発表されるかもしれないFlex関係のニュースを予想して、実現してくれたら嬉しいなと思える妄想を書き連ねます。それは…
- ADTサポート強化
主にNative Extension作成補助機能…マニアックなAIRアプリ書き出しも簡単!嬉しい。
- Pixel Benderカーネル、アセンブラエディタ機能
PB2D、3D問わず、コードヒントが出てきて、簡単にコーディングできたら嬉しい。
- リバースデバッグ機能
デバッグ時にブレークポイントから1ステップずつ戻れるようになったら嬉しい。
- FXGエディタ
デザインビューがオーサリングツールに負けないくらいに超絶パワーアップ!シェイプを編集すると同時に、対応したFXGが裏で書き出されていると嬉しい。
どれか1機能だけでも良いので実現してくれたら幸せになれるな…といった妄想でした。
ずいぶん開発環境としては充実してきた感のあるFlash Builderですが、まだまだ改良の余地はあるようです。
また、Flexに関しては、AKABANAの有川さんの予想もいただきました。
最近、業務でモバイル開発が多くなってきたのですが、デザインからマルチスクリーン向けのスキン作成とコーディングが増えてきました。開発者としては、デザインからスキン開発をしてコーディングできるようにFlash BuilderとFlash Catalystを統合してほしいですね。Sparkにコンポーネントが新規追加されることを期待します。デスクトップ用もモバイル用も。
あとは、Unity 3D用のエクステンションがFlash Pro用に出てくれるとうれしいんですが。
有川さんは、アプリからゲームまで、デスクトップからモバイルまでと、幅広くFlash技術を活用されているようです。
HTML5編
最後に、HTML5関連として、H2O Space.の谷口さんに予想をお願いしています。Dreamweaverで開発作業を行う谷口さんは、やはり今後のDreamweaverのロードマップが気になるようです。
DW CS5.5でjQuery MobileのサポートとPhoneGapのサポートなど、スマートフォンへの取り組み姿勢を示したDWは、今後もその方向を強化していくことになるでしょう。特に、今後のWebサイト制作においては8月に日本でも発売された、Windows Phoneへの取り組みが課題の1つです。
PC向けには、ブラウザとの連携機能や「Adobe BrowserLab」などでブラウザ検証をサポートしているDWが、スマートフォンのそれらに対してどのようなアプローチをしてくれるのかが注目です。あっと驚くようなアプローチがあるかもしれませんね。
さて、少し話を変えて先日衝撃的に発表された「Muse」というプロダクト。「HTMLを使わないWebオーサリングツール」とも言うべきこのソフトは、Web制作の未来を垣間見るおもしろいプロダクトだと思いました。Museは、今後の開発次第で「お遊び程度のWebサイト制作に使う程度の存在」にも「プロがWeb制作に利用できる、Web制作のプロセスを変える革新ソフト」にもなり得ると考えています。Adobeがこのプロダクトをどのように位置づけ、今後どのような開発を行っていくのか、そんなロードマップが少しでも見えると面白そうです。
開発者の谷口さんから見ても、コードを書かずにサイト開発を行うMuseは気になる存在のようです。MAXでの発表が楽しみですね。
以上、Adobe MAX 2011の注目技術の紹介と発表内容の勝手な予想記事、いかがだったでしょうか? Web技術に関わる者としては、興味深いセッションが目白押しのAdobe MAX 2011。今年は日本でお留守番の方でも、ADC Community Loungeの現地レポートがありますので、まもなく開催されるエキサイティングな4日間をワクワクしながら待つこととしましょう!