step5:薄皮を被せる
前回こしらえたC++によるCounterLibに、C++/CXの皮を被せてWindows Runtime Componentを作ってみます。"プロジェクトの追加"で選択するのはもちろん"Windowsランタイムコンポーネント"です。名前はCounterComponentとしましょう。
ひな型ができたら、プロジェクトプロパティでCounterLibのヘッダ/ライブラリの在り処とライブラリ名(CounterLib.lib)を設定します。
ひな型のClass1.h/Class1.cppをそれぞれCounter.h/Counter.cppに改名し、ぺらっぺらの薄皮を作ります。
#pragma once #include "CounterLib/CounterLib.h" namespace CounterComponent { // [Windows::Foundation::Metadata::WebHostHidden] public ref class Counter sealed { public: Counter(); void Increment(); void Decrement(); int Get(); private: CounterLib::Counter counter_; }; }
Windows Runtime Componentが従うべきお作法(ルール)がいくつかあります。
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ヨソ様に使ってもらうつもりならpublicでなくてはならない。
これはまぁ当然のこととして。 -
publicなものは直接/間接的に(プロジェクト名と同じ)名前空間に置かなければならない。
おっと、プロジェクト名がそのまま名前空間になりますか。これは要注意。 -
public ref classはsealed、すなわち継承不可でなくてはならない。
ふむ...コンポーネントから導出することを許しちゃならん、と。 -
public部にC/C++由来のものがあってはならない。
例えばポインタとか、ヘッダの必要なstd::stringとかをpublic部つまりヨソ様がお使いになるインターフェースに置いてはならん。
そりゃそうです。継承できないんだからprotected部は無意味になりますね。private部はヨソ様には見えない/触れないのでポインタだろがstd::stringだろがなんでも置いておけます(現にCounterLib::Counterがprivate部にあります)。
主要なお作法はざっとこんなもんでしょうか。これらを満足していないとコンパイル時にエラーです。
実装部はまさに薄皮。各メソッドが呼ばれたら内包するCounterLib::Counterに横流ししているだけ。
#include "pch.h" #include "Counter.h" using namespace Platform; namespace CounterComponent { Counter::Counter() : counter_() {} void Counter::Increment() { counter_.increment(); } void Counter::Decrement() { counter_.decrement(); } int Counter::Get() { return counter_.get(); } }
ビルドするとCounterComponent.dllとCounterComponent.winmdが作られます。.dllがコンポーネント本体。.winmdはメタデータと呼ばれ、.dllの使い方(インターフェース)が記された"トリセツ"的役割を担います(C/C++でいうところのヘッダみたいなものです)。各国語で書かれたトリセツあるじゃないですか、あんなカンジ。このトリセツはC#やVB.NETなど、さまざまな言語から読むことができるわけです。