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キーパーソンインタビュー

業務アプリのモバイル対応に求められる「要件」とは何か
―モバイルアプリ開発ツールベンダー座談会(後編)

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今後の展望は?

 CodeZine:では最後に、各社のツールが今後どのような展開を視野に入れているのか、将来的な展望について一言ずついただけますでしょうか。

 アドビ:最近の話題としては「PhoneGap」が最新版の3.0にアップデートされました。PhoneGapについては、世界中の開発者のノウハウが集結され、プラットフォームごとのチューニングの問題など、それぞれのWeb開発者が抱えている個別のデプロイの課題を吸収できるプラットフォームとして発展を続けています。

 また、現在進行中の「Edgeシリーズ」では、FlashライクなタイムラインでHTMLアニメーションを作成できる「Edge Animate」、さまざまなモバイルデバイス上でWebデザインの見え方を即座にプレビューできる「Edge Inspect」といった製品が、すでにCreative Cloud上でリリース済みです。また、軽量なコーディングツールである「Edge Code」、レスポンシブルデザインの作成を助ける「Edge Reflow」といったツールについても、プレビュー版として公開しています。こうしたツールの開発、機能強化を通じて、HTMLコンテンツの開発をビジュアルな環境で支援することをアドビがリードしていきたいと思っています。

アドビシステムズ アンディ・ホール氏
アドビシステムズ アンディ・ホール氏

 SCSK:Caedeの方向性としては、社内の環境で業務システムの開発と保守・運用を完結したいと考えるようなユーザー向けのDevOpsプラットフォームを検討しています。例えば、オンプレミスのビルド・デバッグサーバや社内業務アプリのマーケットプレイスのような仕組みとそれをもとにアプリケーションの利用状況分析をするようなものがあれば、自社内で開発から保守・運用までをサポートでき、アプリケーションのライフサイクル運用が効率的になるでしょう。そうした環境を作っていきたいですね。

SCSK 岡田一志氏
SCSK 岡田一志氏

 エンバカデロ:直近では、Delphiに続き、C++BuilderのAndroid対応を予定しています。この対応が完了すれば、両方の言語でiOS/Androidのネイティブクロス開発が実現します。その後は、サーバサイド開発のモバイル対応を強化していく方向性があると思います。現状よりも、パフォーマンスを高めたり、冗長性を持たせたり、mBaaSなどとのコネクティビティを強化したりといった形です。

 また、これはツールの機能そのものとは少し違う視点になりますが「開発環境」というもの自体の使い勝手を向上させていくことも考えています。開発環境というのは、一般的にインストールなど、環境そのものを作るのに時間がかかりますよね。この部分のテクノロジーを変えることによって、よりオンデマンドに、長時間の複雑なインストレーションを必要とせずに必要な環境を作れるような仕組みを提供していきたいと考えています。

エンバカデロ・テクノロジーズ 藤井等氏
エンバカデロ・テクノロジーズ 藤井等氏

 キヤノンITS:SenchaはもともとOSSなので、機能の強化自体はコミュニティとSenchaの方針に依存する部分があります。我々は日本の販売代理店として商用バージョンを提供している立場なので、コミュニティを尊重しつつ、企業向けのサポートをより充実させていくことを考えています。Senchaそのものの最新の動きとしては、新たな取り組みとして「Sencha Space」と呼ばれる、特にBYODを意識したHTML5業務アプリケーションのデプロイと管理に特化した製品の開発が進んでいることが発表されています。セキュリティ面などが強化された強力なビジネスアプリの導入に利用できる環境ですが、詳細については今後の発表に期待してください。

キヤノンITソリューションズ 髙本勉氏
キヤノンITソリューションズ 髙本勉氏

 マジック:最近の取り組みでは、Magicによるモバイル業務アプリを作り始めたい方向けに、アプリケーション・テンプレートを用意しました。例えば、販売管理や地図連携といった機能をiOSとAndroid上で実現できるものですが、ソースコードも含めて5万円程度で販売しています。既存のパートナーさんや、これからMagicを始めたい方は、これを使うとより簡単に高度な機能を使ったMagicによるモバイルアプリを作れるようになります。

 あと、現状、日本で提供しているMagicは、オンラインでの利用が前提になっています。ただ、本国のイスラエルではすでにオフラインに対応したバージョンが提供されています。データベースそのものもクライアント上にダウンロードして使えるバージョンですね。このオフライン対応版の日本での提供を現在準備しています。2014年第2四半期には、提供できるようになる予定です。

マジックソフトウェア・ジャパン 渡辺剛氏
マジックソフトウェア・ジャパン 渡辺剛氏

 CodeZine:本日は長時間にわたり、ありがとうございました。

(補足資料)各社の製品比較
社名 主なツール名 開発言語 対応モバイルプラットフォーム 無料体験版の有無 ライセンスの価格 詳細情報
アドビシステムズ PhoneGap Build HTML、CSS、JavaScript iOS、Android、Windows 8, Windows Phone, BlackBerry, WebOS, Symbian, Amazon Fire OS, Tizen あり 無償(無償枠で扱えるプライベートアプリ数は1つまで) リンク
SCSK Caede、Curl Curl言語 iOS、Android、WinRT あり Caede SDK:無償、IDE:59,800円(開発者ごと) リンク
エンバカデロ・テクノロジーズ RAD Studio(Delphi、C++Builder) DelphiまたはC++言語 iOS、Android あり(30日間) RAD Studio XE5 Professional(新規購入):198,000円~ リンク
キヤノンITソリューションズ Sencha Touch、Sencha Ext JS、Sencha Architect JavaScript、HTML5、CSS3 iOS、Android、Windows 8、BlackBerry、Kindle Fire、Tizen あり(30日間) 120,000円(1ユーザー)、Sencha Touch(商用版)は無償 リンク
マジックソフトウェア・ジャパン Magic xpa Application Platform 独自仕様、リポジトリ方式 iOS、Android、Windows 8 あり(60日間) RIA開発版:185,000円から(1ユーザー)、実行版:243,000円(同時アクセス:5ユーザー) リンク

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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柴田 克己(シバタ カツミ)

フリーのライター・編集者。1995年に「PC WEEK日本版」の編集記者としてIT業界入り。以後、インターネット情報誌、ゲーム誌、ビジネス誌、ZDNet Japan、CNET Japanといったウェブメディアなどの製作に携わり、現在に至る。現在、プログラミングは趣味レベルでたしなむ。最近書いているの...

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