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Developers X Summit 2024 セッションレポート

大企業を芯からアジャイルに──20年以上アジャイル実践してきた市谷氏が語る変革への道

【Session8】日本の組織を芯からアジャイルにする

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 20年以上にわたりさまざまな組織でアジャイル適用を実践してきた市谷聡啓氏は、2024年6月に三菱電機株式会社で「プリンシパル アジャイル エキスパート」に就任し、伝統的な大企業でのアジャイル浸透や適用領域の拡大に取り組んでいる。2024年11月14日に開催された「Developers X Summit 2024」では、市谷氏が日本の組織が変化に向き合う際の課題とその解決策について講演し、これまでの経験をもとにした組織変革の知見を共有した。

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大規模な企業にアジャイルを浸透させるための課題とは

 市谷氏は、近年、伝統的で大規模な組織に深く関わりながら、アジャイルの浸透に取り組んできた。その中で得た知見として「組織はその業務に最適化した構造を持つように進化する」と語る。目の前の業務効率を高め、利益を上げるために、プロセスや役割、意思決定などを調整してきた結果がその構造に反映されているのだ。業務の迷いや試行錯誤を排除し、定型化されたやり方を徹底することで、効率性を追求する形になっている。

株式会社レッドジャーニー 代表/三菱電機株式会社 プリンシパル アジャイル エキスパート 市谷 聡啓氏
株式会社レッドジャーニー 代表/三菱電機株式会社 プリンシパル アジャイル エキスパート 市谷 聡啓氏

 しかし、効率化そのものが重要であっても、環境の変化によって従来の最適化が機能しなくなる課題が生じる。顧客の価値観や社会的期待の変化、技術の進化に加え、人口減少による人手不足がその大きな要因となっている。これらの変化が事業のルールそのものを覆すこともある。従来の方法に固執し、変化に気づきながらも対応できない状況が、多くの組織で課題となっていると市谷氏は指摘する。

現業に最適化された組織は変化に対応しにくい
現業に最適化された組織は変化に対応しにくい

 その要因として「局所化」という組織構造が挙げられる。業務効率を追求する過程で、顧客との接点を限定し、職務を役割ごとに分割して専任化。企画・開発・運用といったフェーズで分業を進め、判断する役職と実行する役職を分ける。このように情報を整理し、効率性を担保している。

 現業が変わらずルールもそのままならこの方法は有効だが、事業縮小や社会的期待の変化に直面すると、新しい課題に取り組む必要が出てくる。その際、目指す方向が見えていても既存のシステムや方法では対応できず、大きな違和感や問題が表面化する。

 市谷氏は多くの伝統的な組織が直面する変化について、ライフタイムバリュー思考への移行があるとし「これまでの商品を作り、物を売る従来のビジネスモデルから、顧客と長期的に課題を解決し続ける方向へシフトすることが求められているわけです。この変化は実際には非常に大きな転換です。そのため、従来の方法をどのように変えるべきか、多くの組織が頭を悩ませていると感じます」と話す。

 従来は商品を導入し顧客に渡した時点で価値提供が完了していたが、ライフタイムバリュー思考では、その後の顧客の利用や課題解決を継続的にサポートすることが求められる。この違いは提供する価値の時間軸に大きな隔たりを生む。この変化に対応するためには、従来のやり方を根本から見直す必要がある。

ライフタイムバリュー思考の営みでは、価値提供が継続する
ライフタイムバリュー思考の営みでは、価値提供が継続する

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大規模アジャイルは必要だが、その実現は困難

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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